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第一章2人の未来(みく)
虫除け -Chiffonside
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私が秀一郎さんと結婚すると分かって、一番喜んだのは上河原のお祖父ちゃん。ママのパパだった。
知らなかったけど、お祖父ちゃんと、秀一郎さんのお祖父様って元々知り合いなんだって。ママが大人になったら、お祖父ちゃんは結城家に嫁に出したいと思っていたらしいんだけど、ママが20歳の時に秀一郎さんのお父様はお母様と電撃的に結婚してしまったんだって。お祖父ちゃんはホクホクの笑顔で、
「でかしたぞ、未来。わしの長年の夢が叶ったわい。」
なんて言う。別に私はお祖父ちゃんのために秀一郎さんを選んだ訳じゃないんだけど。
「大体、龍太郎君が夏海さんと結婚しなきゃ、あんな9つも離れた奴に、志穂をやったりせんかったわい。」
と、挙句の果てに愚痴りだす始末。おじいちゃんはパパとママとの結婚には大反対。上河原に隼人(はやと)伯父さんががいなかったら、会社を継がせるにはとか言って、強引に別れさせられていたかも。で、お祖父ちゃんは今もどっか認めてなくて、何かと言うとそういう愚痴になる。でも、私たち孫はかわいいっていうんだから、なんか不思議。その私たちはパパがいなきゃ生まれてないんだけど? ……面と向かって言ったことはないけど。
あの後フリーズが融けて、何とかうちの両親に承諾をもらった後、秀一郎さんは私に指輪を買ってくれた。でも、高校生が行くようなアクセサリーショップの石のついてない安物のシルバーリング。
それをつけてお家に伺ったら、秀一郎さんのお母様がそれを目ざとく見つけて大笑い。
「全く……何でこんなとこまで似るかなぁ」
「へっ?」
私は誰に何が似てるのか分からなかった。
「あのね、私も龍太郎に結婚指輪の前にもらったのって、そういう縁日で売ってるような奴だったの」
「そうなんですか?」
私は、どうリアクションしていいのか分かんないので、とりあえずそう相槌を打っておいた。そしたら、秀一郎さんのお母さまが」
「未来さん、それ左手の薬指にずっとしておいてやってね。本物のエンゲージリングをあの子が渡すまでは。
それ、たぶん秀一郎なりの本気の証明だから。これ渡した時、
『学校でもしておいて、安物なら傷になっても気にならないでしょ。』とか言われなかった?」
うん、その通り。でもなんで、そんなことまで分かるんだろう。流石に母親だわ。
「あの子、それ絶対虫除けのつもりなのよ。だからって玩具にしなきゃならないって法はないのにね。そんなとこが親子でそっくり」
「血は争えないんですね。」
私は彼女の言葉にくすっと笑ってそう返した。
「そうよ……ホントに親子なのね」
秀一郎さんのお母さまはしみじみとそう言った。ただ、その時の彼女の顔は寂しげで眼は遠かった。でも、そのときの私はその言葉の本当の意味を知る由もなかったんだけれども。
あの指輪が仰々しいものでなかったのは、“虫除け”としてずっと填めておくのもそうだけど、私が秀一郎さんのことを話すとき、YUUKIに直接つながらないようにするのにも効果を発揮した。
あの指輪を填めている事で虫除けになる前に私は、大学の子から彼氏の事を根掘り葉掘り聞かれた。だけど、馴れ初めは家庭教師の先生と生徒だし、チープなステディリングともなれば、誰にも玉の輿であるとは気づかれずに済んだ。
そして、秀一郎さんは翌年、無事卒業。YUUKIに入社した。
それから約一年、今度は私の4回生を目前にした時期に、正式な婚約をするべく両家が集まった。
その時……パパが彼のお母様をママが彼のお父様をみて固まってしまった。何だか、一瞬魔法で時が止まったように。そして、金縛りから解けるが如く、四人は一斉にしゃべりだした。
「何か初めてお会いした気がしませんね」
と、親たちは口々に言い、あれよあれよという間に親同士が盛り上がってしまったのだ。
思った以上にすんなりと、和やかな空気の中、私たちの結婚が決まった。
知らなかったけど、お祖父ちゃんと、秀一郎さんのお祖父様って元々知り合いなんだって。ママが大人になったら、お祖父ちゃんは結城家に嫁に出したいと思っていたらしいんだけど、ママが20歳の時に秀一郎さんのお父様はお母様と電撃的に結婚してしまったんだって。お祖父ちゃんはホクホクの笑顔で、
「でかしたぞ、未来。わしの長年の夢が叶ったわい。」
なんて言う。別に私はお祖父ちゃんのために秀一郎さんを選んだ訳じゃないんだけど。
「大体、龍太郎君が夏海さんと結婚しなきゃ、あんな9つも離れた奴に、志穂をやったりせんかったわい。」
と、挙句の果てに愚痴りだす始末。おじいちゃんはパパとママとの結婚には大反対。上河原に隼人(はやと)伯父さんががいなかったら、会社を継がせるにはとか言って、強引に別れさせられていたかも。で、お祖父ちゃんは今もどっか認めてなくて、何かと言うとそういう愚痴になる。でも、私たち孫はかわいいっていうんだから、なんか不思議。その私たちはパパがいなきゃ生まれてないんだけど? ……面と向かって言ったことはないけど。
あの後フリーズが融けて、何とかうちの両親に承諾をもらった後、秀一郎さんは私に指輪を買ってくれた。でも、高校生が行くようなアクセサリーショップの石のついてない安物のシルバーリング。
それをつけてお家に伺ったら、秀一郎さんのお母様がそれを目ざとく見つけて大笑い。
「全く……何でこんなとこまで似るかなぁ」
「へっ?」
私は誰に何が似てるのか分からなかった。
「あのね、私も龍太郎に結婚指輪の前にもらったのって、そういう縁日で売ってるような奴だったの」
「そうなんですか?」
私は、どうリアクションしていいのか分かんないので、とりあえずそう相槌を打っておいた。そしたら、秀一郎さんのお母さまが」
「未来さん、それ左手の薬指にずっとしておいてやってね。本物のエンゲージリングをあの子が渡すまでは。
それ、たぶん秀一郎なりの本気の証明だから。これ渡した時、
『学校でもしておいて、安物なら傷になっても気にならないでしょ。』とか言われなかった?」
うん、その通り。でもなんで、そんなことまで分かるんだろう。流石に母親だわ。
「あの子、それ絶対虫除けのつもりなのよ。だからって玩具にしなきゃならないって法はないのにね。そんなとこが親子でそっくり」
「血は争えないんですね。」
私は彼女の言葉にくすっと笑ってそう返した。
「そうよ……ホントに親子なのね」
秀一郎さんのお母さまはしみじみとそう言った。ただ、その時の彼女の顔は寂しげで眼は遠かった。でも、そのときの私はその言葉の本当の意味を知る由もなかったんだけれども。
あの指輪が仰々しいものでなかったのは、“虫除け”としてずっと填めておくのもそうだけど、私が秀一郎さんのことを話すとき、YUUKIに直接つながらないようにするのにも効果を発揮した。
あの指輪を填めている事で虫除けになる前に私は、大学の子から彼氏の事を根掘り葉掘り聞かれた。だけど、馴れ初めは家庭教師の先生と生徒だし、チープなステディリングともなれば、誰にも玉の輿であるとは気づかれずに済んだ。
そして、秀一郎さんは翌年、無事卒業。YUUKIに入社した。
それから約一年、今度は私の4回生を目前にした時期に、正式な婚約をするべく両家が集まった。
その時……パパが彼のお母様をママが彼のお父様をみて固まってしまった。何だか、一瞬魔法で時が止まったように。そして、金縛りから解けるが如く、四人は一斉にしゃべりだした。
「何か初めてお会いした気がしませんね」
と、親たちは口々に言い、あれよあれよという間に親同士が盛り上がってしまったのだ。
思った以上にすんなりと、和やかな空気の中、私たちの結婚が決まった。
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