【完結】ぼくは伴侶たちから溺愛されてます。とても大好きなので、子供を産むことを決めました。

ゆずは

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番外編

運命はすぐ傍に⑤

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「エリアス殿下、ご懐妊です」

 諦めたような、疲れ切ったような、宮廷医の言葉に、集まっていた貴族たちが色めきだった。

「……花籠現出の翌日にご懐妊されるなんて……」
「で……殿下のお相手は……!?一体どこの貴族の……」
「しかし、婚姻式も、婚約すらまだ整っておりませんのに……っ」
「まさか、学院で……!?」
「静かに」

 好き放題喚いていた貴族たちが、父上の声に黙った。

「イサーク」
「はい。間違いなく私の子です」

 笑顔とともに宣言すれば、貴族たちはまたざわついた。
 父上はそれらを片手で制すると、呆れたように私を見た。

「現出した翌日に懐妊とは、急ぎ過ぎではないか」
「私はそうは思いません」

 父上は一度溜息を付きながらも、私を見てニヤリと笑った。

「サリムベルツ、エリアスの容態は」
「落ち着いていらっしゃいます。多少の噛み跡は見受けられますが、強制された痕跡はございません。揺籠にも問題ないかと」
「わかった。……では、イサーク。お前の婚約者としてエリアスを指名する」
「父上」
「婚姻式は出産後に。異のある者は?」
「陛下!!」

 ダン!と杖を鳴らしたのは、高齢の貴族だ。

「王族の務めはどうなさるおつもりか。花籠の確認も初夜も、誰も確認をしておりません。殿下が身籠ったお子が不義の子でないこと、どのように証明なさるのか」

 父上は玉座に座り、ゆったりと足を組み、肘掛けに腕をついていた。そして、なにより、冷ややかな視線をその貴族だけでなく、全員に向けていた。
 ヒヤリとした魔力が謁見の間を満たしていく。

「貴様らは国の母となる存在を辱めることしか考えないのか」

 冷気が強くなった。
 これは父上の怒りだ。

「私の母もその犠牲になったのだったな。婚姻式で無理矢理婚礼服を剥ぎ取り、花籠を晒させ、バルコニーから国民に対してもそれを晒したんだったな。その後の晩餐会でも貴族たちの目の前で父に犯されたそうだな。ほぼ自我をなくした母に強い媚薬を飲ませ、初夜を迎えた部屋でまた父に犯され、望まぬままに十数人の監視人からも愛撫を受け、その日のうちに宿ったのが私だ」

 淡々と語られるのは真実の言葉なのか。
 父上のこれほどまでの怒りを、私は見たことがない。

「十ヶ月かけて私を産み落としたあと、花籠は枯れ落ちた。……母の思いだったのだろうな。国のために私を残さなければならないという王妃としての務めを、しっかりと果たしたのだ。……それを聞いたとき、私の父は本当に国王なのかと疑いもした。それを許した父にも怒りを覚えた。
 私のときもそうだったな?アベルが心の強いものだったから良かったものの、婚姻式に足を開けだの下着を取れだの、くだらない野次を飛ばした者もいた。晩餐会での行為は阻止したが。初夜はどうだ?食い入るように私のアベルを見つめ、自慰をする。それが監視人か?ただの見世物ではないか。お前たちはそうやって国母となる王妃を卑しめている。自分たちの慰み者にしている。異論は?」

 ちらりと貴族たちを見ると、ほとんどの者たちの顔が青褪めている。それなりに心当たりの有るものが多いのだろう。

「へ、陛下、ですが、やはり、安全面でも、確認という意味でも、閨への監視人は――――」
「では初夜に一人でよいだろう。それも、薄いカーテンの外で、妃に知られないように息を潜められる者でいい。よいか、これは決定事項だ。これが守られないのであれば、王族の血は途絶えるものと思え」

 貴族たちは震えながら頭を下げた。

「エリアスの腹の子の父親は、間違いなくイサークだ。花籠が現出し、イサークがエリアスの部屋に入ってから、私が結界を結んだのだからな?その結界に外から入れるのは私と妃だけだ。……最中に飲み物や食べ物を届けていた妃をここに呼び戻そうか?」

 ……父上の独壇場。
 ゆったりと足を組み直した父上は、口元に笑みを浮かべた。

「異論はないようだな。――――イサーク」
「はい、父上」
「エリアスは魔力が高い。魔力が欠乏することも考えられる。サリムベルツにしっかりと指導を受けろ」
「はい」
「サリムベルツ、また頼むぞ」
「ええ。お任せください」

 そうして、謁見は終了した。
 私達を使って、王族に流れる悪習を取り除いたのは明らかだ。
 …まあ、それはいい。
 最愛を他人の前に晒さなければならないなんて。私ならその場にいる貴族全員を殺していたと思う。





 一月後、私は父上から「大変だな」と言われたことの真意に気づいた。
 兄上の魔力が私よりも高い故に、揺籠に宿った命が、兄上の魔力をよく吸い取ってしまうのだ。
 それにより魔力が不足し、兄上の体調が悪くなる。
 それを防ぐために、抱き続けろと宮廷医に言われた。母様のときは二人がかりでなんとかなったらしいが。
 常に兄上と交わっていていいというのは、私にとっては幸福以外なにものでもないが、流石に途中休まなければ精子が作られない。
 その間は微々たるものでも、唾液でなんとか魔力を与えていた。
 ……うん。たしかに大変だ。けれど、嫌じゃない。
 母様から「今のうちにできる限りの公務を」と言われたのも、こういうことだったか…と納得した。
 仕事してる暇がない。
 時間ができたら兄上を抱いている。
 疲れる。が、至福のとき。

「兄上」

 たまにそう呼ぶと、兄上は唇を尖らせて私に抗議してくる。

「エリアス」

 名を呼べば、嬉しそうに私の唇に口付けてくれる。

「愛してる、イサーク」
「ええ。愛してます…エリアス」

 探していたわけじゃないけれど、探すこともなく、私の運命はここにいた。
 私が生まれたときから。
 運命は、私のすぐ傍にいた。








(おわり)




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