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新しい彼②
しおりを挟む「こんばんは」
「あら、駿くん、いらっしゃい! 」
母の高い声に反応して、テレビを見ていた美姫と彼が振り向いた。
美姫は曇った顔をしてうつむき、彼氏は見るからにハイレベルな松岡くんに気圧されたのか、憮然とした様子でテレビに視線を戻した。
「寒かったでしょう。今ごはん用意するわね」
「ありがとうございます。いつもすみません」
そう言った松岡くんは、食卓テーブルにつくことも忘れて、ソファーに並んで座っている美姫と彼を見ていた。
どうすればいいの?
美姫とテレビを見ていた彼は、突然やってきたイケメンの来客に気を悪くしたのか、
「俺、そろそろ帰るわ」
と呟いた。
「えっ、もう? 」
急に不機嫌になった彼に美姫が困惑している。
立ち上がって玄関に向かう彼が、わたしと松岡くんの前を素通りした。
美姫が慌てて彼の後を追った。
「美姫ちゃん! お友達紹介してくれない?」
挨拶もなしに素通りするなんて。あまりに失礼な態度に我慢が出来なかった。
ムッとして振り返った彼の口から小声で「うぜぇ」と言う、ふて腐れた声が聞こえた。
「はじめまして。姉の早希です」
彼の前に立ち、自己紹介した。
「双子って聞いてたけどな。全然似てねぇよな。プッ!」
小馬鹿にしたような上目使いで、彼はうす笑いを浮かべた。
常識のない彼の挨拶に、美姫が慌ててフォローした。
「彼は小島尚人くん。同じクラスの子よ。家がわりと近所なの」
自己紹介もまともに出来ない失礼な彼氏に、仕返しがしたくなった。
わたしの隣に立ち、美姫を悲しげに見つめている松岡くんを紹介した。
「彼は松岡 駿さん。K高校の3年生よ。東京大学を目指している受験生なの。今、家庭教師してもらってるのよ」
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