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俺の推理 5
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「吉良君の推理通りだとして、問題はその法務検察幹部が誰か、だな…」
「ええ」
「間違いなく言えるのは赤レンガ派ではない、ということだ」
「赤レンガ派…、ってあの確か、法務官僚のことでしたっけ?」
「その通り。まぁ、法務省というのは俺が言うのも何だが、不思議な役所でな…」
「法務大臣よりも検事総長の方が偉い、でしたっけ?」
俺がいきなり、それもズバリ切り込むと、押田部長は驚いた表情を浮かべた。
「良く知ってるな…」
「いえ…、昔、テレ朝の刑事ドラマで確か、そんな内容の回がありましてね…、法務大臣と最高検の次長検事…、それも女の次長検事が出ていましてね…、互いに…、法相が陰で女次長検事を検察庁の妖怪と罵れば、女次長検事も負けじと法相をクソ坊主と陰で罵っていた…」
あれは確か最終回だったかな…、俺はそんなことを思い出したりした。
「ああ。テレビの影響でか…、うん。テレビの影響力は大きいよな…」
押田部長は納得した顔付きで頷いた。
「それでだ、検察幹部が赤レンガ派だとした場合…、例えそれが事務次官だとしても、いや、だからこそ余計に検察としては…、現場の検察としては立件に全力を挙げただろう…」
「証拠の品こそ小山に握られているとしても、出頭してきた17歳のその少年を徹底的に締め上げて真実を語らせる…、すなわち、暴行したのが小山の馬鹿息子と、それに例えば事務次官の倅だったら、事務次官の倅だと白状させると?そうなれば必然的に法務官僚…、赤レンガ派の威信は低下し、逆にウミを出し切った格好の現場の検察は世論の脚光を浴び、ひいては現場の検察が赤レンガ派よりも立場が上である…、その上下関係を今まで以上に強固なものとすることができる…、そういうことですね?」
「そういうことだな」
「だが、検察は生憎と言うべきか、そのような動きをした形跡は見られない…、となれば…」
「ああ。その検察幹部はすなわち、現場の検察ということだな…」
「仮に現場の検察の幹部だとして…、それが藤川なら驚きですよね…」
ゲームセンターでの会社員暴行傷害致死事件は1年半前であり、その頃、藤川はまだ最高検の次長検事であった。
「横領に加えて、馬鹿息子が警察幹部や政治家の馬鹿息子たちと一緒になって人一人、死に至らしめた…、となれば現場の検察は致命的なダメージを受けることになりますからね…」
「ああ。だが生憎と言うべきか、その可能性はないな」
押田部長ははっきりとそう断言したので、俺は「どうしてです?」と首をかしげた。
「確かに藤川には妻子がいるが、しかし女の子なんだよ…」
押田部長からそう教えられた俺は白旗を掲げるしかなかった。何しろ被疑者は少年たちだからだ。少女であるはずがないのだ。
「だとしたら…」
「考えられるとしたら…、いや、考えたくもないんだが…」
「部長のその口ぶりから察するに、もしかして…、検事総長とか?」
俺がそう水を向けると押田部長は深刻そうな面持ちで頷いた。
「…警察庁警備局長の小山の馬鹿息子や、あるいはどこぞの有力な政治家の馬鹿息子と共に会社員に対して暴行を加えて死に至らしめたのが、検事総長のやはり馬鹿息子だとしたら、その後の検察…、東京地検刑事部や公判部の不可解な動きも説明がつくというものだ…」
押田部長はそう答えると頭を抱えた。
「ところで…、その出頭して来た少年ですが、どうなりました?」
俺は田林主任検事に尋ねた。
「確か、裁判の結果、懲役6年以上10年以下の求刑に対して、懲役4年以上8年以下の不定期刑が言い渡されました」
「不定期刑…、ああ、未成年の被告人にだけ許される…」
「そうです」
「で、その不定期刑はもう…」
「ええ。確定して、収監されたはずです」
「やっぱり少年刑務所に?」
「当然そうなります。どこの少年刑務所かまでは…」
「ああ。そりゃ、いきなりじゃ分かりませんよね…」
俺は田林主任検事を労わるように言った。それに対して田林主任検事はさすがに仕事熱心らしく、「後で調べます」と確約した。
「何しろ刑が確定したのは半年程前のはずですから…」
「じゃあ当然、まだ塀の中というわけだ…」
俺はそう呟くと、先を続けた。
「いずれにしろ、そのゲームセンターでの会社員暴行傷害致死事件は極めて冤罪の疑いが濃い…、で、証拠の品、それも冤罪の証拠の品はまだ、田島の手元に残っている可能性が高い以上、至急、押収する必要があるんじゃないでしょうかねぇ…、いや、そうなれば検察不祥事にもなりますが…」
俺は押田部長をのぞき込みながら、恐る恐るそう告げた。
「確かに…、吉良君の言う通り…、それも吉良君の推理通りだったとしたら当然、検察不祥事になるだろう。場合によっては引責辞任、いや、それだけじゃ済まないな…、犯人隠避、及び証拠隠滅の容疑で逮捕者が出るかも知れないな…」
「証拠隠滅って…、田島が証拠の品を隠したことですか?」
「そうだ」
「犯人隠避はともかく、証拠隠滅の罪に問われることはないんじゃないですか?少なくとも検察は…、何しろ証拠の品を隠したのは今も言った通り田島ですから…、それも小山に命じられて…、だとしたら証拠隠滅の罪に問われるのは小山と田島の二人だけでは?」
「確かにその二人は当然、証拠隠滅の罪に問うことができるだろう。あわせて犯人隠避の罪にも…」
「ええ」
「だがそれを言うなら検察とて…、刑事部にしろ公判部にしろ…、吉良君の推理が正しいとして…、その証拠の品である防犯カメラのビデオ映像には小山の馬鹿息子のみならず、検事総長の馬鹿息子までが会社員に暴行を働いている正にその現場が捉えられており、刑事部にしろ公判部にしろ、それが分かっていたからこそ、小山と田島の証拠隠滅を黙認した…、となれば刑事部にしろ公判部にしろ、証拠隠滅の事後共犯の罪に問われる可能性が極めて高い…」
「事後共犯ですか…」
「ああ。無論、今も言った通り、犯人隠避の罪にも、言うまでもなく問われるだろう…、まぁ、逮捕するかどうか、あるいは在宅調べでそのまま在宅起訴に持ち込むかどうか、そこまでは今はまだ分からないが、いずれにしろ検察は無傷では済まないだろうな…、だが…、そうだからと言って、無辜の者を獄につないだままで良いわけがない。それは法治国家としての死を意味するだろう…」
押田部長は何のてらいもなくそう断言した。
「押田部長のような方が検察に存在する限り、法治国家としての日本が死ぬことはないでしょう…」
俺は心の底からそう言った。すると押田部長にもそれが通じたのか、珍しく照れくさそうな表情を浮かべた。
「まぁ、それでも検察を庇うわけじゃありませんが、その身代わりとして出頭してきた17歳の少年にしても完全に真っ白ってわけじゃなさそうですし…」
俺は押田部長を庇うようにしてそう言った。
「どういう意味だ?」
押田部長は首をかしげた。
「だってそうでしょ?その17歳の少年は確かに直接には会社員への暴行に加わらなかったそうですが…、ただ他の仲間…、自分をパシリに使っていたであろう小山や検事総長、それに政治家の馬鹿息子たちの暴行を遠巻きに眺めていただけのようですが、それでも消防にも通報しないで会社員が…、それこそ無辜の会社員が暴行される様子を眺めていたのだとすれば、いかに直接には暴行に加わらなかったとしても立派な共犯になるんじゃないですか?まぁ、俺は法律のド素人なんで、違っているかも知れませんが…」
俺がそう言うと、田林主任検事が真っ先に反応した。実際に公判担当検事として一度はその事件に関わったからであろう。
「確かに…、不作為による幇助の罪に問われる可能性があると思います…」
田林主任検事は押田部長に対してそう意見具申に及べば、それに対して押田部長も、
「しかし、立件は難しいぞ?現にその不作為による幇助の罪で起訴したは良いが、無罪判決が出された事例もあるからなぁ…」
そう難色を示したりした。どうやら二人の間で法律談義が交わされるらしいと、そう判断した俺は邪魔にならぬよう黙っていた。
すると押田部長の方が先に、俺を置き去りにしていることに気付いたのか、田林主任検事との法律談義を早々に打ち切ると、
「ともかく、一刻も早く、田島の元からその証拠の品である防犯カメラのビデオ映像を押収する必要があるな…」
そう議論をまとめるように告げた。
「仮に、田島がその証拠の品を隠すとしたら、やはり自宅でしょうか…」
俺は押田部長に尋ねた。
「あるいは2号宅か…、ともあれそうだろうな…」
「ところで田島がどこに住んでいるのかは、検察では把握しているんですか?」
「いや、だが捜査関係事項照会書で問い合わせれば住所を割り出せるだろう…」
「捜査関係事項照会書って、推理小説なんかでも良く耳にしますけど、あれ使えるのは警察だけでは?」
「いや、検察も使える。法務省の事件事務規定第11条により可能だ」
「そうですか…、でもえらい時間がかかりそうですが…」
俺がそう水を向けると、確かにその通りのようで、押田部長は渋い表情となった。
「それよりも…、草壁忍に聞いてみてはどうでしょう…」
俺がそう提案すると押田部長も田林主任検事も興味を惹かれた様子であった。
「草壁忍なら田島の住所を知っていると?」
「まぁ、確証があるわけじゃありませんけど…、でも、田島は女子少年院から出所した直後の草壁忍に対して衣食住の世話を焼いてやったそうですから…、今のアパートだって、あるいは大友商事という働き口にしてもすぐに決まったわけではないでしょうから、その間…」
「田島の自宅に泊まっていたと?」
押田部長からそう問われた俺は、「ええ」と答えた。
「無論、あくまで推測ですが…」
俺はそう付け加えるのも忘れなかった。
だがそれでも押田部長も田林主任もすっかり俺のその提案に乗り気となり、
「私が聞いてみます…」
田林主任検事はそう言うといきなりソファから立ち上がり、草壁忍の取調べが行われている志貴の執務室へと足を運ぶべく、いったんその場を…、この特捜部長室をあとにした。
「ええ」
「間違いなく言えるのは赤レンガ派ではない、ということだ」
「赤レンガ派…、ってあの確か、法務官僚のことでしたっけ?」
「その通り。まぁ、法務省というのは俺が言うのも何だが、不思議な役所でな…」
「法務大臣よりも検事総長の方が偉い、でしたっけ?」
俺がいきなり、それもズバリ切り込むと、押田部長は驚いた表情を浮かべた。
「良く知ってるな…」
「いえ…、昔、テレ朝の刑事ドラマで確か、そんな内容の回がありましてね…、法務大臣と最高検の次長検事…、それも女の次長検事が出ていましてね…、互いに…、法相が陰で女次長検事を検察庁の妖怪と罵れば、女次長検事も負けじと法相をクソ坊主と陰で罵っていた…」
あれは確か最終回だったかな…、俺はそんなことを思い出したりした。
「ああ。テレビの影響でか…、うん。テレビの影響力は大きいよな…」
押田部長は納得した顔付きで頷いた。
「それでだ、検察幹部が赤レンガ派だとした場合…、例えそれが事務次官だとしても、いや、だからこそ余計に検察としては…、現場の検察としては立件に全力を挙げただろう…」
「証拠の品こそ小山に握られているとしても、出頭してきた17歳のその少年を徹底的に締め上げて真実を語らせる…、すなわち、暴行したのが小山の馬鹿息子と、それに例えば事務次官の倅だったら、事務次官の倅だと白状させると?そうなれば必然的に法務官僚…、赤レンガ派の威信は低下し、逆にウミを出し切った格好の現場の検察は世論の脚光を浴び、ひいては現場の検察が赤レンガ派よりも立場が上である…、その上下関係を今まで以上に強固なものとすることができる…、そういうことですね?」
「そういうことだな」
「だが、検察は生憎と言うべきか、そのような動きをした形跡は見られない…、となれば…」
「ああ。その検察幹部はすなわち、現場の検察ということだな…」
「仮に現場の検察の幹部だとして…、それが藤川なら驚きですよね…」
ゲームセンターでの会社員暴行傷害致死事件は1年半前であり、その頃、藤川はまだ最高検の次長検事であった。
「横領に加えて、馬鹿息子が警察幹部や政治家の馬鹿息子たちと一緒になって人一人、死に至らしめた…、となれば現場の検察は致命的なダメージを受けることになりますからね…」
「ああ。だが生憎と言うべきか、その可能性はないな」
押田部長ははっきりとそう断言したので、俺は「どうしてです?」と首をかしげた。
「確かに藤川には妻子がいるが、しかし女の子なんだよ…」
押田部長からそう教えられた俺は白旗を掲げるしかなかった。何しろ被疑者は少年たちだからだ。少女であるはずがないのだ。
「だとしたら…」
「考えられるとしたら…、いや、考えたくもないんだが…」
「部長のその口ぶりから察するに、もしかして…、検事総長とか?」
俺がそう水を向けると押田部長は深刻そうな面持ちで頷いた。
「…警察庁警備局長の小山の馬鹿息子や、あるいはどこぞの有力な政治家の馬鹿息子と共に会社員に対して暴行を加えて死に至らしめたのが、検事総長のやはり馬鹿息子だとしたら、その後の検察…、東京地検刑事部や公判部の不可解な動きも説明がつくというものだ…」
押田部長はそう答えると頭を抱えた。
「ところで…、その出頭して来た少年ですが、どうなりました?」
俺は田林主任検事に尋ねた。
「確か、裁判の結果、懲役6年以上10年以下の求刑に対して、懲役4年以上8年以下の不定期刑が言い渡されました」
「不定期刑…、ああ、未成年の被告人にだけ許される…」
「そうです」
「で、その不定期刑はもう…」
「ええ。確定して、収監されたはずです」
「やっぱり少年刑務所に?」
「当然そうなります。どこの少年刑務所かまでは…」
「ああ。そりゃ、いきなりじゃ分かりませんよね…」
俺は田林主任検事を労わるように言った。それに対して田林主任検事はさすがに仕事熱心らしく、「後で調べます」と確約した。
「何しろ刑が確定したのは半年程前のはずですから…」
「じゃあ当然、まだ塀の中というわけだ…」
俺はそう呟くと、先を続けた。
「いずれにしろ、そのゲームセンターでの会社員暴行傷害致死事件は極めて冤罪の疑いが濃い…、で、証拠の品、それも冤罪の証拠の品はまだ、田島の手元に残っている可能性が高い以上、至急、押収する必要があるんじゃないでしょうかねぇ…、いや、そうなれば検察不祥事にもなりますが…」
俺は押田部長をのぞき込みながら、恐る恐るそう告げた。
「確かに…、吉良君の言う通り…、それも吉良君の推理通りだったとしたら当然、検察不祥事になるだろう。場合によっては引責辞任、いや、それだけじゃ済まないな…、犯人隠避、及び証拠隠滅の容疑で逮捕者が出るかも知れないな…」
「証拠隠滅って…、田島が証拠の品を隠したことですか?」
「そうだ」
「犯人隠避はともかく、証拠隠滅の罪に問われることはないんじゃないですか?少なくとも検察は…、何しろ証拠の品を隠したのは今も言った通り田島ですから…、それも小山に命じられて…、だとしたら証拠隠滅の罪に問われるのは小山と田島の二人だけでは?」
「確かにその二人は当然、証拠隠滅の罪に問うことができるだろう。あわせて犯人隠避の罪にも…」
「ええ」
「だがそれを言うなら検察とて…、刑事部にしろ公判部にしろ…、吉良君の推理が正しいとして…、その証拠の品である防犯カメラのビデオ映像には小山の馬鹿息子のみならず、検事総長の馬鹿息子までが会社員に暴行を働いている正にその現場が捉えられており、刑事部にしろ公判部にしろ、それが分かっていたからこそ、小山と田島の証拠隠滅を黙認した…、となれば刑事部にしろ公判部にしろ、証拠隠滅の事後共犯の罪に問われる可能性が極めて高い…」
「事後共犯ですか…」
「ああ。無論、今も言った通り、犯人隠避の罪にも、言うまでもなく問われるだろう…、まぁ、逮捕するかどうか、あるいは在宅調べでそのまま在宅起訴に持ち込むかどうか、そこまでは今はまだ分からないが、いずれにしろ検察は無傷では済まないだろうな…、だが…、そうだからと言って、無辜の者を獄につないだままで良いわけがない。それは法治国家としての死を意味するだろう…」
押田部長は何のてらいもなくそう断言した。
「押田部長のような方が検察に存在する限り、法治国家としての日本が死ぬことはないでしょう…」
俺は心の底からそう言った。すると押田部長にもそれが通じたのか、珍しく照れくさそうな表情を浮かべた。
「まぁ、それでも検察を庇うわけじゃありませんが、その身代わりとして出頭してきた17歳の少年にしても完全に真っ白ってわけじゃなさそうですし…」
俺は押田部長を庇うようにしてそう言った。
「どういう意味だ?」
押田部長は首をかしげた。
「だってそうでしょ?その17歳の少年は確かに直接には会社員への暴行に加わらなかったそうですが…、ただ他の仲間…、自分をパシリに使っていたであろう小山や検事総長、それに政治家の馬鹿息子たちの暴行を遠巻きに眺めていただけのようですが、それでも消防にも通報しないで会社員が…、それこそ無辜の会社員が暴行される様子を眺めていたのだとすれば、いかに直接には暴行に加わらなかったとしても立派な共犯になるんじゃないですか?まぁ、俺は法律のド素人なんで、違っているかも知れませんが…」
俺がそう言うと、田林主任検事が真っ先に反応した。実際に公判担当検事として一度はその事件に関わったからであろう。
「確かに…、不作為による幇助の罪に問われる可能性があると思います…」
田林主任検事は押田部長に対してそう意見具申に及べば、それに対して押田部長も、
「しかし、立件は難しいぞ?現にその不作為による幇助の罪で起訴したは良いが、無罪判決が出された事例もあるからなぁ…」
そう難色を示したりした。どうやら二人の間で法律談義が交わされるらしいと、そう判断した俺は邪魔にならぬよう黙っていた。
すると押田部長の方が先に、俺を置き去りにしていることに気付いたのか、田林主任検事との法律談義を早々に打ち切ると、
「ともかく、一刻も早く、田島の元からその証拠の品である防犯カメラのビデオ映像を押収する必要があるな…」
そう議論をまとめるように告げた。
「仮に、田島がその証拠の品を隠すとしたら、やはり自宅でしょうか…」
俺は押田部長に尋ねた。
「あるいは2号宅か…、ともあれそうだろうな…」
「ところで田島がどこに住んでいるのかは、検察では把握しているんですか?」
「いや、だが捜査関係事項照会書で問い合わせれば住所を割り出せるだろう…」
「捜査関係事項照会書って、推理小説なんかでも良く耳にしますけど、あれ使えるのは警察だけでは?」
「いや、検察も使える。法務省の事件事務規定第11条により可能だ」
「そうですか…、でもえらい時間がかかりそうですが…」
俺がそう水を向けると、確かにその通りのようで、押田部長は渋い表情となった。
「それよりも…、草壁忍に聞いてみてはどうでしょう…」
俺がそう提案すると押田部長も田林主任検事も興味を惹かれた様子であった。
「草壁忍なら田島の住所を知っていると?」
「まぁ、確証があるわけじゃありませんけど…、でも、田島は女子少年院から出所した直後の草壁忍に対して衣食住の世話を焼いてやったそうですから…、今のアパートだって、あるいは大友商事という働き口にしてもすぐに決まったわけではないでしょうから、その間…」
「田島の自宅に泊まっていたと?」
押田部長からそう問われた俺は、「ええ」と答えた。
「無論、あくまで推測ですが…」
俺はそう付け加えるのも忘れなかった。
だがそれでも押田部長も田林主任もすっかり俺のその提案に乗り気となり、
「私が聞いてみます…」
田林主任検事はそう言うといきなりソファから立ち上がり、草壁忍の取調べが行われている志貴の執務室へと足を運ぶべく、いったんその場を…、この特捜部長室をあとにした。
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