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俺が魔法師である意味

28 マシロは可愛い

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 目が覚めたら、マシロが体の上に乗っかって寝てた。マシロ布団。重くはない。なんか微笑ましくて笑えてくるくらい。
 体は動かせないから視線だけ動かしたら、クリスは酷く真剣な表情で枕元に腰掛け書類を見ていた。

「クリス」
「ん?…ああ、起きたのか」

 一瞬で表情が変わる。
 険しさなんて微塵もない、俺の大好きな笑顔だ。

「重くないか?」
「全然。でも身動き取れない」
「だな」
「うにゅ…」

 口元がもにょもにょ動くマシロ。可愛いなぁ。

「そろそろお昼?」
「昼時を少し過ぎたくらいだ」
「あ、寝過ごしたんだ…。ごめん」
「気にしなくていい」

 額に唇が押し当てられる。顔のあちこちを移動して、唇に触れてくる。
 キス…気持ちいい……って浸っていたら、胸元でモゾリとマシロが動いた。

「うにゃ……ぁき……?……あき!」

 俺の胸元から思い切りマシロが頭を上げた。

「ぅぐ」
「うにゃっ」

 下から。
 俺、マシロ、クリスだったから。クリスがマシロを潰さないように覆いかぶさっていたから。

「……っ、マシロっ」
「うにゃっ、いちゃぃ、ぁちゃま、ぃちゃい」

 クリスの喉元近くに、マシロの後頭部が炸裂したらしい。
 ……さすがのクリスでも息を詰めるくらいに痛かったんだ……。
 マシロは俺の体の上で頭を抑えて転がってる。……うん。転がるなら体から降りて。意外とちょっと苦しい……。

「もぉー……、なにやってんの……」

 二人の様子がおかしくて、笑いが込み上げてきた。





 むっつりとしたままマシロ用カップを手に持って、俺の膝の上に座るマシロ。ちらりとクリスを見ては、目が合うとプイッと視線をそらす。でも気にしてまたクリスを見る。
 ……目をそらすなら見なきゃいいのに。でも、目が合うってことは、クリスもマシロのこと見てるってことなんだよ。マシロ、わかってるかなぁ?
 軽く溜息をついたクリスが椅子から立ち上がって、俺の膝の上のマシロを抱き上げた。

「ぴっ」

 慌ててマシロの手からカップを取り上げた。まだ中身が入ってて危ない。

「怒ってるわけじゃない」
「うみゅ」
「痛みもない」

 ……クリスの鎖骨の間辺りがちょっと赤くなってたから、まだ痛いと思うけど。

「お前がいつまでもそんな態度だとアキが困るだろ」

 ……俺、あんまり困ってない。
 仲直りしたいのにそれが言い出せなくて、気にしてちらちらクリスを盗み見るマシロが可愛すぎて、悶えてるだけだし。

「……こま、りゅ?」

 マシロがへにょんとしながら俺を見るから、大袈裟かと思うくらい頭を縦に振った。

「うん、困る。すごく困る!」

 困るって言っておかないと、話が長くなるから……。
 マシロは眉尻を下げながら、またクリスを見た。

「……ごめ、ちゃい」
「ああ。いいよ。気にするな」
「ぁかにゃおり、すりゅ」
「仲直り、な」
「う」

 こくんこくんと頷いたマシロが、クリスの首にしがみついた。
 ちらりと見えた顔は、とても安心したような表情だった。

 遅めの昼食を終えてお茶を飲む。カップから口を離すと、すかさずマシロがいつも携帯してる自分用バッグから、お気に入りの口の中で溶ける焼き菓子を取り出して俺の口に入れる。

「おいち?」
「うん。美味しい」

 お茶と甘いお菓子。最強の組み合わせだと思う。
 でも、マシロのこれはエンドレスだからね。切りのいいところで終わらせないと、いくらなんでも食べ過ぎになる。

「マシロ、もういいよ。終わり」
「う?」

 首を傾げてまたバッグの中に手を入れたマシロが、大きく目を見開いてふるふる震え始めた。

「え、マシロ?」
「どうした?」

 隣で静かにお茶を飲んでいたクリスも、手を止めてマシロを見る。

「は、わ、あ、あ、あ」

 一体何が……って身構えていたら、マシロの小さな手がバッグの中から紙袋を取り出した。

「……にゃぃ」

 取り出した紙袋の中身を何度も確認して、何度見てもやっぱり何も入ってない紙袋に、マシロが今にも泣きそうな目で俺を見上げてきた。

「…………にゃぃ、の」
「…………」

 俺もクリスも、一気に緊張が解けた。もうもう苦笑するしかない。

「食べちゃえばなくなるよ」
「……もう、にゃぃ?」
「クリスのとこに入ってると思うけど……」

 あんなに大量に入ってたし。多分あのままだろうし。

「ういす……」

 キラキラの瞳がクリスに訴えかけてる。
 マシロ、お菓子食べ過ぎちゃうから、クリスはあげるの渋るかな…と思ったりしたんだけど、はぁ…って溜息をついて、クリスポーチの中から例の紙袋を一つ取り出した。

「はわ」
「食べすぎるなよ」
「あーい!」

 泣きそうな顔から一遍した笑顔になって、マシロがクリスから紙袋を受け取った。それを大事に大事にバッグの中に仕舞う。

「クリス……甘っ」
「仕方無いだろ……。アキが俺に強請ってくるときの顔そのものだったんだから……」

 って、何故か俺のせいにされた。解せぬ。




「坊っちゃん、そろそろ」

 ってメリダさんの言葉で、クリスが動き出した。
 よくわからないまま俺はクリスに風呂場に連行されて、念入りに頭も体も洗われた。
 お風呂から上がって脱衣所で「乾かして」と言われたので、クリスと深くキスをしながら風魔法で髪も体も乾かしていった。
 …夜でもないのになんでこんな時間にお風呂…?と聞いても、曖昧な答えしか帰ってこない。
 クリスは俺をタオルで巻いて、クリスポーチから取り出した俺の下着を洗面台に並べて真剣に悩んでる。……ええっと。これ、なんの羞恥プレイでしょうか?
 悩みに悩みまくったクリスが手に取ったのは、黒のひらひら。……うん、いいよ。もう結構慣れた……。
 肌着も着せられ、バスローブを羽織らされ、そのまんま部屋に抱かれて戻ったら、今度はメリダさんのターンだった。
 迷いなく俺に着付けていくのは魔法師の正装。黒レースがエロいクリス色のローブ。
 袖の袂の飾りは今回は水晶に変わっている。
 髪も整えられた。華美にならない程度に。それから化粧も。
 何がなんだかわからないうちに、支度が終わっていつもの濃紺の制服を着たクリスにエスコートされる形で部屋を出る。
 マシロはメリダさんとお留守番。
 いつも通りの護衛コンビが後ろについて。
 なんの説明もなく、俺はされるがままに進み。

 近衛騎士と思しき人が、重厚な扉を開けてくれて、クリスエスコートはそのままで中に入る。
 いまいち名前を覚えていない、お城に務めている貴族の人たちが大勢。
 壇上には陛下と宰相さん。
 一段低い、陛下に一番近い場所には、お兄さんとティーナさん。

 …………え?
 どゆこと?








*****
チラ見マシロと
空の紙袋を悲しげに見るマシロが
イチオシ(笑)
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