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第22話 たまにはまったりともしてみる。
Chapter-33
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「んー……」
珍しく、手持ち無沙汰だな。
俺はマークリスの屋敷の執務室にいたのだが、農業改革の指示も、灌漑計画の立案も、すでに出し終えたあとで、結果が上がってくるのを待つ身。
アクアビット蒸留所の様子見も特に必要がないはずだし。わざわざ覗きに行って邪魔するのもあれだしなぁ。
「少し手足の伸ばせるところにいるか」
窮屈な執務机に腰掛けている必要もないだろうと思い、俺は、リビングスペースに移動するつもりで、執務机の椅子から立ち上がった。
関節を解すようにしながら、執務室を出る。
リビングスペースのあるホールに歩いていくと、ちょうど、玄関から、キャロが入ってきていた。
「…………」
なんか、俺の身体は、半自動的に動き始めて……
「あ、ちょうどよかった……って、え、ちょっ、アルヴィン!?」
なにか言いかけたキャロを、いきなり抱きしめ、唇を重ねていた。
「ん、んーっ」
最初は俺を払い除けようとした感じだったキャロだったが、それは反射的にもので、どこか観念したような表情になりつつ、ゆるく抱きつき返してくる。
「ぷは……」
「ぷは、はーっ……い、いきなりどうしたのよ、アルヴィン」
キスを離すと、キャロは、最初に荒くなった息を整えながら、少し涙目になりつつ、俺に訊ねてくる。
「す、スマン、なんかボーッとしてて……その、そんなに嫌だったか?」
「い、嫌なわけ、ないじゃない、いきなりだったから、驚いただけよ」
我に返った俺が慌てて言うと、キャロは、どこかため息を付くように息を吐きだしつつ、そう言った。
「けど、涙……」
「び、びっくりしたから出ちゃっただけよ、こんなの」
俺が心配して言うと、キャロはその涙を拭いつつ、実際に大丈夫だ、という感じで、強気な感じで振る舞ってきた。
「なら……良いけどな」
「私は良いけど……アルヴィンこそなんかあったの?」
俺が気まずそうな顔をしながら言うと、キャロは心配そうな表情で、俺の顔を覗き込んできた。
「いや……うん、少し疲れてるのかな。意識するほどじゃないんだが」
俺は、そう言って関節を解すような仕種をした。
「ならいいけど……なにか急ぎの用とかはあるわけ?」
「いや、今日はないな……キャロこそ、なんかあったんじゃないのか?」
ちょうどよかった、と、俺に話しかけてきているような感じだった。
「ううん、別に急ぎでもないから。疲れてるなら少しゆっくりしてればいいわ」
キャロは、そう言うと、俺の首元に手を伸ばし、ネクタイを緩めてくれた。
「解った、済まないな」
「気にしないで。あ、うーん……気にしてほしいけど、気に病まないで、って言えば良いのかしらね」
キャロは途中から苦笑しながら、そう言った。
そう来たか。と、俺はキャロの頭を撫でる。
「体調が悪いようだったら、無理しないでね」
「うん、そこまでじゃないよ」
念を押すようなキャロの言葉に、俺はそう答えた。
「じゃあ、ちょっと、私、兵団の槍術訓練を頼まれてるから」
「了解。俺はおとなしくしてる」
キャロとは、そこで別れた。
なにをするでもなく、身体の力を抜いて、リビングスペースのソファでぼーっと座っていると。
「あ、アルヴィン、こちらにいたんですか……て、え?」
ちょうど入ってきたミーラに向かって、俺は立ち上がり、正面から抱きしめて、キスをしていた。
「ん、んーっ……」
ミーラも反射的には俺を払い除けようとした感じだったが、すぐにそれはやめて、俺に身を任せるように、だらりと腕を下げつつ、唇を交わしたまま、ネコ科のような大きな目をきゅーっと細くする。
「ぷは……」
「ぷは……はぁ……ど、どうしたんですか、アルヴィン、いきなり」
そうだよな、驚くよな。
「い、いや、なんだかミーラを見たら、身体が半ば勝手に……すまん、嫌だったか?」
「いえ、別に嫌ではありませんけど」
ミーラはそう言って、うーん、と唸るような声を出す。
「アルヴィンの様子がおかしいから、少し心配かな、と」
「なんだろうな、ちょっと疲れてるのかな、俺」
そう言って、俺は関節を解すような仕種をしてみせた。
「今日はもう、部屋着にでも着替えて、ゆっくりなさっていたほうが良いのではないですか?」
「ああ、うん、そうした方が良さそうだな」
執務をしないと決めたのであれば、フォーマルな格好をしている必要もない、か。
「ところで、ミーラの方はなんか用事があったんじゃないの?」
「あ、ええ、教会の時計の部品交換が必要なんですが……」
おっと、そりゃ後回しじゃまずいな。
「ああ、それなら、アイザックに言って資金を引き出してもらってくれ。俺からは“よきにはからえ”で」
「わかりました」
クス、とネコっぽい表情で笑ったミーラは、そのままアイザックを探して屋敷の奥へと移動していった。
俺も俺で、一旦自室に戻り、今日はもう、と、シンプルな部屋着に着替える。ガウンが必要な季節ではない。
しかし、部屋を見てみると、まだベッドメイクなどが終わっていないから、これから使用人が入ってきてそれをするはずだ。
そんなわけで、俺は一旦、ホールのリビングスペースに戻る。
「アルヴィン、今日の晩ごは……」
ちょうど、やってきたエミを、正面から抱きしめて、そのままキスをする。
「んー♪」
エミは抱きしめられてキスされるなり、うっとりした感じで俺に抱きつき返してくる。
「んー」
俺が離そうとしても、最初は軽く、逆に離すことに抵抗されてしまったほどだ。
「ぷは……え、エミは大胆だな」
「ん……そう?」
俺が少し唖然とさせられながら言うと、エミは小首をかしげるようにして言う。
「でもアルヴィン、いきなりどうしたの?」
「うん、なんか俺、ちょっと体調が良くないみたいだ」
3連続ともなると、いよいよちょっとおかしい。
なんか今日は、おとなしくしていた方がいい……というか、身のための気がする。
「なんか本格的に疲れてる感じだな、今日はもう横にでもなっていよう」
俺は軽くため息をつきつつ、そう言った。
「解った。じゃあ、ご飯もあっさりしたもののほうが良い?」
「あんまり病人食じみたものよりは、少し栄養がつくもののほうが良いかな」
「了解」
エミの問いかけに、俺が答えると、エミはそう言って、厨房の方に移動していった。
俺は、屋敷の2階に上がり、自室に戻ってベッドで横になろうと────
「あ、アルヴィン様、すみません、まだベッドメイクの途中で」
まずい。
アイリスだ。
またさっきまでみたいにナチュラルに襲ってしまったらまずいぞ。
「どうしたんですか? アルヴィン様」
「ひっ」
とてとてと歩み寄ってくるアイリスに、俺はとっさに身構えてしまう。
「どうか? しましたか?」
う、うーん?
いや、可愛いか否かで言えば、アイリスは確かに可愛いよ?
小首をかしげて俺を見上げてくる仕種なんかは、たしかに愛らしい。
だが、先程までのような衝動は訪れなかった。
「なるほどなぁ」
ホールのリビングスペースに、なんか対策委員会のように、いつものメンバー……俺とキャロ、エミ、ミーラに、姉弟子とジャックが集まってきている。
「ちなみにリリーさんはどうなの?」
「姉弟子にも、別に」
キャロの問いかけに、俺はそう答えた。
「アイリスさんとリリーさんは大丈夫だということは……」
「単純に、見かけ13歳未満は対象外?」
「おいこら」
ミーラとエミが至極真面目な顔で言うが、姉弟子は額に血管浮かせて低い声を出す。
「人の婚約者だって意識ある? 君たち」
ジャックが、ジトリと汗をかくようにしながら、真面目な顔で困惑しているような3人にそう言った。
「っていうか、欲求不満が溜まっているんじゃないのか?」
姉弟子はそう言った。
「あれですか、疲れ◯ラとかそういう類の現象ですか」
「ちょっとは言葉選びなさいよ」
俺が少しボーッとしながら言うと、キャロが流石に呆れたような顔でツッコんできた。
「いや……アルヴィンもだが、その、3人の方が、だな」
「え?」
姉弟子が、どこか言いにくそうに、しかし口元では明らかに笑いながら、言う。
俺と、キャロとエミとミーラが、揃って目を点にする。
「お前、陞爵受けてから、忙しさにかまけてあんまり手を出してないだろう?」
「まぁ、それは確かにそうなんですが」
俺がそう言うと、姉弟子はニマッとした、小悪魔のような笑みを浮かべた。
「魔導の才は感受性の高さとセットだからな。婚姻などという関係になっていれば相手の感情もある程度反射してしまうものだ。私ほどの慣れもないだろうしな」
「へぇ」
「ふーん」
「そうですか……」
あれ? なんか突然、俺、飢えた肉食獣の群れの中に放り込まれた気がするんですけど?
「今日は暇そうだったからいいけど、執務のある日にこんな事になったら困るわねぇ」
「そうですね、しっかり解消するものは解消しておきませんと」
「領地運営の支障になっても困る」
「い、いやちょっと、待て」
口で言ってることはもっともなんだけど、いや、なんかキャロなんか舌なめずりしてるようにしか見えないんだけど!?
「まずは4人で湯浴みでもする?」
「いいわねエミ、急いでお風呂沸かしてもらいましょうか」
「ですが、食事がまだですよ」
「そういうことなら、私がなにか精のつくものでも用意してやろう」
い、いや何言ってんですか姉弟子。
「神の1人は仰られています、汝の為したいように為すが良い、と」
「ちょっと待てー! それ別の神様やろー!!」
ミーラの言葉に反論しつつも、俺はキャロとエミに両側から抱え上げられ、連行されていくのであった。
「今の話、ホントなんですか?」
「まぁ、ああでも言わんとやることやらないだろあいつら」
「なるほど…………」
「ただ、まるっきりの嘘でもないんだがな」
「え?」
「そのあたりはよろしく頼むぞ、婿殿」
「は、はい…………」
珍しく、手持ち無沙汰だな。
俺はマークリスの屋敷の執務室にいたのだが、農業改革の指示も、灌漑計画の立案も、すでに出し終えたあとで、結果が上がってくるのを待つ身。
アクアビット蒸留所の様子見も特に必要がないはずだし。わざわざ覗きに行って邪魔するのもあれだしなぁ。
「少し手足の伸ばせるところにいるか」
窮屈な執務机に腰掛けている必要もないだろうと思い、俺は、リビングスペースに移動するつもりで、執務机の椅子から立ち上がった。
関節を解すようにしながら、執務室を出る。
リビングスペースのあるホールに歩いていくと、ちょうど、玄関から、キャロが入ってきていた。
「…………」
なんか、俺の身体は、半自動的に動き始めて……
「あ、ちょうどよかった……って、え、ちょっ、アルヴィン!?」
なにか言いかけたキャロを、いきなり抱きしめ、唇を重ねていた。
「ん、んーっ」
最初は俺を払い除けようとした感じだったキャロだったが、それは反射的にもので、どこか観念したような表情になりつつ、ゆるく抱きつき返してくる。
「ぷは……」
「ぷは、はーっ……い、いきなりどうしたのよ、アルヴィン」
キスを離すと、キャロは、最初に荒くなった息を整えながら、少し涙目になりつつ、俺に訊ねてくる。
「す、スマン、なんかボーッとしてて……その、そんなに嫌だったか?」
「い、嫌なわけ、ないじゃない、いきなりだったから、驚いただけよ」
我に返った俺が慌てて言うと、キャロは、どこかため息を付くように息を吐きだしつつ、そう言った。
「けど、涙……」
「び、びっくりしたから出ちゃっただけよ、こんなの」
俺が心配して言うと、キャロはその涙を拭いつつ、実際に大丈夫だ、という感じで、強気な感じで振る舞ってきた。
「なら……良いけどな」
「私は良いけど……アルヴィンこそなんかあったの?」
俺が気まずそうな顔をしながら言うと、キャロは心配そうな表情で、俺の顔を覗き込んできた。
「いや……うん、少し疲れてるのかな。意識するほどじゃないんだが」
俺は、そう言って関節を解すような仕種をした。
「ならいいけど……なにか急ぎの用とかはあるわけ?」
「いや、今日はないな……キャロこそ、なんかあったんじゃないのか?」
ちょうどよかった、と、俺に話しかけてきているような感じだった。
「ううん、別に急ぎでもないから。疲れてるなら少しゆっくりしてればいいわ」
キャロは、そう言うと、俺の首元に手を伸ばし、ネクタイを緩めてくれた。
「解った、済まないな」
「気にしないで。あ、うーん……気にしてほしいけど、気に病まないで、って言えば良いのかしらね」
キャロは途中から苦笑しながら、そう言った。
そう来たか。と、俺はキャロの頭を撫でる。
「体調が悪いようだったら、無理しないでね」
「うん、そこまでじゃないよ」
念を押すようなキャロの言葉に、俺はそう答えた。
「じゃあ、ちょっと、私、兵団の槍術訓練を頼まれてるから」
「了解。俺はおとなしくしてる」
キャロとは、そこで別れた。
なにをするでもなく、身体の力を抜いて、リビングスペースのソファでぼーっと座っていると。
「あ、アルヴィン、こちらにいたんですか……て、え?」
ちょうど入ってきたミーラに向かって、俺は立ち上がり、正面から抱きしめて、キスをしていた。
「ん、んーっ……」
ミーラも反射的には俺を払い除けようとした感じだったが、すぐにそれはやめて、俺に身を任せるように、だらりと腕を下げつつ、唇を交わしたまま、ネコ科のような大きな目をきゅーっと細くする。
「ぷは……」
「ぷは……はぁ……ど、どうしたんですか、アルヴィン、いきなり」
そうだよな、驚くよな。
「い、いや、なんだかミーラを見たら、身体が半ば勝手に……すまん、嫌だったか?」
「いえ、別に嫌ではありませんけど」
ミーラはそう言って、うーん、と唸るような声を出す。
「アルヴィンの様子がおかしいから、少し心配かな、と」
「なんだろうな、ちょっと疲れてるのかな、俺」
そう言って、俺は関節を解すような仕種をしてみせた。
「今日はもう、部屋着にでも着替えて、ゆっくりなさっていたほうが良いのではないですか?」
「ああ、うん、そうした方が良さそうだな」
執務をしないと決めたのであれば、フォーマルな格好をしている必要もない、か。
「ところで、ミーラの方はなんか用事があったんじゃないの?」
「あ、ええ、教会の時計の部品交換が必要なんですが……」
おっと、そりゃ後回しじゃまずいな。
「ああ、それなら、アイザックに言って資金を引き出してもらってくれ。俺からは“よきにはからえ”で」
「わかりました」
クス、とネコっぽい表情で笑ったミーラは、そのままアイザックを探して屋敷の奥へと移動していった。
俺も俺で、一旦自室に戻り、今日はもう、と、シンプルな部屋着に着替える。ガウンが必要な季節ではない。
しかし、部屋を見てみると、まだベッドメイクなどが終わっていないから、これから使用人が入ってきてそれをするはずだ。
そんなわけで、俺は一旦、ホールのリビングスペースに戻る。
「アルヴィン、今日の晩ごは……」
ちょうど、やってきたエミを、正面から抱きしめて、そのままキスをする。
「んー♪」
エミは抱きしめられてキスされるなり、うっとりした感じで俺に抱きつき返してくる。
「んー」
俺が離そうとしても、最初は軽く、逆に離すことに抵抗されてしまったほどだ。
「ぷは……え、エミは大胆だな」
「ん……そう?」
俺が少し唖然とさせられながら言うと、エミは小首をかしげるようにして言う。
「でもアルヴィン、いきなりどうしたの?」
「うん、なんか俺、ちょっと体調が良くないみたいだ」
3連続ともなると、いよいよちょっとおかしい。
なんか今日は、おとなしくしていた方がいい……というか、身のための気がする。
「なんか本格的に疲れてる感じだな、今日はもう横にでもなっていよう」
俺は軽くため息をつきつつ、そう言った。
「解った。じゃあ、ご飯もあっさりしたもののほうが良い?」
「あんまり病人食じみたものよりは、少し栄養がつくもののほうが良いかな」
「了解」
エミの問いかけに、俺が答えると、エミはそう言って、厨房の方に移動していった。
俺は、屋敷の2階に上がり、自室に戻ってベッドで横になろうと────
「あ、アルヴィン様、すみません、まだベッドメイクの途中で」
まずい。
アイリスだ。
またさっきまでみたいにナチュラルに襲ってしまったらまずいぞ。
「どうしたんですか? アルヴィン様」
「ひっ」
とてとてと歩み寄ってくるアイリスに、俺はとっさに身構えてしまう。
「どうか? しましたか?」
う、うーん?
いや、可愛いか否かで言えば、アイリスは確かに可愛いよ?
小首をかしげて俺を見上げてくる仕種なんかは、たしかに愛らしい。
だが、先程までのような衝動は訪れなかった。
「なるほどなぁ」
ホールのリビングスペースに、なんか対策委員会のように、いつものメンバー……俺とキャロ、エミ、ミーラに、姉弟子とジャックが集まってきている。
「ちなみにリリーさんはどうなの?」
「姉弟子にも、別に」
キャロの問いかけに、俺はそう答えた。
「アイリスさんとリリーさんは大丈夫だということは……」
「単純に、見かけ13歳未満は対象外?」
「おいこら」
ミーラとエミが至極真面目な顔で言うが、姉弟子は額に血管浮かせて低い声を出す。
「人の婚約者だって意識ある? 君たち」
ジャックが、ジトリと汗をかくようにしながら、真面目な顔で困惑しているような3人にそう言った。
「っていうか、欲求不満が溜まっているんじゃないのか?」
姉弟子はそう言った。
「あれですか、疲れ◯ラとかそういう類の現象ですか」
「ちょっとは言葉選びなさいよ」
俺が少しボーッとしながら言うと、キャロが流石に呆れたような顔でツッコんできた。
「いや……アルヴィンもだが、その、3人の方が、だな」
「え?」
姉弟子が、どこか言いにくそうに、しかし口元では明らかに笑いながら、言う。
俺と、キャロとエミとミーラが、揃って目を点にする。
「お前、陞爵受けてから、忙しさにかまけてあんまり手を出してないだろう?」
「まぁ、それは確かにそうなんですが」
俺がそう言うと、姉弟子はニマッとした、小悪魔のような笑みを浮かべた。
「魔導の才は感受性の高さとセットだからな。婚姻などという関係になっていれば相手の感情もある程度反射してしまうものだ。私ほどの慣れもないだろうしな」
「へぇ」
「ふーん」
「そうですか……」
あれ? なんか突然、俺、飢えた肉食獣の群れの中に放り込まれた気がするんですけど?
「今日は暇そうだったからいいけど、執務のある日にこんな事になったら困るわねぇ」
「そうですね、しっかり解消するものは解消しておきませんと」
「領地運営の支障になっても困る」
「い、いやちょっと、待て」
口で言ってることはもっともなんだけど、いや、なんかキャロなんか舌なめずりしてるようにしか見えないんだけど!?
「まずは4人で湯浴みでもする?」
「いいわねエミ、急いでお風呂沸かしてもらいましょうか」
「ですが、食事がまだですよ」
「そういうことなら、私がなにか精のつくものでも用意してやろう」
い、いや何言ってんですか姉弟子。
「神の1人は仰られています、汝の為したいように為すが良い、と」
「ちょっと待てー! それ別の神様やろー!!」
ミーラの言葉に反論しつつも、俺はキャロとエミに両側から抱え上げられ、連行されていくのであった。
「今の話、ホントなんですか?」
「まぁ、ああでも言わんとやることやらないだろあいつら」
「なるほど…………」
「ただ、まるっきりの嘘でもないんだがな」
「え?」
「そのあたりはよろしく頼むぞ、婿殿」
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