妹の彼が好き

なごみ

文字の大きさ
上 下
13 / 29

松岡くんの憂鬱②

しおりを挟む
「ご、ごめん。他に美姫ちゃんに会える良い方法って思い浮かばなくて。ストーカーなんかしてても、美姫ちゃんに怖がられるだけだろう?   本当に失礼なお願いで申し訳ないんだけど」


「……それはいいけど、いつまでも長引いて辛くなるだけなんじゃないのかな?」


松岡くんの想いはよくわかる。


わたしだって松岡くんと少しでも一緒にいられるなら、この惨めな役割だって幸せに感じられそう。


だけど、松岡くんが美姫に未練がなくなった時、わたしたちの関係はすぐに終わってしまうんだ。


その時のわたしの心情を思うと、とても哀しくなる。


立ち直れるだろうか?


今なら傷つくことも軽いのだけれど。


「早希ちゃん、やっぱりダメかな?」


「いいよ、松岡くんが美姫のこと忘れられるまで付き合えばいいんでしょ。もしかしたら、よりが戻るかもしれないし。うちの両親も松岡くんのことはとっても気に入ってるの。美姫ちゃんにはもったいないねって」


「本当にいいの?  ありがとう。助かるよ、早希ちゃん」


ホッとしている松岡くんの嬉しそうな顔を見て、複雑な心境になる。


美姫は駿くんのことがまだ好きと言っていたから、わたしに取られてライバル意識を燃やすかもしれない。


そうすれば、松岡くんの目論見は大成功ということになる。哀しくて、惨めなのはわたしだけ。


でも、それでもいい。もしかしたら一生恋愛なんて出来ないかもしれないんだから。失恋だってしないよりはした方が、まだマシなような気がする。


ファミレスを出て、松岡くんと一緒に我が家に向かって歩く。


家に近づくにつれて、松岡くんの顔が緊張でこわばっているのがわかった。


「ただいま~」


リビングのドアをあけて入ると、すでに父も帰宅していてカレーを食べていた。


「おかえり。あら、駿くんも一緒だったの?  偶然?」


なにも知らない母が松岡くんを見て微笑んだ。


ソファに座ってバラエティ番組を見ていた美姫が、駿くんと聞いて振り返った。


「駿くん!  どうしたの?  なんで来たの?」


美姫が立ち上がって、咎めるように松岡くんを見つめた。


松岡くんがうなだれて、チラッとわたしを見て助けを求めた。










しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

月が導く異世界道中

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:58,621pt お気に入り:53,931

六華 snow crystal 5

現代文学 / 連載中 24h.ポイント:99pt お気に入り:7

六華 snow crystal 2

現代文学 / 完結 24h.ポイント:49pt お気に入り:3

六華 snow crystal 3

現代文学 / 完結 24h.ポイント:49pt お気に入り:5

六華 snow crystal 8

現代文学 / 完結 24h.ポイント:99pt お気に入り:4

夫の不倫相手は妹でした

恋愛 / 完結 24h.ポイント:52,980pt お気に入り:754

ここはあなたの家ではありません

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:74,387pt お気に入り:1,232

今更だけど、もう離さない〜再会した元カレは大会社のCEO〜

恋愛 / 完結 24h.ポイント:284pt お気に入り:433

六華 snow crystal 4

現代文学 / 完結 24h.ポイント:49pt お気に入り:6

処理中です...