オメガの僕が運命の番と幸せを掴むまで

なの

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僕はいつまで入院してるんだろう。そういえば…バックの中に入ってる薬を探した。とりあえず、今日も飲まないと…でもあと10日分しかないや。もう飲まなくていいと思ってたから買いだめはしていなかった。どうにかして手に入れないと。いつものように1錠を飲み込んだ。またあの副作用で頭痛や吐き気が来るのかと思うと薬を吐き出したい気持ちになった。とりあえず眠ろう。布団をかぶって目を瞑った。
どのくらいそうしていただろう。外は暗くなっていた。いつものように頭が痛くなってきて、吐き気がしてきたので急いでトイレに向かった。
吐いても吐いても気持ち悪さが取れない。生理的な涙が溢れてくる。
「誰か…誰か助けて…」
「苦しい…苦しいよ…」
でもこの薬を飲まないと僕は、発情期が来るだろう。そしたら知らないアルファに売られてしまう。それだけは絶対に嫌だ。でも好きな人も運命の相手も、見つかるはずがない。母さん…助けて…僕を母さんの所に連れて行って…

「あさひ、オメガに産んでしまってごめんね。でも、あさひ…きっと好きな人が現れるわ。もしかしたら運命の番にもね。そしたら必ず幸せになれるから」

いつもそう言ってた母さんは、父さんと番になったのに捨てられてしまった。本当は発情期が辛かったはずなのに僕のために大量の薬を飲んで生活のために仕事して…そのせいで…寿命を縮めたっていうのに…
僕もきっと見つからないよ…そんなおとぎ話みたいなことなんて…だからもう迎えに来て。この世界は僕には辛すぎるから。発情期なんてない世界に生まれたい。
お願い…誰か助けて…そう思いながら僕の意識は途絶えた。

「おい大丈夫か?しっかりしてくれ頼むから。達也、達也」

「どうした?何があったの?とりあえずベッドに」

「わかんねぇ、病室覗いたらいなくて、そしたら洗面所の方から音がして見てみたら、こいつが倒れてた」

「吐いた感じがあるね?何か口に入れた?ごめん、あさひくんのカバンに薬か何か入ってないか見て」

「薬って…またこいつ飲んだのか?」

「わからないけど…とにかく早く!」

「わかった」

「あさひくん、そんなに辛いの?何がそんなに…」

「これ…なんの薬だ?」

「見たことない…ちょっと春樹に聞いてくる。あさひくんに何か変わったことがあったら教えて」

「わかった。春樹によろしく伝えてくれ。

お前はどうしてそんなことをするんだ?そんなに…辛く苦しいことがあるのか?教えてくれ頼むから…もう二度と人が死ぬのを見るのは嫌なんだよ…俺は…あのとき……何もできなかった…苦しんでると聞いてたのに……何も……」



 
「幸樹どう?変わったことない?」

「あぁ…呼吸が苦しそうなんだよ。大丈夫なのか?それより…なんかわかったのか?」

「これ…海外の薬だって。日本では副作用が強すぎるから使われてない発情期を遅らせるための薬。試験や病気の治療でどうしても遅らせなきゃ行けない時に使うこともあるけど…日本でも発情期を遅らせる薬はあるんだよ。それなのになんでこんな副作用が強い薬を使うなんて…」

「そこまでして…」

「あさひくんの身体中にアザとかやけどの跡がいっぱいあるの。見るのが辛いくらい。だから発情期が来ないようにしてたのかもしれない」

「それって…」

「多分、虐待かいじめにあってた…それで発情期が嫌で薬を飲んでたし、逃げ出してきたのかもしれない。他にも理由があるのかもしれないけど…それより幸樹、大丈夫か?あさひくんはオメガだから…」

「こいつは俺のオメガだ。絶対に。微かにだが、こいつから匂いがするんだ。今まで嗅いだことない香りが…本能が運命の番だって…でもあまりにも微かな香りなんだよ…もしかしてこの薬のせいか?でもきっとこいつは受け入れられないと思うよ。怒鳴ったせいですっかり嫌われてるからな…でも…もう二度と人が死ぬのを見たくねぇよ。なんとか助けてやりたい。どうすりゃいいのかわかんねぇけど…」

「幸樹…まだ、あのこと引きずってるの?あれは幸樹のせいじゃないじゃない」

「でも、俺がこっちにいたら救えたかもしれない…」 

「だから調香師になったんでしょ?わざわざ警察官辞めて、学校行き直して…そんなこと、誰でもできることじゃないでしょ?」

「救ってやれなかった、せめてもの償いだ」

「ゆきちゃんは、きっと喜んでるよ。それで救われてるオメガがいっぱいいるんだから…」

「でも俺は…そのくらいしかしてやれないから…雪乃のために何もできなかった。オメガじゃなければ…雪乃は幸せになれたんじゃないかって…」

「幸樹………」

「それより、こいつの身内は?」

「成人はすぎてるから警察に通報する必要はないよね。」

「あぁ…そうだけど…これからどうすれば良いんだ?」

「今は様子見するしか…」
 
あさひくんが急に叫んだ。
「助けて…母さん」

「おい。大丈夫か?」

「あさひくん、何度もお母さんを呼んでるの幸樹が見つけてくれた時も」

「誰もいなかったぞ。言っただろ?コイツ1人で橋のど真ん中に倒れてたから。しかもあそこから落ちたって、たいした怪我なんてしないだろ」

「もしかしたら、もういないのかも知れない…」

「じゃあ家族はいないのか?」

「聞いてみないと…このまま容体が落ち着くといいけど…」

「目、覚めるよな。覚ましてくれよ。頼むから…」

 
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