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第23話 領地での夏を過ごす。

Chapter-36.5 Ver.Ec

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 まぁ諍いにならなきゃ良いけどさぁ、

 誰だよ、嫁ズにジャンケンなんて教えたのは!

 …………どう考えても俺ですね、すみません。



 まぁ禍根が残るようなことはないっぽくて、キャロとミーラはなんかじゃれ合うようにしながら軟膏ぬり合っている。
 あの2人結構性格的に似てるから、歯車噛み合ってるところはなんか、前世の女子学生見てるみたい。いや、実際、年齢的にはそれなんだけどさ。

 で、俺の方はと言えば。

「じゃあ、私がアルヴィンにお願いする」

 と、勝ち手のチョキをVサインするように立てたまま、エミが言ってくる。

 姉弟子の作ってきたものは日焼けを抑えるというよりは過度な日焼けを止める、いわばサンオイルみたいな感じなもの。
 ただ、さっきもちょっと言ったけど、前世でイメージしていたサンオイルと違って、クリーム状の軟膏になっている。

 毛羽立ちの少ない麦わらの筵を敷いて、その上にエミがうつ伏せに横たわる。
 流石にまだビニールシートとかいう上等なものは出てきていない。
 まぁ、これでも充分なんだが。

「うーん……」
「どうしたの?」

 俺がエミのうつ伏せの姿を眺めてしまっていると、怪訝そうにエミが訊ねてきた。

「いや、エミの水着姿って……なんか、いい感じだなと思って」
「なにそれ」

 俺が言うと、クスクスとエミが笑う。
 まぁそりゃ、やることやってるし裸まで見せあってる仲で今さらっちゃ今更なんだが。

 なんかこう、裸とは違う趣きがあるよな、水着姿って。

「いや、エミって身長高いから、なんか大人っぽい感じ」
「うん? 私達もう15だけど……」

 あ、まぁ、アドラーシールム帝国の基準だと、数えで15の俺達はもう成人なんだが。

「でも意味はわかる、まだ子供の延長線って感じ?」
「そうそれ」

 実際、20歳ですら大学でバカやってる間はそんな感じだもんなぁ。
 前世だと、30超えてやっと大人らしい大人って言える感じ。

 医療が未発達で、寿命が短い現世だと、また少し違ってくるんだが……
 まぁ実際、15じゃ中高生ってイメージは抜けないよな。
 実際、冒険者養成学校卒業したばっかなわけだし。

「私、大人っぽく見える?」
「ああ」

 エミの口数少なめな性格も相まってるんだろうけどな。
 単純にスタイルの良さで言えば、一番出るとこ出て引っ込むところ引っ込んでるのはミーラなんだが。
 長身に、ワインレッドの、ワンピースの水着も相まって、エミは大人びて見える。

 おっと。
 そんなエミの肌が太陽光で荒れてはいけない。
 俺はエミの背中に、姉弟子の軟膏を塗りつけ、伸ばしていく。

「自分の魅せ方をわかってるってのもあるかもしれないなぁ」

 俺は、手を動かしつつ、ふと気がついて、そんな事を言った。

「シレジアに行った時に」
「うん?」

「晩餐会で、リリーさんのパーティードレスがよく似合っていたのを覚えていたから」
「あー、あれな」

 あのときは俺もちょっと驚いた。
 あの、普段は、小柄にボブカット、シンプルなパンツルックのことが多くて、どこの小学生ですかみたいな姉弟子が、ドレスと宝飾を身に着けてちょいと化粧しただけで、ちょっと大人びて見えたものなぁ。
 女性にょしょうは化けるとはああ言うことを言うんだろうか。

 それと比べると────

「エミは元々長身で落ち着いてる所あるから、ガラッとイメージが変わるわけではないけど、でもいい感じ出してるよ」
「そう? ありがとう」

 俺が素直に思ったままを言うと、エミは口元でくすっと笑った。
 嬉しそうにしてるっていうのは流石にわかる。

 鍛えているから、隆々としているのかと思いきや、そういうわけでもない。
 引き締まっているのは充分にわかるが、赤筋ばっかり発達したゴツゴツしたさわり心地とはまた違う。弾力を感じる柔らかさ

 改めて観察してみると、実感するな、と思った。

 背中から、一旦首元に手をうつして、それから腰の方へと下りていく。

「ん? これ……」
「どうかした?」

 いや、水着の後ろ側もV型になってるわけだが……
 えっと、この境界線もちゃんと塗っとかないとダメだよな。

「こういうことになるんだけど……」
「別に、不思議じゃない?」

 まぁ、そりゃあやること以下略。
 今更って感はあるけど……ここが外だって思うと、なんか恥ずかしく感じるな。
 いや、さほど衆目があるわけでもないんだが。

 そのあたりを塗り終えて、今度はお尻の下側に移っていく。

「アルヴィン」
「え?」

 エミの制止するような声に、俺は思わず間の抜けた声を出してしまっていた。

「そこより下は……自分でも塗れるけど……」
「あ、そうか、言われてみりゃそうだよな」

 素で気づいておらず、ボケっとそこへ移ってしまうところだった。

「んー……でも塗ってくれる?」

 エミは、少し考えるように唸り声を上げつつ、そう言ってくる。

「あ、別に、それは良いけど……」
「じゃあ、お願い」

 エミはうつ伏せのまま、振り返りながら、どこか悪戯っぽさを感じさせつつ、言ってくる。

「O.K.」

 言いながら、お尻から、更に下へ……と。

「ん……」
「どうかした?」

 俺は、手は休めず、ちょっと気づいたように、小さく声を出す。
 すると、エミが、それに気がついて、訊ねてきた。

「いや、防具の跡があるなと思って」
「うん? それは仕方のないこと」

 まじまじと見つめると、レッグガードを留めているバンドの跡がある。
 エミには、名目上の兵団長をしてもらっている以上、武具をつけることはよくある。

「私は剣でアルヴィンと出会った。だから闘いに必要なことで妥協はしたくない」
「そういう事か……」

「アルヴィンは、そういうの、嫌」
「いや、俺はエミ達のそういう姿勢のほうが好きだよ」

 少し心配げな感じで、エミが訊いてきたので、俺は、思ったままを口にした。

「そう言うと思った」

 エミはそう言って、悪戯っぽくクスッと笑う。

 俺の手は、横側からエミの左右の足に軟膏を伸ばしていき、踵にまでたどり着いた。

「これで、よし、と」
「ん、じゃあ交代」

 俺が言うと、エミが起き上がり、俺に対して、軟膏の容器を渡すよう手を出してくる。

「じゃあ、頼むよ」
「了解、脚の方も?」

 俺がうつ伏せに寝そべりながら言うと、エミはそう訊き返してきた。

「じゃあ、頼もうかな」
「解った、いいよ」
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