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幼馴染み二人とほとんど会えなくても豊穣の国の神殿で頑張ります

46 僕の決意

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「も、もうっ」

 顔が熱い。
 おたおたしてたら、ディーにキスされた。とっても深くて、舌を絡められるやつ。

「は……」

 つい…っと離れたと思ったら、すかさずエルがキスしてくる。…おんなじ、深いやつ。

「ん……」

 唇が離れたら、また二人にぎゅーってされる。

「俺達の頭ん中、フィーのことばかりだってわかった?」
「ふぇ……?」
「どうしようもないくらい、フィーのことばかりだよ」
「はぅ…」
「だから、フィーも、俺達だけにしてくれな?」
「キスは絶対ダメだし、この身体も、私達以外の人に見せても触らせてもだめだからね?」
「ん……」
「「愛してるよ、フィー」」
「ん……僕、も」

 静かに、穏やかに。
 ちゅ、ちゅ、って、触れ合わせる唇が気持ちよくて。

「僕、頑張るからね」
「ああ」
「フィーに負けないくらい私達も頑張るけどね」

 動機は不純だけど、僕は神官になりたい。
 二人が怪我をしても、すぐに癒せるように。
 僕が、二人を失わないために。
 泣き言は言わない。
 どんな思いだって、女神さまは受け入れてくれるし認めてくれるから。

 ディーとエルは冒険者として名を馳せること。あの成人のお祝いのときに宣言してたこと。
 それから、三人で暮らすための家を買うこと。お金を儲ける…というのは、僕には難しい。金銭と交換して何かをしたいとも思えないし。女神さまの御力は、そんな交換で与えていいものじゃないから。僕の、やりたいように。それは、心次第。

 僕はまだまだ子供だから、知らないことばかり。
 二人は僕よりも色々なことを考えてる。

「そろそろ戻るね」
「そうだな」
「お腹出して寝ちゃだめだよ?」
「僕、そんなに小さな子どもじゃないよ!」

 やさしいキス。

「おやすみなさい」
「「おやすみ、フィー」」

 最後に、二人の頬に、背伸びしてキスをした。
 ……この身長差も、埋まらないけど。

「……またね」
「一ヶ月後に」
「そんな顔しなくてもすぐだからね」
「うん!」

 名残惜しいけど、僕は二人から手を離して、神殿の扉を開ける。
 中に入る直前、まだ僕を見てくれてる二人に、手を振ったら、二人も手を振ってくれた。
 いつまでもそうしていたいけど、それじゃ二人も帰れないから、ゆっくり扉を閉めた。

「ラルフィン君」

 奥通路の方へ向かったら、神殿長さんが立っていた。

「神殿長さん」
「おかえり。もう帰ってこないんじゃないかと思ったよ」
「ただ今戻りました。……えと、ごめんなさい。七の鐘も……過ぎちゃいましたよね」

 怒られるかと身構えたけど、神殿長さんは苦笑して僕の頭をポンポンと優しく撫でた。

「大丈夫。……外からあまりにも不穏な言い争いが聞こえていたから、警邏に来てもらおうか思案したくらいだから」
「うわわわわ……すみませんっ、なんか、二人がいきなり言い争い始めちゃって……」

 聞こえてたんだ…って思ったら、余計恥ずかしい。

 慌ててたら、神殿長さんが表情を緩めた。

「気にすることはない。いい顔をしてる。二人に会って色々吹っ切れたのかな」

 お父さんのように僕のことを気にかけてくれてる神殿長さん。
 僕は自然と笑うことができた。

「また、迷うかもしれないですけど、でも、迷っても前に進もうと思って」
「うん」
「二人も背中を押してくれたし、もし僕が迷ったら、背中に手を当てて僕が決めるまで待ってくれると思うし」
「うん」
「だから、大丈夫、って」
「うん。彼らは本当に君にとってかけがえのない人たちだね」
「はい!」

 そんなふうに言ってもらえて、僕は嬉しくなる。
 神殿長さんと二人で通路を歩き始めた。
 神殿長さんは僕の部屋の前で立ち止まると、また、頭をぽんと撫でてくる。

「明日からもよろしく」
「はい!がんばります。おやすみなさい!」

 ぺこりと頭下げて、促されて部屋の中に入った。
 たくさん買った(買ってもらった?)服の一部は、宿の部屋に残した。持ち帰ったものをクローゼットにしまって、テーブルの上にティーポットと茶葉を置いた。

「……ふふ」

 眺めてるだけで嬉しくなる。

 外套も皺にならないようにクローゼットにしまって、寝間着に着替えた。
 ベッドに上がって、座り込む。
 二人を想う甘い気持ちがこみ上げてきて、手は自然と胸の前で祈りの形を取っていた。
 ふわりと、空気が舞う。
 女神さまにお祈りを。今日の幸福に感謝を。僕のありったけの想いが二人に届くように。
 目の前に、金色に光る小さな粒が、沢山舞っていた。
 僕の想いが溢れてる。
 静かに目を閉じると、頬に触れる優しい手を感じた。
 その優しい手――――女神さまの御手は、僕が眠りにつくまで触れ続けてた。


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