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3章 希う大学生編

初日から詰み?

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 朔が、僕に色々と慣れてほしいと言ったら、何かを閃いた啓吾が声をあげた。

「それ! ポリセで慣れさせりゃいーじゃん。ちょっとずつ進めんだったちょうど良くね?」

「今まで何回そういうのやったと思ってんの? ゆいぴの初心うぶさナメんなよ」

 りっくんの言う通りだ。これまで、あらゆる方法で慣れようとした。結果、皆の良すぎる顔にすら未だ慣れていない。
 触れる指や声、えっちな視線にすら反応してしまう。僕の身体が、後戻りできないくらいおかしくなっているのは明白な事実だ。
 それを脱するなんて、今更期待していない。むしろこのままで、いや、堕ちるところまで堕とされてしまいたいとすら思っている。
 こんなハレンチな事、恥ずかしくて皆には絶対言えないけど。



 さぁ、いよいよチャレンジ当日。僕たちから正反対にあるような挑戦に手を出す。
 皆、これの為に5日間バイトも仕事も入れていないらしい。本気だな。

 学校から帰ると、いつもより早く夕飯やお風呂を済ませ、僕はなんの準備もしないままベッドへ落ち着く。誰からするのか、どんな風にするのか、何も知らされないまま布団に入って待つ。
 大概、えっちの後は全裸で寝ているけれど、こうして裸で待つのは初めてかもしれない。恥ずかしさと緊張を隠す為、僕は布団に潜る。

 カチャ··と、静かに扉が開いた。
 僕は、ひょこっと顔を覗かせる。入ってきたのはりっくんだ。

「んふ、可愛いなぁ♡ 緊張してるの?」

「····ちょっと」

「そっかそっか、俺がリードしてあげるから安心してね。朔と場野は上で走ってから来るって。ちょっとでも発散しておきたいんだろうね。啓吾はもう少ししたら来ると思うよ」

 そう教えてくれたりっくんは、ただ眠るみたいに布団へ入ってきた。緊張で強ばる僕を抱き締め、額に頬を擦りつける。

「ねぇりっくん、僕は何したらいいの?」

「今日はこれといってする事ないんだけど··うーん····俺の身体、気になるとこある?」

「気に··なる?」

 そう言えば、皆の身体をまじまじと見たことはない。カッコ良すぎて直視できないんだもん。
 そうか、もっと冷静に見られるようになれば、ドキドキするのも落ち着くかもしれない。僕は、りっくんの身体を首から足先まで見て、気になる箇所に触れてみる。

「腹筋、バキバキじゃないけどうっすら割れてるんだね。なんか綺麗··あ、触ってもいいんだよね?」

 指先が腹筋に触れてハッとした。性的な接触は禁止なんだっけ。これはどっちなんだろう。

「いいよ。じゃなければ、ね。どうぞ、気になるトコ触ってごらん」

 なんだか嬉しそうだ。ふふんと、高笑いでもしそうな顔をしている。ちょっとえっちだ。腹筋を褒めたのが、そんなに嬉しかったのかな。

 押すと程よい弾力があって、少し押し返される感じが面白い。僕のふにふにのお腹と見比べ、同じ人間の身体とは思えなくなった。
 八千代と朔は格闘家なのかなってくらいバキバキだから、もっと別次元の生物のようだ。まぁ、僕の身体が貧相なだけなんだけど。

「こうやって見ると僕の身体って、ホント··かっこ悪いや」

「何言ってんの。ゆいぴの身体はねぇ、どこも綺麗なんだよ」

 そう言ってりっくんは、僕が感じないようにペタッと触って語り始めた。下から順に教えてくれるようだ。

「太腿、もちもちですべすべしてて気持ちいい。まぁ、全身すべすべなんだけどね♡ おちんちん挟んでくれるのも、俺の手滑らせたらフィットしてくる太さなのも、全部が完璧」

 お肌がモチすべなのは、りっくんと八千代がマメにケアをしてくれているからだ。
 触れられているそこだけが妙に熱い。感じこそしないものの、鼓動ははやるばかりで冷静ではいられない。

「ここ、腸骨が浮き出てるの、えっちだよね。で、ここ、鼠径部ってもっとえっち。ゆいぴも俺らのここ、好きだよね。よく見てるでしょ。俺もね、下脱がす時いつもドキドキしてるんだよ」

 じっくり脱がせるなぁとはよく思っていたけど、そういう所を見て楽しんでたんだ。知らなかった。
 知って驚いたのはもうひとつ。ドキドキしてるのは、僕だけじゃなかったんだね。

「俺の腹筋褒めてくれたけどね、俺はゆいぴのこの柔らかいお腹が世界で1番好き。外から押すと感じちゃうのも最高に可愛い♡」

「りっく··えっちなのだめぇ····」

 りっくんの手が僕のお腹を掴めてしまうほど大きいだなんて、付き合うまで知らなかった。に、単純な僕は心拍数を上げてしまう。
 ほんの一瞬、それも、さほど強いわけでもなく、クッと力を込めてお腹を圧迫されただけなのに、僕の身体はさらなる快感を求めてしまう。

「りっくん、もっといっぱい触って」

「ごめんね、お腹触ったら気持ちくなっちゃったね。えっちなのはシてあげらんないけど、ゆいぴが感じないようにいっぱい触ってあげる」

 りっくんは、僕の身体の好きな所語りを再開する。

「脇、ここの皺が好き。顔とかちんちんとか挟んでほしくなるんだぁ」

「んぇ··脇で挟むの? んへへ、りっくん変態だぁ」

 触られるのに慣れた、と言うか、りっくんの配慮ある触れ方のおかげで、えっちじゃないスキンシップが楽しくなってきた。
 矢先の変態発言。まぁ、いつもの事だけど。

「二の腕はちょっとお肉が付いてきたね。安心したよ。細いから、いつか折っちゃいそうで怖かったんだ」

 そんな事を思っていたなんて、りっくんはどこまでも僕を宝物の様に扱うんだ。それでいて、本当は壊したいくせに。
 僕だって、りっくんのことを知らないままじゃないんだ。これまで、沢山の歪んだりっくんを知った。まだまだ氷山の一角なんだろうけど。

 今度は僕の番だ。りっくんのカッコ良くて可愛くて、変態だけど好きな所を教えてあげる。

「りっくんもさ、僕のこと言えないくらい肌白いよね。僕のついでだとか言っていつもケアしてるし。あれ、今度は僕がやってあげたいな」

 りっくんの頬に触れて言ったら、りっくんは『お願いしようかな』と嬉しそうに笑った。つられて僕も笑う。

「鎖骨のライン綺麗だよね。ここ、左の鎖骨の真ん中、このホクロえっちだなぁっていつも思ってたの」

「そうなの? へぇ··、そうなんだ。じゃぁポリセこれ終わったら毎日ここにキスしてもらおうかな」

「んへ♡ いいよ」

 りっくんの腰を両手で挟み、感嘆を漏らす。

「りっくん、皆の中で1番腰細いよね。腕もさ、筋肉ムキムキってわけじゃないでしょ。それなのに僕のこと軽々持ち上げちゃうの、凄いなぁって思ってたんだ」

「あー、なんか複雑だなぁ。俺も筋肉は付きにくいほうだからね。正直、場野と朔が羨ましいよ。俺もあんなバキバキになりたいもん」

「そうなんだ。でもね、僕は今くらいのりっくんが好きだよ。身体のラインもすごく綺麗でモデルさんみたいなんだもん。よく見惚れちゃうんだ」

「そうなの!? 俺、絶対体型崩さないように頑張るから! ゆいぴの為に一生このままでいるね!」

 一生は無理じゃないかな。けど、おじいちゃんになって腰が曲がっても一緒に居るし、多分今よりもっと好きだよ。
 って言うと、りっくんは涙ぐんで僕を抱き締めた。 

 少し押し離し、りっくんの手を持って指を絡めながら言う。

「あとね、いつも僕に優しく触れてくれるこの指が好き。小さい頃から、僕に触れるのは臆病だったんだね。遠慮がちでさ、先っちょだけ勇気を出して触れてくれてたんだろうなって、今だから思うんだけどね」

 そして、その手に頬を寄せる。キスはしちゃダメらしいから、愛情を頬と手の温もりで交換する。

 なんだ、ポリネシアンセックスだなんて名前だから変に身構えていたけど、ただこうして愛情を確かめ合うだけでいいんだ。それなら凄く、物凄く愛おしい時間を過ごすだけじゃないか。
 僕は多幸感に包まれ、カチャリと開いた扉の音に、早くも啓吾への愛おしさが溢れた。

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