最強賢者のスローライフ 〜転生先は獣人だらけの辺境村でした〜

なの

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おまえが笑えば、それでいい

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朝、陽の光がまだ柔らかく差し込む寝台の上。
智也は、うっすらとまぶたを開け……気づいた。目の前に、ライガの顔があった。至近距離で……

「……なにしてるの?」

「見てた」

「見てたって……」

「寝顔。安心する。……可愛い」

智也は顔を赤くして起き上がろうとするが、ライガの手がそっと肩に触れた。

「動くな。もっと見てたい」

「……変なこと言うなよ」

「変じゃない。お前、無防備なときほど、ちゃんとした顔してる」

「ちゃんと……?」

「泣きそうでも、怒ってても、笑ってても……お前の顔、全部好きだ」

その言葉に、智也の心臓がどくりと鳴った。この男はいつも突然だ。
言葉も、距離も、想いも……まっすぐすぎて、逃げ場がない。

「……腹、減った」

話題をそらすように立ち上がると、ライガはすでに台所で準備を始めていた。

「今日は、甘いパンとあったかいスープにした。お前、甘いもの好きだろ」

「……なんで知ってんだよ」

「いつも、蜂蜜の瓶が減る速度で分かる」

「見てんのかよ……」

「全部見る。お前のことなら」

朝食のテーブルは、どこか落ち着かない雰囲気になった。ライガの目が、ずっとこちらを見ている。視線が熱い。重い。でも、嫌じゃない。むしろ少しだけ、心が温かくなるのが悔しかった。

***

村の子どもたちと交流する日課の時間。

智也が子どもに読み聞かせをしていると、背後からぴたりと気配を感じた。

「……なあ、ライガおじちゃんってさ、智也おじちゃんのこと好きなの?」

不意打ちの質問に、智也が固まった。すると、ライガは迷いもなく頷いた。

「好きだ。誰よりも、大事にしてる」

「えー、夫婦なの?」

「違う。……けど、なろうと思えば、なれる」

「なれるの!?」

「俺は、なりたい。できるなら今すぐにでも」

智也は目を丸くした。

「ちょ、ちょっと待て!勝手に決めるな!」

「俺は本気だ」

真顔で返されて、智也は子どもたちの前で真っ赤になってしまった。

「じゃ、ちゅーとかするの?」

「したい」

「ちょ、おい!」

「……けど、まだ我慢してる」

ライガはそう言って、智也の腰にそっと手を添える。

「お前が、ちゃんと俺を見てくれる日まで。……逃げるな、智也。俺だけを、見てろ」

その瞳はまっすぐで、優しくて、熱を帯びていた。智也の心が、どこか、柔らかく揺れた。

「……バカ」

そう呟いて智也はその場から小走りで逃げ出した。けれど背中はどこか、くすぐったそうに笑っていた。

***

夜、窓から星を見上げる智也の背中を、そっとライガが抱きしめた。

「今日も笑ったな、お前」

「……うるさい」

「お前が笑えば、それでいい。俺の一日は、それだけで価値がある」

「……ほんと、お前って、そういうとこ……ずるい」

智也はその腕を振りほどかず、ただ静かに目を閉じた。

……このぬくもりを、信じてもいいのだろうか。もう一度、誰かを信じることを。そんな想いが、胸の奥で小さく灯った夜だった。

 

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