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(後半)
“背伸びをしない選択”の罪悪感
「誰かに、“なんで上を目指さないの?”って聞かれると、
“別に今のままでも満足してます”って答えるようにしてるんです。
でも、本当は――答えられないんです。
なぜかって、私自身がいちばん分からなくて」
理絵の言葉には、長く閉じ込めてきた感情がにじんでいた。
「選ばなかった理由」を言語化する機会が、これまでなかったのだろう。
梓は、時間を急がず応じた。
「“選ばなかった理由”を、誰かに説明するのは難しいものですね。
昇進やステップアップが“当然の道”とされている中で、
そこから降りることは、“何か足りない人”と見られがちです」
理絵は小さく頷いた。
「“もっと上に行けばいいのに”って、悪気なく言われるたびに、
“行かない自分”が、まるで後ろ向きな人みたいに思えて……
それでも、責任や他人の感情を背負いこむのが怖くて、足が動かないんです」
「責任の重さに“怖さ”を感じることは、
本来、とても大切な感受性です。
それがなければ、人は簡単に他人を振り回してしまいますから」
理絵は、ゆっくりと目を上げた。
「……私、昇進に向いてないんでしょうか」
「“向いていない”というよりも、
“向き合いたいことの形が違う”だけかもしれません。
“上に立つこと”より、“目の前の現場に寄り添うこと”に力を注ぎたい。
それも、ひとつのキャリアの形だと思います」
「“上に立たないこと”が、“役に立っていない”わけじゃない……?」
「もちろんです。
理絵さんのように、丁寧に現場を支えてきた人がいるからこそ、
チームは安定して、後輩たちが育つ土台ができている。
“見えにくい役割”ほど、本当は欠かせないんです」
理絵は、ふっと息を吐いた。
「……ありがとうございます。
誰かにこういうふうに言ってもらったの、初めてかもしれません。
“昇進しない”ことに、ずっと罪悪感があったんです。
でも、“働き方としての誇り”も、持っていいのかもしれないですね」
“上に行かない選択”が、“後ろ向き”とは限らない。
それは、“自分にとってのちょうどいい場所”を見つけようとした結果かもしれない。
理絵はようやく、自分の歩幅で働くという感覚を取り戻しつつあった。
“背伸びをしない選択”の罪悪感
「誰かに、“なんで上を目指さないの?”って聞かれると、
“別に今のままでも満足してます”って答えるようにしてるんです。
でも、本当は――答えられないんです。
なぜかって、私自身がいちばん分からなくて」
理絵の言葉には、長く閉じ込めてきた感情がにじんでいた。
「選ばなかった理由」を言語化する機会が、これまでなかったのだろう。
梓は、時間を急がず応じた。
「“選ばなかった理由”を、誰かに説明するのは難しいものですね。
昇進やステップアップが“当然の道”とされている中で、
そこから降りることは、“何か足りない人”と見られがちです」
理絵は小さく頷いた。
「“もっと上に行けばいいのに”って、悪気なく言われるたびに、
“行かない自分”が、まるで後ろ向きな人みたいに思えて……
それでも、責任や他人の感情を背負いこむのが怖くて、足が動かないんです」
「責任の重さに“怖さ”を感じることは、
本来、とても大切な感受性です。
それがなければ、人は簡単に他人を振り回してしまいますから」
理絵は、ゆっくりと目を上げた。
「……私、昇進に向いてないんでしょうか」
「“向いていない”というよりも、
“向き合いたいことの形が違う”だけかもしれません。
“上に立つこと”より、“目の前の現場に寄り添うこと”に力を注ぎたい。
それも、ひとつのキャリアの形だと思います」
「“上に立たないこと”が、“役に立っていない”わけじゃない……?」
「もちろんです。
理絵さんのように、丁寧に現場を支えてきた人がいるからこそ、
チームは安定して、後輩たちが育つ土台ができている。
“見えにくい役割”ほど、本当は欠かせないんです」
理絵は、ふっと息を吐いた。
「……ありがとうございます。
誰かにこういうふうに言ってもらったの、初めてかもしれません。
“昇進しない”ことに、ずっと罪悪感があったんです。
でも、“働き方としての誇り”も、持っていいのかもしれないですね」
“上に行かない選択”が、“後ろ向き”とは限らない。
それは、“自分にとってのちょうどいい場所”を見つけようとした結果かもしれない。
理絵はようやく、自分の歩幅で働くという感覚を取り戻しつつあった。
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