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SKT4、そして元警察庁長官にしてカジノ管理委員会委員長の国見孝光らの6億にも上る不正蓄財をマルサが見逃した理由
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「問題は…、国見たちがどうやってそんな6億もの金を溜め込んだか、ですよね…」
俺がそう呟くと、「それなら一つ、気付いたことがある」との押田部長の声が被さった。
「と言うと?」
高橋査察管理課長が身を乗り出して尋ねた。
「国見たち…、元警察庁長官の国見、前警察庁長官の城崎、前警視総監の河井、そして前警察庁刑事局長の垣内は警察内では、いや検察内でもそうかも知れんが、SKT4などと渾名されていたんだよ…」
「エスケーティー4、ですか?」
俺が聞き返すと押田部長はうなずいた。
「何だかまるでSKDのような響きですが…」
俺がそう茶化すと押田部長は苦笑した。
「そこはAKBと茶化すべきところだろう…、SKDだなんて、君の世代では知らんだろう…」
「ええ。リアルタイムでは勿論、知りませんけど、松竹歌劇団ということぐらいは知識として知ってますよ」
「そうかね…」
「それに何より…、俺はその世代ってやつが大嫌いでしてね…」
「さしずめ…、世代で括られるのが嫌ってところかね?」
「その通りです。俺はあくまで個人で生きているだけで、世代で生きているわけじゃない…」
俺は以前に読んだ、直木賞受賞作品でもあるハードボイルド小説の一節を借用してみせたのだが、生憎、押田部長にはこのセンスは通じなかったものとみえ、怪訝な表情を浮かべただけであった。やはり親のスネをかじって生きているニートには似つかわしくないセリフであったようだ。
「ともあれ、そのSKDならぬSKT4とは一体、何ですか?国見たちを指しているとのことですが…」
俺は気を取り直して、仕切りなおしとばかり、押田部長に尋ねた。
「Sは静岡、Kは頭文字、Tは東大だ」
「4人は静岡出身だと?」
「そうだ」
「それで頭文字というのは、くにみ、きざき、かわい、かきみ、この苗字の頭文字…、イニシャルがKと…」
「そうだ」
「そして4人全員、T大…、東大出身…、それでSKT4というわけですか…」
「その通りだ。まぁ、君が口にした通り、SKDをもじったものだが…」
「それで…、この4人はSKT4とくくられるぐらいですから、親しいわけですか…」
「その通りだ。だからこそ、国見はカジノ管理委員会委員長に就任するや、警察不祥事で引責辞任した…、警察を追われることになった城崎、河井、垣見の3人をカジノ管理委員会の委員に声をかけたんだろう…」
「それじゃあ…、この仮に警察を追われることになったのがこの3人ではなく別の3人だったとしたら、国見は声をかけなかったと?」
「恐らくはな…、もっとも警察の意向として…、カジノ利権を警察の掌中に収めるという警察全体の意向として3人を…、城崎たち以外の3人をカジノ管理委員会の委員に送りこみたいと、そう言われれば国見としても抗することはできなかっただろうがな…」
「まぁ、組織というものはそういうものでしょうが…、ともあれ国見としては親しい城崎たち3人をカジノ管理委員会委員にしてやりたいと思い、その一方で警察側としても警察幹部の不祥事から警察を追われることとなった城崎たち3人をカジノ管理委員会委員に送り込もうと、つまりは国見と警察側…、警察組織との意見が一致したというわけですか…」
「そういうことだろうな…、で、この国見たちだが、もう一つ、共通点があるんだよ」
「共通点?何です?それは…」
「全員、大阪府警本部長の経験者なんだよ…」
「大阪府警のトップだったということですか…」
「そうだ」
「で、それが何だと言うんです?」
「大阪府警本部長のポストは極めて美味しいポストで知られているんだよ」
「美味しいポスト…、何だかまるで、付け届けでも期待できるようなそんな響きですね…、美味しいポストだなんて…」
俺は冗談めかしてそう言ったのだが、驚いたことにそれがビンゴであった。
「その通りだ」
押田部長がその俺の冗談めかして言った言葉をあっさりと認めたので、これには俺の方が驚かされた。
「えっ…、ってことは…、えっ…、付け届けが…、届くんですか?」
俺は半信半疑の思いで聞き返した。到底、信じ難い話であるからだ。
「ああ。その通りだ。何しろ大阪と言えば商都、それに加えて暴力団がちょうりょうをほしいままに…、要するにはびこっている都市としても知られている…」
「まさか…、その大阪府警のトップともなると、大企業と暴力団、双方からの付け届けが期待できるとか?」
「そういうことだ。これはあくまで噂だが、大阪府警本部長は着任祝いに1億、そして餞別に1億…」
「計2億を懐にすることができるってわけですか?大阪府警本部長を務めるだけで…」
「そういうことだ。だから大阪府警本部長経験者は皆、暮らし向きが派手になる傾向がある。その好例がカジノ管理委員会委員長に就任した国見だ」
「国見が…、それは一体、どういうわけで?」
「国見は長官だった頃に狙撃されただろう?」
「あっ…、ええ、確か、カルト宗教団体が関わっていたんじゃないか、なんて声も聞かれましたけど…」
「うむ。まぁ、この際、狙撃犯についての詮索は脇に置くとしてだ、国見は自宅マンション前で狙撃されただろ?」
「ええ。何とかポートとかいうマンションでしたっけ?」
「そう、荒川区南千住にあるアクロシティDポートだ」
「それで、そのマンションが何か…、大体、想像はつきますけど…、大方、とてもお高いマンションってところですか?」
「その通りだ。億ションとまでは言わないものの、それでも8千万する」
「8千万ですか…」
「そうだ」
「つまり国見は8千万もするマンションに入居していたと…」
「しかもキャッシュで購入したものだ」
「それは…、やはり大阪府警本部長時代に溜め込んだ2億のうちから支出したと…」
「そういうことだろうな…」
「ですが…、これも繰り返しになりますが、8千万ものマンションをキャッシュで購入したとなると、不動産取得税や、あるいは印紙税などの税金に加えて、司法書士に登記を頼むことになりますから、その司法書士への報酬なども必要になるわけで…」
「それら諸々の経費については警察の裏金で支払ったのではないかと、専らの噂だ…」
「また裏金ですか…」
「ああ。ちなみに固定資産税についても裏金で支出した疑いもある…、まぁ、あくまで噂のレベルだが、特捜部長としての俺の勘を言わせてもらうなら、大いに信憑性があると思うな」
「でしょうね…、それでこのSKT4とも称される国見たちがオーストラリア・ニュージーランド銀行東京支店に共有名義の口座を開設し、6億もの預金をしたと…、そういう事情が…、実入りの良い大阪府警本部長を全員、経験しているとなれば、一気に6億も預け入れたことの説明ができるわけだ…」
俺がそう呟くと、「そうだ」と押田部長が答えれば、目の前に座る高橋査察管理課長もうなずいた。
「それで…、これも繰り返しになりますけど…、やはり一人頭、1億5千万を出し合って6億を預け入れた、ってことですかね…」
「どうだろうな…、この4人の中でもとりわけ国見の金遣いは荒かったというこれも専らの噂だから、国見は1億で、残りの5億については3人で…、城崎、河井、垣内の3人で適当に相談してそれぞれの出資額を決め、5億を集めたのかも知れんが…、ともあれ6億を集めて預け入れたんだろう…」
細かな点については押田部長にも分かりかねると見える。それももっともであり、俺は先を続けることにした。
「でもこうしてマルサが嗅ぎ付けた以上…、国見たちの6億もの預金、いや、不正蓄財を嗅ぎ付けた以上、国見たちもこれでジエンドってやつでしょう…、刑事訴追はマルサの領分ではないにしても、徹底的に搾り取る、いや、課税することができるわけですから…」
俺の言い間違いにマルサの高橋査察管理課長はさすがに苦笑したものだが、すぐに真顔に戻ると頭を振った。
「それがそうもいかないんですよ…」
「えっ?」
「我々、査察部は先週、この6億の口座に気付きました…」
「証券取引等監視委員会の某委員、民間出身の委員からの通報で把握したんでしたよね?」
「ええ。そこで直ちに査察部では調査に着手しようとしたのですが…」
「もしかして…、上からストップがかかったとか?」
俺が勘を働かせると、高橋査察管理課長はうなずいた。
「上っていうと…、国税庁ですか?」
「それに財務省からも強力な圧力がかかりまして…」
そう告げる高橋査察管理課長は忸怩たる様子を隠そうともしなかった。
「それにしてもどうして…、やはり警察を敵に回したくない、からですか?」
「いえ、そういうことではありません…、無論、できれば敵には回したくありませんが、しかし、現実に元警察幹部による不正蓄財を目の前にして、警察を敵に回したくないとの理由から、それを見過ごすことはあり得ません…」
「でも現実にマルサは見逃したわけですよね?」
俺が容赦なくそう切り込むと、高橋査察管理課長は苦虫を噛み潰したような表情となった。
「おい、吉良君。あまり高橋さんをいじめるなよ…」
押田部長からそう注意された俺は素直に口を閉ざした。
「いえ、吉良さんの仰る通り、結果として我々は見逃した…、いや、尻尾を巻いて逃げ出したわけですよ…」
高橋査察管理課長にそんな殊勝な態度を取られては俺としても何だか、急に罪悪感がわいてきた。
「いや…、何かきっと事情があったんでしょう…」
俺が取り成すようにそう言うと、高橋査察管理課長は救われたような表情となり、「ええ」とうなずいた。
「それでその事情とやらは…、高橋課長は把握していらっしゃるんで?」
「ええ。承知しております…、と言うよりは局長を…、調査中止を指示した東京国税局長を査察部長と共に締め上げて聞き出しましたから…」
高橋査察管理課長は実に恥じている様子に見えた。よほどに恥ずかしい内容なのであろう。
「それで…、局長は何と…」
「やはりカジノです」
「カジノ?」
「ええ。IR実施法案…、要はカジノ法案ですが、それによるとカジノの収益に対しては国税と地方税、そして納付金が課されることになりました…」
「納付金?」
「ええ。カジノの収益の粗利の30%を徴収するというものです…」
「粗利って…、純利ならともかく、粗利で30%ってそれはいくらなんでも法外じゃ…」
俺は別にカジノ推進論者ではないが、それにしても粗利の30%もそれこそ上前をはねられては事業として成り立たないのではないか。
「勿論、そういう声もありまして、そこで内閣官房では秘かに…、いや、この際、はっきり申し上げますが、官房長官の草加は自民党幹事長の二階堂とも相談の上、納付金は粗利ではなく純利に対して、それも20%におさめることで話がまとまったそうです…」
「まぁ、純利の20%なら穏当でしょうねぇ…」
「加えて…、これが一番大事なのですが、国税に関しては純利の30%を徴収することになりそうなんです…」
「やはり官房長官の草加と幹事長の二階堂との相談の上で?」
「それに財務事務次官と主計・主税の各局長、それに国税庁長官も交えて…」
「何だか…、含みがありそうな予感ですが…、それにしても納付金と国税だけで純利の半分を取られてしまっては、その上、地方税まで徴収されては、カジノに参入しようだなんてそんな奇特な事業者が現れるんですかねぇ…」
俺がそう言うと、「正にそこですよ」との高橋査察管理課長からのツッコミが入った。
「と言うと?」
「結論から申し上げると、地方税は徴収しないということです」
「えっ…、それじゃあカジノの収益…、純利に対しては納付金と国税の二本立てってことですか?」
「そういうことです」
「でもそれと、国見たちの6億もの不正蓄財をマルサが見逃すことと、どう関係があると?」
「取引ですよ」
「取引?」
「ええ。証券取引等監視委員会委員長…、元東京高検検事長にして、国見たちの不正蓄財を把握しながら、地検にもマルサにも通報せずにもみ消そうとしたその委員長が官邸に駆け込んだそうです…」
「もしかして…、委員長たる俺の判断に対して民間出身の委員の一人が異論を唱えており、もしかしたら反旗を翻すかも知れない…、地検やマルサに通報するかも知れない、と?」
「そういうことです。官邸では…、官房長官の草加は地検の方は心配しなかったそうで…、何しろ警察と地検との間で取引が成立しておりましたから…、検察が握っていたカジノ利権を警察に引き渡し、一方、警察では捜査二課に横領容疑で告発されていた東京高検検事長の藤川の件を…、藤川の横領を握り潰す…、そんな取引が成立しており、しかも警察では藤川の横領の証拠はしっかりと握り続けたままであり、そこで仮に国見たちの不正蓄財が地検に通報されたところで、地検ならばどうにでもなる…」
「地検の動きなら封じられると…、草加にはその自信があったと…」
「そういうことです」
「だが問題はマルサだと…」
「ええ。マルサはそれまで警察とも検察とも汚い取引をしておりませんでしたから、それゆえ国見たちの不正蓄財の件をマルサが…、我々が把握したとなれば厄介だと、草加はそう思ったのでしょう…」
俺はようやく話が見えてきた。
「なぁる…、そこで草加はマルサの動きを封じるべく、マルサの親玉である財務省に餌を…、と言ったら言葉は悪いかも知れませんけど…」
「いえ、実際に餌ですよ」
高橋査察管理課長は吐き捨てた。
「それじゃあ餌ってことで…、草加がマルサの動きを封じるべく、マルサの親玉である財務省に投げ与えた餌こそがその、カジノ収益にかかる税金…、もっと言えば国税と納付金の二本立てとすることで、地方税は徴収しない…、国税は財務省、地方税は総務省、だからカジノの収益にかける税金についてはこれすべて財務省で取り仕切ると、そういうことですね?」
「ええ、正しく…。いや、納付金にしても結局は国税局、あるいは税務署が徴収…、取り立てることになるでしょうから、実際には国税で一本化されたも同然です…」
「つまりカジノ収益、そいつにかかる税金はすべて財務省で差配できると…、草加から財務省にそう持ちかけられたと?」
「それに幹事長の二階堂からも…」
「ああ。草加は二階堂とも協議の上、決めたんでしたね…」
「ええ。勿論まだ、極秘の段階ですが…」
「そうでしょうねぇ…、こんなことが表沙汰になれば総務省が黙っちゃいないでしょう…」
「ええ。ですが極秘の段階だとしても、官房長官の草加と幹事長の二階堂からそう持ちかけられたとあらば、それはもう、現実のものとみなします…」
「確かに…、今をときめく官房長官と幹事長からそんなことを言われた日には実際、その通りになると舞い上がるものでしょうねぇ…」
「ええ。だが、草加は財務省サイドにある条件を持ち出した…」
「それこそが国見たちの不正蓄財、そいつを見逃してくれ、と?」
「そういうことです。財務省としても新たな財源が確保できる…、その上、総務省も出し抜けるとあらば…」
「マネーゲームとパワーゲーム、その両方で何かと職掌がバッティングしがちな総務省に勝てるとあらば、財務省も国見たちの不正蓄財の件は少々の不正に過ぎないと、目をつぶることにしたわけですね?」
「そういうことです。それに何より、今の国税庁長官からして草加の犬、いや、番犬様のようなものですから…」
「ああ。佐山でしたっけ?」
「ええ」
「その草加の番犬様である佐山は財務事務次官や主計・主税の各局長と共に草加からその意向が…、国見たちの不正蓄財には手を触れるな、その代わりにカジノの上がり、そいつにかかる税金はすべて国税で一本化してやるからと、そう伝えられ、佐山にしてもご主人様からの命令、それに加えて餌を投げ与えられたとなると、嬉々としてこれに応じたと、そういうわけですか…」
「その通りです。それどころかさすがに躊躇する…、その点では良識を見せたと言えなくもないと思いますが、事務次官や主計・主税の各局長を説得する始末でした…」
「正に番犬様の面目躍如といったところですか…」
「ええ」
高橋査察管理課長は実に忌々しげな表情でうなずいた。
俺がそう呟くと、「それなら一つ、気付いたことがある」との押田部長の声が被さった。
「と言うと?」
高橋査察管理課長が身を乗り出して尋ねた。
「国見たち…、元警察庁長官の国見、前警察庁長官の城崎、前警視総監の河井、そして前警察庁刑事局長の垣内は警察内では、いや検察内でもそうかも知れんが、SKT4などと渾名されていたんだよ…」
「エスケーティー4、ですか?」
俺が聞き返すと押田部長はうなずいた。
「何だかまるでSKDのような響きですが…」
俺がそう茶化すと押田部長は苦笑した。
「そこはAKBと茶化すべきところだろう…、SKDだなんて、君の世代では知らんだろう…」
「ええ。リアルタイムでは勿論、知りませんけど、松竹歌劇団ということぐらいは知識として知ってますよ」
「そうかね…」
「それに何より…、俺はその世代ってやつが大嫌いでしてね…」
「さしずめ…、世代で括られるのが嫌ってところかね?」
「その通りです。俺はあくまで個人で生きているだけで、世代で生きているわけじゃない…」
俺は以前に読んだ、直木賞受賞作品でもあるハードボイルド小説の一節を借用してみせたのだが、生憎、押田部長にはこのセンスは通じなかったものとみえ、怪訝な表情を浮かべただけであった。やはり親のスネをかじって生きているニートには似つかわしくないセリフであったようだ。
「ともあれ、そのSKDならぬSKT4とは一体、何ですか?国見たちを指しているとのことですが…」
俺は気を取り直して、仕切りなおしとばかり、押田部長に尋ねた。
「Sは静岡、Kは頭文字、Tは東大だ」
「4人は静岡出身だと?」
「そうだ」
「それで頭文字というのは、くにみ、きざき、かわい、かきみ、この苗字の頭文字…、イニシャルがKと…」
「そうだ」
「そして4人全員、T大…、東大出身…、それでSKT4というわけですか…」
「その通りだ。まぁ、君が口にした通り、SKDをもじったものだが…」
「それで…、この4人はSKT4とくくられるぐらいですから、親しいわけですか…」
「その通りだ。だからこそ、国見はカジノ管理委員会委員長に就任するや、警察不祥事で引責辞任した…、警察を追われることになった城崎、河井、垣見の3人をカジノ管理委員会の委員に声をかけたんだろう…」
「それじゃあ…、この仮に警察を追われることになったのがこの3人ではなく別の3人だったとしたら、国見は声をかけなかったと?」
「恐らくはな…、もっとも警察の意向として…、カジノ利権を警察の掌中に収めるという警察全体の意向として3人を…、城崎たち以外の3人をカジノ管理委員会の委員に送りこみたいと、そう言われれば国見としても抗することはできなかっただろうがな…」
「まぁ、組織というものはそういうものでしょうが…、ともあれ国見としては親しい城崎たち3人をカジノ管理委員会委員にしてやりたいと思い、その一方で警察側としても警察幹部の不祥事から警察を追われることとなった城崎たち3人をカジノ管理委員会委員に送り込もうと、つまりは国見と警察側…、警察組織との意見が一致したというわけですか…」
「そういうことだろうな…、で、この国見たちだが、もう一つ、共通点があるんだよ」
「共通点?何です?それは…」
「全員、大阪府警本部長の経験者なんだよ…」
「大阪府警のトップだったということですか…」
「そうだ」
「で、それが何だと言うんです?」
「大阪府警本部長のポストは極めて美味しいポストで知られているんだよ」
「美味しいポスト…、何だかまるで、付け届けでも期待できるようなそんな響きですね…、美味しいポストだなんて…」
俺は冗談めかしてそう言ったのだが、驚いたことにそれがビンゴであった。
「その通りだ」
押田部長がその俺の冗談めかして言った言葉をあっさりと認めたので、これには俺の方が驚かされた。
「えっ…、ってことは…、えっ…、付け届けが…、届くんですか?」
俺は半信半疑の思いで聞き返した。到底、信じ難い話であるからだ。
「ああ。その通りだ。何しろ大阪と言えば商都、それに加えて暴力団がちょうりょうをほしいままに…、要するにはびこっている都市としても知られている…」
「まさか…、その大阪府警のトップともなると、大企業と暴力団、双方からの付け届けが期待できるとか?」
「そういうことだ。これはあくまで噂だが、大阪府警本部長は着任祝いに1億、そして餞別に1億…」
「計2億を懐にすることができるってわけですか?大阪府警本部長を務めるだけで…」
「そういうことだ。だから大阪府警本部長経験者は皆、暮らし向きが派手になる傾向がある。その好例がカジノ管理委員会委員長に就任した国見だ」
「国見が…、それは一体、どういうわけで?」
「国見は長官だった頃に狙撃されただろう?」
「あっ…、ええ、確か、カルト宗教団体が関わっていたんじゃないか、なんて声も聞かれましたけど…」
「うむ。まぁ、この際、狙撃犯についての詮索は脇に置くとしてだ、国見は自宅マンション前で狙撃されただろ?」
「ええ。何とかポートとかいうマンションでしたっけ?」
「そう、荒川区南千住にあるアクロシティDポートだ」
「それで、そのマンションが何か…、大体、想像はつきますけど…、大方、とてもお高いマンションってところですか?」
「その通りだ。億ションとまでは言わないものの、それでも8千万する」
「8千万ですか…」
「そうだ」
「つまり国見は8千万もするマンションに入居していたと…」
「しかもキャッシュで購入したものだ」
「それは…、やはり大阪府警本部長時代に溜め込んだ2億のうちから支出したと…」
「そういうことだろうな…」
「ですが…、これも繰り返しになりますが、8千万ものマンションをキャッシュで購入したとなると、不動産取得税や、あるいは印紙税などの税金に加えて、司法書士に登記を頼むことになりますから、その司法書士への報酬なども必要になるわけで…」
「それら諸々の経費については警察の裏金で支払ったのではないかと、専らの噂だ…」
「また裏金ですか…」
「ああ。ちなみに固定資産税についても裏金で支出した疑いもある…、まぁ、あくまで噂のレベルだが、特捜部長としての俺の勘を言わせてもらうなら、大いに信憑性があると思うな」
「でしょうね…、それでこのSKT4とも称される国見たちがオーストラリア・ニュージーランド銀行東京支店に共有名義の口座を開設し、6億もの預金をしたと…、そういう事情が…、実入りの良い大阪府警本部長を全員、経験しているとなれば、一気に6億も預け入れたことの説明ができるわけだ…」
俺がそう呟くと、「そうだ」と押田部長が答えれば、目の前に座る高橋査察管理課長もうなずいた。
「それで…、これも繰り返しになりますけど…、やはり一人頭、1億5千万を出し合って6億を預け入れた、ってことですかね…」
「どうだろうな…、この4人の中でもとりわけ国見の金遣いは荒かったというこれも専らの噂だから、国見は1億で、残りの5億については3人で…、城崎、河井、垣内の3人で適当に相談してそれぞれの出資額を決め、5億を集めたのかも知れんが…、ともあれ6億を集めて預け入れたんだろう…」
細かな点については押田部長にも分かりかねると見える。それももっともであり、俺は先を続けることにした。
「でもこうしてマルサが嗅ぎ付けた以上…、国見たちの6億もの預金、いや、不正蓄財を嗅ぎ付けた以上、国見たちもこれでジエンドってやつでしょう…、刑事訴追はマルサの領分ではないにしても、徹底的に搾り取る、いや、課税することができるわけですから…」
俺の言い間違いにマルサの高橋査察管理課長はさすがに苦笑したものだが、すぐに真顔に戻ると頭を振った。
「それがそうもいかないんですよ…」
「えっ?」
「我々、査察部は先週、この6億の口座に気付きました…」
「証券取引等監視委員会の某委員、民間出身の委員からの通報で把握したんでしたよね?」
「ええ。そこで直ちに査察部では調査に着手しようとしたのですが…」
「もしかして…、上からストップがかかったとか?」
俺が勘を働かせると、高橋査察管理課長はうなずいた。
「上っていうと…、国税庁ですか?」
「それに財務省からも強力な圧力がかかりまして…」
そう告げる高橋査察管理課長は忸怩たる様子を隠そうともしなかった。
「それにしてもどうして…、やはり警察を敵に回したくない、からですか?」
「いえ、そういうことではありません…、無論、できれば敵には回したくありませんが、しかし、現実に元警察幹部による不正蓄財を目の前にして、警察を敵に回したくないとの理由から、それを見過ごすことはあり得ません…」
「でも現実にマルサは見逃したわけですよね?」
俺が容赦なくそう切り込むと、高橋査察管理課長は苦虫を噛み潰したような表情となった。
「おい、吉良君。あまり高橋さんをいじめるなよ…」
押田部長からそう注意された俺は素直に口を閉ざした。
「いえ、吉良さんの仰る通り、結果として我々は見逃した…、いや、尻尾を巻いて逃げ出したわけですよ…」
高橋査察管理課長にそんな殊勝な態度を取られては俺としても何だか、急に罪悪感がわいてきた。
「いや…、何かきっと事情があったんでしょう…」
俺が取り成すようにそう言うと、高橋査察管理課長は救われたような表情となり、「ええ」とうなずいた。
「それでその事情とやらは…、高橋課長は把握していらっしゃるんで?」
「ええ。承知しております…、と言うよりは局長を…、調査中止を指示した東京国税局長を査察部長と共に締め上げて聞き出しましたから…」
高橋査察管理課長は実に恥じている様子に見えた。よほどに恥ずかしい内容なのであろう。
「それで…、局長は何と…」
「やはりカジノです」
「カジノ?」
「ええ。IR実施法案…、要はカジノ法案ですが、それによるとカジノの収益に対しては国税と地方税、そして納付金が課されることになりました…」
「納付金?」
「ええ。カジノの収益の粗利の30%を徴収するというものです…」
「粗利って…、純利ならともかく、粗利で30%ってそれはいくらなんでも法外じゃ…」
俺は別にカジノ推進論者ではないが、それにしても粗利の30%もそれこそ上前をはねられては事業として成り立たないのではないか。
「勿論、そういう声もありまして、そこで内閣官房では秘かに…、いや、この際、はっきり申し上げますが、官房長官の草加は自民党幹事長の二階堂とも相談の上、納付金は粗利ではなく純利に対して、それも20%におさめることで話がまとまったそうです…」
「まぁ、純利の20%なら穏当でしょうねぇ…」
「加えて…、これが一番大事なのですが、国税に関しては純利の30%を徴収することになりそうなんです…」
「やはり官房長官の草加と幹事長の二階堂との相談の上で?」
「それに財務事務次官と主計・主税の各局長、それに国税庁長官も交えて…」
「何だか…、含みがありそうな予感ですが…、それにしても納付金と国税だけで純利の半分を取られてしまっては、その上、地方税まで徴収されては、カジノに参入しようだなんてそんな奇特な事業者が現れるんですかねぇ…」
俺がそう言うと、「正にそこですよ」との高橋査察管理課長からのツッコミが入った。
「と言うと?」
「結論から申し上げると、地方税は徴収しないということです」
「えっ…、それじゃあカジノの収益…、純利に対しては納付金と国税の二本立てってことですか?」
「そういうことです」
「でもそれと、国見たちの6億もの不正蓄財をマルサが見逃すことと、どう関係があると?」
「取引ですよ」
「取引?」
「ええ。証券取引等監視委員会委員長…、元東京高検検事長にして、国見たちの不正蓄財を把握しながら、地検にもマルサにも通報せずにもみ消そうとしたその委員長が官邸に駆け込んだそうです…」
「もしかして…、委員長たる俺の判断に対して民間出身の委員の一人が異論を唱えており、もしかしたら反旗を翻すかも知れない…、地検やマルサに通報するかも知れない、と?」
「そういうことです。官邸では…、官房長官の草加は地検の方は心配しなかったそうで…、何しろ警察と地検との間で取引が成立しておりましたから…、検察が握っていたカジノ利権を警察に引き渡し、一方、警察では捜査二課に横領容疑で告発されていた東京高検検事長の藤川の件を…、藤川の横領を握り潰す…、そんな取引が成立しており、しかも警察では藤川の横領の証拠はしっかりと握り続けたままであり、そこで仮に国見たちの不正蓄財が地検に通報されたところで、地検ならばどうにでもなる…」
「地検の動きなら封じられると…、草加にはその自信があったと…」
「そういうことです」
「だが問題はマルサだと…」
「ええ。マルサはそれまで警察とも検察とも汚い取引をしておりませんでしたから、それゆえ国見たちの不正蓄財の件をマルサが…、我々が把握したとなれば厄介だと、草加はそう思ったのでしょう…」
俺はようやく話が見えてきた。
「なぁる…、そこで草加はマルサの動きを封じるべく、マルサの親玉である財務省に餌を…、と言ったら言葉は悪いかも知れませんけど…」
「いえ、実際に餌ですよ」
高橋査察管理課長は吐き捨てた。
「それじゃあ餌ってことで…、草加がマルサの動きを封じるべく、マルサの親玉である財務省に投げ与えた餌こそがその、カジノ収益にかかる税金…、もっと言えば国税と納付金の二本立てとすることで、地方税は徴収しない…、国税は財務省、地方税は総務省、だからカジノの収益にかける税金についてはこれすべて財務省で取り仕切ると、そういうことですね?」
「ええ、正しく…。いや、納付金にしても結局は国税局、あるいは税務署が徴収…、取り立てることになるでしょうから、実際には国税で一本化されたも同然です…」
「つまりカジノ収益、そいつにかかる税金はすべて財務省で差配できると…、草加から財務省にそう持ちかけられたと?」
「それに幹事長の二階堂からも…」
「ああ。草加は二階堂とも協議の上、決めたんでしたね…」
「ええ。勿論まだ、極秘の段階ですが…」
「そうでしょうねぇ…、こんなことが表沙汰になれば総務省が黙っちゃいないでしょう…」
「ええ。ですが極秘の段階だとしても、官房長官の草加と幹事長の二階堂からそう持ちかけられたとあらば、それはもう、現実のものとみなします…」
「確かに…、今をときめく官房長官と幹事長からそんなことを言われた日には実際、その通りになると舞い上がるものでしょうねぇ…」
「ええ。だが、草加は財務省サイドにある条件を持ち出した…」
「それこそが国見たちの不正蓄財、そいつを見逃してくれ、と?」
「そういうことです。財務省としても新たな財源が確保できる…、その上、総務省も出し抜けるとあらば…」
「マネーゲームとパワーゲーム、その両方で何かと職掌がバッティングしがちな総務省に勝てるとあらば、財務省も国見たちの不正蓄財の件は少々の不正に過ぎないと、目をつぶることにしたわけですね?」
「そういうことです。それに何より、今の国税庁長官からして草加の犬、いや、番犬様のようなものですから…」
「ああ。佐山でしたっけ?」
「ええ」
「その草加の番犬様である佐山は財務事務次官や主計・主税の各局長と共に草加からその意向が…、国見たちの不正蓄財には手を触れるな、その代わりにカジノの上がり、そいつにかかる税金はすべて国税で一本化してやるからと、そう伝えられ、佐山にしてもご主人様からの命令、それに加えて餌を投げ与えられたとなると、嬉々としてこれに応じたと、そういうわけですか…」
「その通りです。それどころかさすがに躊躇する…、その点では良識を見せたと言えなくもないと思いますが、事務次官や主計・主税の各局長を説得する始末でした…」
「正に番犬様の面目躍如といったところですか…」
「ええ」
高橋査察管理課長は実に忌々しげな表情でうなずいた。
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