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第5章 人間側との決裂
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人間の騎士団は、もはや隊列と呼べない形で退いていった。盾を落とし、仲間を顧みる余裕すらなく、ただ国境の向こうへと我先に逃げていく。その無様な背中を、リュミエールはしばらくの間、何も言わずに見送っていた。
勝敗は、もうとっくについている。
確認するまでもない事実を、あらためて目に焼きつけているだけだった。
やがて、彼女は小さく息を吐く。
「……バカね」
吐き捨てるような声音ではない。怒りよりも、どうしようもない呆れが滲んだ呟きだった。
リュミエールは一歩前に出る。逃げていく先に向かって、あらためて声を張ることもなく、淡々と言葉を重ねた。
「人間ごときが、私に勝てるとでも思ったの?」
問いかけは静かだが、その場に残る者たちには十分すぎるほど重い。
「私の旅に、誰一人ついて来れなかったのに。勇者も、騎士も、王子でさえも……」
一度、言葉を切る。
「それで、どうして勝てると思ったのかしら」
答える者はいない。
残っているのは、風に舞う土煙と、完全に折れ切った人間側の意志だけだった。
張りつめていた沈黙を、最初に破ったのは四天王だった。
「……それ」
リリスが肩をすくめ、半ば呆れたように口を開く。
「完全に、私たちのセリフね」
「まったくだな」
ガルドも短く頷く。
「人間の騎士団が束になっても、歯が立たなかった。それは事実だ。今さら何をしに来たのかと思えば……」
「しかも、“聖女を取り戻す”だってさ」
セイルが乾いた笑いを漏らす。
「向こうの事情を考えたら、怖くて近づけないのが普通だと思うけどね」
誰も異を唱えなかった。
この場にいる全員が、同じ結論に辿り着いている。
人間側は、完全敗北。
交渉も、威圧も、奪還も――何ひとつ、成し遂げられてはいない。
「さて」
リリスが軽く手を叩く。
「後始末は私たちでやるから、もういいでしょ?」
リュミエールは頷いた。それ以上、何かを言い足す必要は感じなかった。啖呵はすでに切った。事実も、結果も、すべて示されたあとだ。
彼女は踵を返し、城へ向かって歩き出す。
その少し後ろを、四天王たちが続く。先ほどまでの緊張が嘘のように、軽口が交わされ、張りつめていた空気はいつの間にか解けていった。
その輪の、ほんの少し外側に、魔王ヴァルは立っている。
声を出すこともなく、会話に加わることもない。ただ、その場にいた。リュミエールが歩き去っていくのを、視線で追っていた。
戦が終わったあとの城門前で、何事もなかったかのように、ただ静かに。
こうして、人間側の再侵攻は終わった。
勝敗は、もうとっくについている。
確認するまでもない事実を、あらためて目に焼きつけているだけだった。
やがて、彼女は小さく息を吐く。
「……バカね」
吐き捨てるような声音ではない。怒りよりも、どうしようもない呆れが滲んだ呟きだった。
リュミエールは一歩前に出る。逃げていく先に向かって、あらためて声を張ることもなく、淡々と言葉を重ねた。
「人間ごときが、私に勝てるとでも思ったの?」
問いかけは静かだが、その場に残る者たちには十分すぎるほど重い。
「私の旅に、誰一人ついて来れなかったのに。勇者も、騎士も、王子でさえも……」
一度、言葉を切る。
「それで、どうして勝てると思ったのかしら」
答える者はいない。
残っているのは、風に舞う土煙と、完全に折れ切った人間側の意志だけだった。
張りつめていた沈黙を、最初に破ったのは四天王だった。
「……それ」
リリスが肩をすくめ、半ば呆れたように口を開く。
「完全に、私たちのセリフね」
「まったくだな」
ガルドも短く頷く。
「人間の騎士団が束になっても、歯が立たなかった。それは事実だ。今さら何をしに来たのかと思えば……」
「しかも、“聖女を取り戻す”だってさ」
セイルが乾いた笑いを漏らす。
「向こうの事情を考えたら、怖くて近づけないのが普通だと思うけどね」
誰も異を唱えなかった。
この場にいる全員が、同じ結論に辿り着いている。
人間側は、完全敗北。
交渉も、威圧も、奪還も――何ひとつ、成し遂げられてはいない。
「さて」
リリスが軽く手を叩く。
「後始末は私たちでやるから、もういいでしょ?」
リュミエールは頷いた。それ以上、何かを言い足す必要は感じなかった。啖呵はすでに切った。事実も、結果も、すべて示されたあとだ。
彼女は踵を返し、城へ向かって歩き出す。
その少し後ろを、四天王たちが続く。先ほどまでの緊張が嘘のように、軽口が交わされ、張りつめていた空気はいつの間にか解けていった。
その輪の、ほんの少し外側に、魔王ヴァルは立っている。
声を出すこともなく、会話に加わることもない。ただ、その場にいた。リュミエールが歩き去っていくのを、視線で追っていた。
戦が終わったあとの城門前で、何事もなかったかのように、ただ静かに。
こうして、人間側の再侵攻は終わった。
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