虚実の時

神在琉葵(かみありるき)

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 「それで、どうだった?
エレナは元気だったのか?
いつ会えるんだ?」

 「それがね…父さん……」

ローランは、次の日の夜遅くに戻った。
アニエスの手前、ミカエルは話を聞きたくてうずうずする気持ちを懸命に押さえ、二人はまた真夜中に密会した。



 「父さんの教えてくれた場所にエレナさんはいなかったんだ。」

 「いないって…結婚して町を離れたってことか?」

 「そうじゃないよ。
 町の人に聞いたんだけど、何十年も前に一家で突然いなくなったらしいんだ。
なんでも、お母さんの病気を治すために引っ越すって話だったらしいんだけど、どこに行くかは誰にも言わずに出て行ったらしいんだ。」



 (そうか…きっと、うちの両親が……)

それは、セザールがエレナとのことを諦めきれずに死んだのだと考えた彼の両親が、罪滅しのつもりで、エレナの母親をどこかの施設に移したのだろうと彼は推測した。



 「ローラン、丘の方に大きな白い屋敷があっただろう?」

 「あぁ、カヴァンナさんのお屋敷だね。
エレナのことは、もしかしたらカヴァンナさんが知ってるかもしれないって教えてくれた人がいたから行ってみたんだけど、カヴァンナさんのお屋敷は今は誰も住んでないらしいんだ。」

 「なぜだ!?なぜ、誰も……一体どこに移ったんだ?」

 「そ、それは僕も知らないよ。」

ミカエルの剣幕にたじろぎながら、ローランは何度も首を振る。



 「そうか……だったら……」

 「父さん…僕、あの絵を描いた画家のところへ行って話を聞いてくるよ。」

 「なに!?…そうか、その手があったか。
 僕も一緒に行きたい所だが、そんなことをしたらアニエスが心配するだろうからな。
それじゃあ、頼むぞ、ローラン!」

ミカエルは、ローランの手をしっかりと握り締めた。


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