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幼馴染み二人と僕の15歳の試練
80 昇格式①
しおりを挟む春の三の月の一の日。
春…というより初夏に近くて、緑色も濃くなる季節。
朝の心地のいい日差しを受ける中、僕は礼拝堂にいる。
見習いさん以外の神官さんが、全員ローブを纏って同じく礼拝堂に揃っていた。
ディーとエルも、神殿長さんが同席するように伝えてくれたので、礼拝堂の後ろの方で佇んでいる。
「――――ではこれより、中位神官ラルフィンの昇格式を執り行うものとする」
神殿長さんがそう、宣言した。
昨日、ディーとエルは回復が進んで、医療師さんからも帰る許可が出た。
丁度一の日だから、僕も二人についていこうと思ってたら、救護室に神殿長さんがやってきたんだ。
「明日の一の鐘の後で礼拝堂に来てくれるかな。もちろん、恋人たちも一緒に」
「礼拝堂に?」
「そう。こういうことはちゃんとしなきゃならないからね」
僕はなんのことかわからなかったけど、わかりました、って頷いた。
そして翌日の一の日。
礼拝堂には僕と見習いさん以外の神官さんが全員揃っていて、かなり驚いたんだ。
「ラルフィン」
「はい」
神殿長さんに呼ばれて、女神さまの前に跪く。形式なんて知らない。なんとなく、女神さまの前に出たら、自然と膝をつくだけ。
「女神様の奇跡の御力の行使、とても素晴らしかった。…何が必要なのか、気づけたかい?」
「……はい」
それが本当に気づきだったのかはわからない。
けど、僕は二人を亡くしたくない、って、心の奥から願った。
女神さまに語りかけるだけじゃなくて、その御力を使わせてほしいと願った。
「その気付きは大切なものだ。ラルフィンにはラルフィンの気付きがある。他者と違っていてもいい。決まった答えはないものなんだ」
「……はい」
僕は、僕の。
じゃあ、みんな、神殿長さんも、ディーリッヒさんも、みんなみんな、気づいたことは別のこと。
だから、教えられない、のか。
正解がないから。
きっと、同じ答えは一つもないから。
「ラルフィンは女神様の愛子だ。そうでなければ、あれほどの怪我を癒やすことは出来なかっただろう」
「…愛子」
女神さまの愛子……って、なんだろう。
女神さまに愛されて認められる存在なら、神官さんみんながそうではないの?
「ラルフィン」
「はい」
神殿長さんの眼差しは、とても優しくて暖かかった。
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