子どもじゃないから、覚悟して。~子爵の息子、肉屋の倅を追い詰める。~

織緒こん

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番外編

ひとつの星を君に。2/2 ✳︎✳︎✳︎

emergency‼︎

 R 18回です。18歳未満のお嬢様と苦手な方は自衛してください。待ってましたのお姉様方は背後にご注意の上お楽しみください。

 ⁂ ⁂ ⁂ ⁂ ⁂

 幼年学校ではじめて会ったとき、ヴィンセントはチェリーブロンドの小柄な少年に一目惚れした。真面目で一生懸命で、自分の立場貴族家の次男であることをよく理解していた。

 そんな真面目なエリックがふらふら女性を追いかけるようになったのは、義姉が後継問題に頭を悩ませるようになってからだ。

「お前が俺に申し訳ないとか思うなら、残りの人生、俺にくれ。諦めて俺に堕ちて、ぐずぐずのドロドロにとろけてしまえ」

 結局振り払われることのなかった手で顎を掬いあげて、ヴィンセントはエリックの唇を悠々と奪った。緊張でガチガチに強張った背中を反対の手でゆるゆると撫でながら、無防備に薄く開かれた場所に分厚い舌を潜り込ませる。歯列をなぞり口蓋こうがいを愛撫し、舌を絡ませあった。貴族の令嬢とはこんな激しい口付けはしなかったろうし、花街の女は口付けを嫌う者も多い。慣れないだろう口付けは、エリックを翻弄した。

 たっぷりと味わって唇を離すと、エリックはぐったりとヴィンセントに身体を預けた。肩で大きく息をして、腰を抜かしている。言葉もなくぽやんとしている隙にさっさと抱き上げて、ヴィンセントはエリックを寝室に連れ込んだ。

「いいって言えよ」

 寝台の上で華奢な身体の上にのしかかって、ヴィンセントは言った。ぽろぽろと涙を流しながら、エリックは頷いた。

「いいよ。男相手ははじめてだから、つまんなかったらごめん」

「馬鹿なこと抜かすな。女はともかく男は俺が蹴散らしてたっつうの。それにお前、女が相手だってたいした経験ないだろう? 素人童貞じゃないか。それも花街の嬢の間では大人気の客だってな。たまに来て本番もほとんどしないでゆっくり休ませてくれる、神様みたいな客だってよ」

 チャランポランという体裁を保つために、たまに通った娼館でも勃つことは稀だった。エリックは一晩の料金を支払って娼婦たちをゆっくり眠らせてやり、自分の女好きを吹聴してもらった。そんなことまで調べられていて、哀しいのか嬉しいのかよくわからない涙が止まらなくなって、エリックは子どものようにしゃくりあげた。

「俺の可愛いエリー。ドジで間抜けで真面目なお前が愛おしいよ」

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯俺も、外面がよくてちょっと意地悪で、でもその何倍も優しいヴィンが好きだよ」

 泣きながら抱きしめられて、口付けられた。エリックはそれだけでぐずぐずにとろけた。応える舌の動きがぎこちなくて、閨事に慣れないのがそれだけでわかる。

 ヴィンセントは慣れた手つきで組み敷いた華奢な肢体から衣服を剥ぎ取って、滑らかな肌を愛撫する。筋肉のない柔らかな文官の身体は、あっという間に所有痕キスマークだらけになった。

「嘘だぁ、俺のが勃ってるぅ⋯⋯」

 泣きながら悶えて、エリックは自分の身体の変化におののいた。

「心も身体も、俺のことが好きだって言ってるんだよ」

 嬉しげに言うヴィンセントは、獲物に食らいつく肉食獣のようだった。事実、組み敷いた白い身体に噛みついて、甘くて色っぽい痕を残している。

「ほら、ここも」

 後蕾にたっぷりと香油を注ぎ込まれて、エリックはあんあんと甘い声を上げながら泣いた。

「まったく、酒飲んでもいやらしいことしても泣くんだな。めちゃくちゃ可愛くて、抱き潰してしまいそうだ」

「やっ、怖いこと言うなよッ。⋯⋯あ、待って、そこ変!」

 香油を纏って後蕾に入り込んだ指が、エリックの中心の裏側のしこりを押し上げた。新しい涙がエリックのまなじりから顳顬こめかみに流れていって、ヴィンセントはそれを舐め取った。

 沸き起こる官能に翻弄されて、エリックは泣きながらヴィンセントの首に腕を絡めて縋りつき、やがて細い悲鳴を上げて昇り詰めた。正面から密着した互いの腹部が、エリックが吐き出した蜜に濡れる。

 普段から肉欲の薄いエリックは、それだけでぐったりと寝台に沈み込んだ。

「畜生、可愛いイキ顔しやがって。よし、いい感じに力が抜けてるな。もうちょっと頑張れよ」

 ヴィンセントはエリックの両足を抱え上げると、自身の滾りを後蕾に押し当てた。ふたりの身長差は頭ひとつと半分あるが、横幅と厚みは大人と子どもほども違う。鍛えた現役の騎士と机から離れない文官とでは、体格が違いすぎた。狭い隘路に剛直を捻じ込むと、弛めたはずのそこがしゃぶりついてくる。

 少しずつ引いて押してを繰り返すと、その小さな突き込みごとにエリックは泣きながら甘イキを繰り返した。こんなにも感じやすくて、今までよく男を知らずにいたものだと、ヴィンセントは内心で安堵した。

 とうとう最奥に辿り着いたときには、エリックの顔貌は涙と飲み込み切れなかった唾液でぐちゃぐちゃで、胎の中は熱くうねってヴィンセントに絡みついた。

「ヴィン、ヴィン、本当に俺でいいの?」

 ヴィンセントは二十五年待ったが、エリックも二十五年押し隠した本心では求めていた。子爵家の長兄がもっと早く男児に恵まれていたなら、末弟が肉屋の若主人に惚れなかったらと、タラレバを言ったらキリはない。

「お前がいい。もう、俺のものだ」

 言いながら最奥を突き上げられて、エリックは再び泣きながら達した。泣いても泣いても、涙は後から溢れ出した。恍惚とした泣き顔はとても官能的で、ヴィンセントはするつもりもなかった遠慮を完全に放棄した。

 騎士としてメキメキ頭角を表し騎士団長にまで上り詰めた男は、団長を拝命するにあたり父親の予備の爵位を預り受けて、三男ながら伯爵だった。領地を分割して弱体化しないために、預かった爵位は一代限りで本家に返還する。騎士団長の体裁を保つためだけの爵位だから、子どもをもうけて次代に継なぐ必要もない。

「あ、あ、あ、また、イく、イく⋯⋯からぁッ」

 身体の大きな騎士に揺すぶられて、エリックは仰け反って達した。

「俺もそろそろ行くぞ」

 宣言して、ヴィンセントは達した直後の胎内を、さらに激しく往復した。薄い腹がヒクヒクと痙攣して、温かい洞穴が剛直を追い詰めた。

 やがて最奥に居座った剛直は情熱を吐き出した。灼熱に胎を焼かれて、エリックは内側だけで達した。涙に濡れたまなじりが色っぽくヴィンセントを見上げている。

「待っててくれて、ありがとう」

 掠れた声で囁いて、頑丈な首に回していた手がパタリと落ちた。はじめて男を受け入れた身体は限界を迎えて、意識を手放した。ヴィンセントは濡れた頬を唇で拭いながら、可愛い男をやっと手に入れた喜びを噛み締めた。

「夜空にどれだけ星がまたたいていても、俺の星はお前だけだ」

 そうしてふたりは、子爵家の末っ子の婿入りに遅れること二ヶ月後、四半世紀の想いを成就させたのだった。


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