痴漢冤罪に遭遇したニートな俺のダイハードな48時間

ご隠居

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令状請求

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「田島の住所が判明しました…」

 田林主任検事は再び、俺の隣に座り、そして押田部長と向かい合うなりそう切り出した。

「どこだ?」

 押田部長は身を乗り出して尋ねた。

「渋谷区松濤1丁目の11の×のパレス松濤、そこの最上階の4階の402号室だそうです」

「松濤とはまた、いいとこに住んでいやがる…」

 俺は思わずそう呟いた。すると押田部長も「同感だ」と声を出した。

「とても警察官の給料で住めるような場所とは思えないんですけどねぇ…」

 俺がそんな感想をもらすと押田部長はやはり同感であったのだろう、口にこそ出さなかったものの、それでも頷いた。

「ええ。何しろパレス松濤と言えば億ションで有名ですからねぇ…」

 田林主任検事がそう応じたので、俺も押田部長も目を丸くした。

「億ションってことはつまりは分譲ってことですよね?」

 俺は言わずもがなであるのは承知の上で問い返した。

「ええ」

「つまり田島は億ションを買った…、そういうことですよね…」

「まぁ、キャッシュで買ったのか、それとも分割か、そこまでは分かりませんけど…」

 田林主任検事がそう応じた途端、押田部長が立ち上がったので、田林主任検事も俺も目を白黒させた。

「あの、部長?」

 俺は一体何事か、恐る恐る押田部長に呼びかけたのだが、押田部長はそれには答えずにデスクへと向かうと卓上電話に手を伸ばし、受話器を取り上げると、どこかに架け始めた。

 やがて押田部長の会話からどうやら電話の相手が東京国税局の査察部であることが察せられた。それと言うのも電話がつながった途端、押田部長はまず自らの身分を電話の相手に明かした上で、

「査察部の査察管理課長を…、たかはしよしかず査察管理課長をお願いします。ええ、押田剛志からと伝えて下さればそれで…」

 査察部の査察管理課長…、俺は脳内でそう変換してみせ、東京国税局の査察部の査察管理課長という答えを導き出したのであった。

 俺は自分の答えが正解かどうか確かめるべく、隣に座っていた田林主任検事に小声で尋ねた。

「もしかして…、東京国税局の査察部、って意味ですか?」

 俺が小声でそう尋ねると、田林主任検事も「ええ」と首肯した上で、

「高橋良和査察管理課長は部長とも親しいそうで、何度か情報交換を…」

 新設にもそう教えてくれた。ちなみに、たかはしよしかずが、高橋良和だとも田林主任検事は俺に教えてくれた。

 そうして俺たちが小声で話し終えると、タイミング良く、その高橋良和査察管理課長が出た。

「ああ、高橋さん。ご無沙汰しております…、いえ、こちらこそ急にお電話を差し上げて申し訳ありません。実は、高橋さんのお力をまた借りたいと思いまして。ええ…」

 押田部長はそう切り出すと、これまでの経緯を簡単に伝えた上で、警視総監の小山と警護管理係長の田島、この二人の預金口座を洗ってくれるよう頼んだのであった。なるほど、特捜部が調べるよりも、その道のプロとも言うべき査察部が調べた方が早く分かるかも知れず、それで東京国税局査察部、いわゆるマルサに調査を依頼したのかと、俺はようやく合点がいった。

 一方、田林主任検事はと言うと、田島が痴漢冤罪の件で高島平警察署の刑事組織犯罪対策課の連中を買収したために、多額の金を要したであろう、それゆえその金の出所は警視総監の小山ではないか、とのくだりに大いに驚いた様子を見せた。なるほど、そのくだりは田林主任検事が席を外していた間に俺と押田部長との間で話し合ったことなので、田林主任検事が驚くのも当然であった。

 押田部長が再び、ソファに腰かけて俺たちと向かい合うなり、田林主任検事が「田島はそんなことまでしていたんですか?」と勢い込んで尋ねた。そんなことが痴漢冤罪の件で高島平警察署の刑事組織犯罪対策課の連中を買収したのではないか、との俺の推理を指していることは明らかであったので、押田部長は「ああ」と答えた上で、

「吉良君の推理だがな…」

 とも付け加えた。それで俺も、「ですんで、根拠はありませんよ?違っているかも知れない…」と一応、エクスキューズをつけたのであった。

「いや、私も吉良君の推理に賛成ですね…、そうでなければ高島平警察署の刑事組織犯罪対策課が前もって、草壁忍の被害者供述調書を用意していた、いや改竄した理由に説明がつきませんから…」

 田林主任検事も俺の推理に同意してくれた。

「それにしても…、高橋さんでしたっけ?査察管理課長の…、その人にあそこまで喋ってしまって大丈夫なんですか?」

 俺は押田部長がこれまでの経緯…、痴漢冤罪のあらましを高橋査察管理課長に対して語ったことに懸念を示したのであった。

「情報漏れを心配しているんだろ?」

 押田部長は俺の胸のうちをピタリと言い当ててみせ、俺は素直に頷いた。

「それなら心配ご無用だ。マルサの口の固さたるや、特捜以上だ」

 押田部長はそう太鼓判を押したので、俺はそれで押田部長が高橋査察管理課長もといマルサに協力を求めたことに納得することにした。

「それに何より、銀行調査はマルサの専売特許…、つまりは早く調べがつくから、ですね?」

 それこそが俺が納得した理由であった。

「その通りだ。今日中には判明するだろう」

 押田部長はまたしてもそう太鼓判を押した。


【午前11時58分】
 特捜部長室でざる蕎麦の出前を食していた俺たちの元に、大川検事が飛び込んできた。どうやら吉報のようであった。

「一致しました…」

 大川検事は特捜部長室に入室した途端、ソファに座りながら俺たちと…、俺と田林主任検事、さらに合流した志貴と村野事務官と共にざる蕎麦を食していた押田部長に対して一切を省いていきなりそう切り出した。

 だがそれが田島の指掌紋であることはすぐに分かった。

「…まず、田島の二枚の名刺…、草壁忍に対してきった二枚の名刺に付着していたすべての指掌紋から草壁忍の指掌紋を除外した残りの指掌紋を、さらに田島が草壁忍に渡したとする100万の入った封筒…、三つ葉中央銀行の封筒とそして100万、この両者に付着していた指掌紋からやはり草壁忍の指掌紋を除外したすべての指掌紋を照合したところ…」

 大川検事がそう言いかけると、その続きは押田部長が答えた。

「付着していたんだな?その田島の二枚の名刺…、草壁忍の指掌紋を除外した残りの指掌紋と一致する指掌紋が、封筒にも100万にも…」

「その通りです。封筒と100万にはさらに正体不明の指掌紋がありましたが、これは銀行関係者の指掌紋と見て間違いなく、除外して良い…」

 大川検事がそう言うと、押田部長は頷いた。

「名刺に付着していたすべての指掌紋…、そこから草壁忍の指掌紋を除外した残りの指掌紋はまず間違いなく名刺の持ち主である田島のものと考えて良い…、だとするならば、その名刺から採れた指掌紋が100万と、さらに封筒にも付着していたということは、これはもう間違いなく、草壁忍が供述した通り、田島が草壁忍に100万の報酬を支払った何よりの証拠になる…、そういうことですね?」

 俺が尋ねると押田部長は「いかにもその通りだ」と答えた。

「草壁忍のその、田島から痴漢冤罪の報酬として100万を受け取ったとする供述を補強する強力な証拠だ」

 押田部長はさらにそう付け加えた。

 するとそこへ今度は大川検事付の中川事務官も特捜部長室に飛び込んで来た。

 中川事務官はタクシー会社の帝國交通社に派遣されていたのだ。それと言うのも草壁忍の訊問を担当していた志貴は草壁忍から高島平警察署から自宅アパートまでタクシーで帰宅したと、改めてその供述を得た際に、どこのタクシー会社であったか草壁忍に問い質したのであった。

 だが草壁忍は覚えてはおらず、それでも、

「確か…、緑と黄色の縞模様のタクシーだった…」

 との供述を得られ、それは間違いなく帝國交通社のタクシーであり、そこで中川事務官を帝國交通社へと派して、そこで中川事務官は昨晩、高島平警察署から草壁忍の住まう板橋のアパートまで乗せた運転手を尋ねたところ、幸いにしてその運転手を捕まえることができたので、その運転手の協力によりその時のドライブレーコーダの映像を見せてもらったところ、後部座席で草壁忍が田島から何やら厚みのある封筒を受け取る場面がしっかりと記録されており、そこで中川事務官は用意しておいたSDカードにその場面を取り込むことを運転手に許してもらい、そしてその場面をSDカードに取り込むと急ぎ地検に帰還、特捜部長室に飛び込んで来たのであった。

 中川事務官はそのドライブレコーダーの映像、それも田島が何やら厚みのある封筒を草壁忍に渡す場面を取り込んだSDカードを自分のスマホに差し込み、そして場面映像を再生させたのであった。

 俺たちはその、田島が何やら厚みのある封筒を…、それはもう間違いなく100万円の入った封筒に違いないそれを草壁忍に渡す場面映像を食い入るように見つめた。

「これで令状請求できるな…」

 場面映像を見終えるや、押田部長がそう口火を切った。

「逮捕令状、ですよね?」

 俺が確かめるように尋ねると押田部長は頷いた。

「まず、虚偽告訴容疑で田島と草壁忍両名の逮捕状を請求…、草壁忍の供述調書とそれに、その供述を裏付けるこれらの証拠があれば疎明資料としては十分すぎるほどだ」

 押田部長はそうも付け加えた。

「それから渋谷区松濤にある田島の自宅の捜索令状と、それに警視総監公舎の捜索令状も、ですよね?」

 俺がそう尋ねると押田部長は難しそうな顔付きとなった。

「田島の自宅の捜索令状は簡単に取れるだろうが…」

「警視総監公舎の捜索令状は難しそうですか?」

「ああ。何しろ、警視総監公舎での痴漢冤罪の打ち合わせは草壁忍の供述通りだとすると一回きり、これでタクシーを割り出せれば…、池袋の喫茶店で久しぶりに田島と再会を果たした草壁忍はタクシーを使ってその池袋の喫茶店から警視総監公舎のある隼町まで向かったと供述しているようだが、肝心要のタクシー会社が割り出せないようでは、警視総監公舎の捜索令状は…、裁判所が発付してくれるかどうか、ちと厳しいところがあるな…」

 生憎、池袋の喫茶店から隼町まで向かうのに使ったタクシーについては草壁忍は覚えていなかったのだ。無論、徹底的なローラー作戦をかければ草壁忍と田島が使ったそのタクシーを割り出すのも可能であろうが、それにはかなりの人手と時間がかかり、特捜部だけでは無理だろう。

「だがここで、刑事部の手を借りたりすれば、刑事部から…、うちの刑事部から警視庁本部へと…」

「情報が筒抜けになる、と?」

 俺がそう尋ねると、押田部長は頷いた。

「とりあえず請求するだけでも…」

 俺がそうすすめると押田部長も、「無論、そうするつもりだ」と断言した。

「それに被害者供述調書を改竄した容疑で高島平警察署の刑事組織犯罪対策課の…、被害者供述調書を作成したのは誰だったっけ?」

 俺は志貴に尋ねた。すると志貴は即座に、「青木文夫だ」と答えてくれた。

「あおき、ふみお…、普通の青木に、文章の文、夫婦の夫で文夫かな?」

 俺がそう当たりをつけると、それがビンゴであったらしく、志貴は頷くと、

「その被害者供述調書の末尾に、調書を作成した司法警察職員として青木文夫の名があった」

 そうも付け加えた。志貴が昨日、高島平警察署の小会議室において被害者供述調書の要点を書き写したので覚えていたのであろう。

「ならその青木文夫…、階級は…」

「巡査部長だ」

「そう、青木巡査部長の逮捕状も取れるんじゃないですかね…、この場合は公文書偽造になるのかしら…」

 俺は首をかしげると、「そうだ」と志貴が断言した。

「勿論、青木巡査部長が勝手に、それも自分の判断でやったとも思えない…」

「ああ。上の指示で動いたんだろう。もっともそれで公文書偽造の罪がなくなるわけではないがな…」

 志貴は冷然とそう言い切った。

「ともあれ、青木を逮捕したら…、って逮捕なさいます?」

 俺は押田部長に尋ねた。

「ああ。ここは是が非でも青木の身柄を拘束して、誰に命じられたか質すべきだろうな。任意捜査では限界があるからな…」

「任意で捜査への協力を求めようものなら、証拠隠滅をはかられるかも知れないから?」

 俺が尋ねると、「そういうことだ」と押田部長は答えた。

「ところで藤川は…、藤川も横領で逮捕するんですよね?」

 俺は思い出したように、そして藤川の逮捕を当然のこととして尋ねた。だがそれに対して押田部長の返答は意外なものであった。

「勿論そうだが、しかし、今ではない」

「と言うと?」

 俺は首をかしげた。

「浅井事務官が保釈されるまで、藤川には手をつけない」

「それは…、浅井さんがまだ警察に囚われの身である今、藤川にまで手をつけたら、浅井さんの身が危ないから、ってことですか?」

 俺は恐る恐る尋ねた。特捜部が東京高検検事長の藤川を逮捕するということは、それはすなわち、警察と検察との間でのカジノ利権をめぐる汚い取引をあぶり出そうとする意思を警察や検察…、刑事部に発してしまう恐れがあり、そうなれば藤川の横領を告発した浅井事務官の身が危険にさらされることになる。何しろ浅井事務官はまだ警察の掌中にあるからだ。

「そういうことだ。だからまずは浅井事務官を救出することが先決だ」

 押田部長は保釈、あるいは釈放と言わずに救出という言葉をあえて使ったところに今回の逮捕劇がいかにでっち上げの不当逮捕であるか、そんな憤りがその言葉から見て取れた。
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