世界を救った聖女ですが、浮気されたので魔王と手を組みます

藤原遊

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第4章 魔王軍再建と理解

4-5

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農園予定地の中央で、リュミエールは足を止めた。

土はまだ硬く、魔力の名残が濃い。
だが、ここから始めると決めた場所だ。

彼女は、ゆっくりとヴァルを振り返る。

「あなたの力になりたい」

声は穏やかだった。

「聖女としてじゃなく――味方として」

一切の装飾もない、率直な言葉。

ヴァルは何も言わず、その言葉を受け取った。

リュミエールは、そのまま一歩前に出る。
膝をつくことはしない。
ただ胸の前で手を重ね、静かに目を閉じた。

光の女神への祈り。

言葉は短い。
願いも、限定的だった。

――この地に、実りを。

空気が、変わる。

闇の神の力が、押し返されるように薄れていく。
対立ではない。
上書きでもない。

必要な分だけ、光が満ちていく。

次の瞬間、柔らかな陽光が降り注いだ。

荒地だった場所に、祝福が宿る。
土が、息を吹き返したかのように温度を持つ。

「……城の近くだぞ、ここ」

ヴァルが、ぼそりと呟く。

「闇の神の加護が、かなり厚い場所なんだがな」

苦笑交じりだったが、その目は真剣だった。

「……ありがとう」

短い言葉だった。

リュミエールは、肩をすくめる。

「大したことはしていないわ」

そう言いながら、彼女は荷から小さな女神像を取り出す。

光の女神の像。
携行用の、簡素なものだ。

「これを置いておくの」

土台を整え、農園の端に据える。

「私がいなくても、祝福が維持されるように。
完全じゃないけれど、作物を育てるには十分よ」

ヴァルは、その様子を黙って見ていた。

「……自分がいなくなる前提なのか」

問いではなく、確認だった。

リュミエールは、女神像から手を離し、振り返る。

「ええ」

微笑みは、静かだ。

「私は、居座るために来たわけじゃないもの」

必要なものを残し、
続く仕組みを作る。

それが、彼女のやり方だった。

聖女の言葉は、誓約でも、契約でもない。
ただの意思表示だ。

それでも――
その言葉と行動は、確かに魔王の国に根を下ろした。

光と闇が、衝突するのではなく、
並んで存在するという形で。

ヴァルは、農園予定地を見渡す。

そして、初めて思った。

この聖女は、
「与える者」ではなく、
「共に背負う者」なのだと。

世界を救った聖女は、
この日、言葉以上のものを残した。

――味方として。
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