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 ふふ、と妖艶な笑みを浮かべる和泉が、幼いころ幾度か公暁とともに遊んだ少年だと気づき、唯子は瞠目したが、ハッと我に却ってそれどころではないと和泉に迫る。

「殺されるってどういうこと!」
「執権に唆されて公暁は将軍になり変わるつもりです。実朝さまを殺せば暁子が戻ってくるとでも囁かれたんでしょうね」
「なんで知ってるの?」
「公暁が教えてくれました」

 なら止めてよと拳を握りしめる唯子に、もはや自分では止められないのだと和泉は儚げに嗤う。諦めにも似た微笑に、唯子は怒りを隠せない。

「じゃあどうして」
「暁子。神託が現実になろうとしている」

 ビク、と肩を震わせる唯子に、和泉はそこに至るまでの経緯を説明する。蒼白になっていく唯子に、和泉は容赦なく、自分の真の目的から、実朝の決意まですべからく伝えていく。

「実朝さまは鎌倉を維持するため、自ら殺されることを受け入れてしまっていた。けれど私は巫女の子でありながら、その運命に疑問を感じずにいられない。どうか暁子、公暁の凶行から実朝さまを救って欲しい」
「そ、そんなこと言われても」

 自分に何ができるというのだ。自分は滅びを招く元凶だとされているのに。

「これは、暁子にしかできない。御台所さまにはすべて説明している。私はこれから残酷なことを頼む……できるな?」

 語気を荒げ、和泉は唯子に懇願する。
 その内容を打ち明けられ、唯子は息を呑む。


「――それしか、方法はないのね」


 そうだ、と和泉はきっぱりと告げ、彼女の耳元へ甘く囁く。



「そして逃げるんだ……源公暁として」
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