ここまでお膳立てしてあげたのに、どうして恋に落ちないの!?

*菜乃

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第4章

タイミング…

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無事無傷で悪漢を倒し終え、その場に駆けつけた騎士団によって悪漢たちは拘束される。
マリアージュ邸よりも王宮が近く、警備も安全だということで、ひとまず王宮に訪れた…のだが。

「こんなになってまで、なぜ無理をするんだ!」
「ひぇっ…ご、ごめんなさいっ」

なぜか今、私はこの国の王太子に怒られていた。

「まったく…手が傷だらけじゃないか」
「……」
「こんなになるまで、男たちを殴らなくても…」
「………」

それは男たちを殴った時の傷ではなく、縄を切るときについた傷です…って言いたいけど、言ったら言ったで絶対責められる。

それはそうと、なんで王太子様が手当てなんてしてるのかな??
さっき、私の手の傷に気づいたルークが、そのまま私をここまで引っ張ってきたけど。

「…できた。もう無茶はするなよ」
「はい…」

包帯やガーゼでぐるぐるにされた手を少し握ってみると、切り傷が擦れて痛い。

「ところで、ルシアはどこで技を覚えたんだ?」
「…独学です」
「嘘だろう。顔に出てるぞ」
「うっ…その、習ったんです」
「それも嘘だ。マリアージュ侯爵家にそのような人はいないと聞いている」
「うぅ…」

なんでそんなに聞いてくるのかなぁ…もう前世を思い出したって言ってしまおうか。
でもなぁ…そんなこと言ったら、今度は頭でも怪我をしたのかと言われそう…

「なぜだ」
「…答える前に言わせてください。私は頭は怪我してませんからね」
「?…ああ」
「実はーー」

前世を思い出したんです、と言う前に治療室の扉が思いっきり開かれ、声が掻き消された。

「お姉様!ご無事ですか!?」
「……ユリア?」

何事かと開かれた扉の方を向くと、そこには息を切らしているユリアがいた。
なんで、ここにユリアが…?

「お姉様、大丈夫でしたか?心配しました」
「大丈夫だけど…どうしてあなたがここに?」
「お出かけするときに、お姉様の馬車に怪しい方達がいらしたので、ついて行ってたんです」
「そうなの…」
「お姉様が連れ去られた時は、心臓が止まるかと思いました…本当にご無事でよかったです」
「では、騎士団の方々もあなたが?」
「はい!手伝ってもらいました」
「手伝ってもらった…?どなたに?」
「今お呼びしてきます!お姉様のことを知っていそうでしたよ!」
「あっ、ちょっと!」

呼んできますと言うなり行ってしまったユリア。
治療室には重い沈黙が落ちる。
…どうしよう。また言い出すのも変かな?!

「……その、ルシアーー」
「呼んできました~!!」
「「……」」

今、ルークが何か言いかけてたわよね?!
本当に、タイミングがいいのやら悪いのやら。

「こちらの、ランスロット伯爵様が助けてくださったんです」

ランスロット伯爵?物語上の登場人物かな。
あんまり覚えてないけど、お礼は言っといたほうがいいよね。

「あの、妹がご迷惑をおかけしました。助けていただいたこと、感謝いたします」
「……ああ、気にしないでいいよ。偶然、通りすがっただけだからね」

今、この人、私を見て少し驚いた顔をしていた。
私、変なことを言ったかしら?

「また改めてお礼の品を届けます」
「大丈夫だよ。それよりもルシアが無事でよかった」
「…あの、どこかでーー……」
「ごめんね、そろそろ行かなきゃ。また改めて伺うね」
「え?あの、まっ…!」

とっさに声をかけたものの、そのまま行ってしまった。
なんなんだろう、あの人…
私と、どこかで会ったことがある……?

「ルシア」
「あっ…ごめんなさい、ルーク様」
「今日はそのまま帰っていいよ。悪漢たちの相手をして疲れているだろうし」
「いいんですか?」
「うん」

それはありがたいけど…全然顔と言葉があってない。
優しい声に反して顔がちょっと怒っているというか。
まあ、帰っていいと言うのなら、喜んで帰りますとも。

「では、ありがとうございました、ルーク様」
「ああ……」

妹を連れて部屋を出る。

結局、ランスロット伯爵ってどの役割なんだろう。
でも、物語上に出てくる男たちは、ほとんどがユリアの味方であり、ルシアの敵。
だから、別に気にするようなことは何もないんだけど。

なんだろう…絶対に良くない気がする。

この時の私は知らなかった。
のちに、波乱の日々が幕を開けることをーー……
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