亡命した混血の俺と天使の幼馴染、七斗学院で新しい人生を始めます

藤原遊

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人間の国・レイド王国。
東方教区の小さな孤児院で、俺たちは毎日祈りと労働を繰り返していた。だがある日、その日々を変える機会が突然やってきた。

「ジム、ククル、学院試験の推薦が来ている」

神父様がそう告げた時、最初は耳を疑った。
だが続く説明に、俺は驚きとともに胸が高鳴った。

「ニコラウス商会の特待生制度だ。七斗学院に人材を送り出す枠が用意された。今回は、ラグエンティ伯爵家が後ろ盾になっているそうだ」

「……ラグエンティ伯爵家……」

ククルが小さく呟く。俺も頷いた。

もちろん知っていた。
この孤児院に、以前あの家のお嬢様──リリンシラ様が訪れたことがある。
気さくに孤児たちに声をかけ、優しく微笑んでいた小柄な少女。その時の光景は、今もこの孤児院の子どもたちの間で語り草になっている。

「その伯爵家が……僕たちに?」

「……そうだ。神の加護があったとしか言いようがないな」

神父様は優しく微笑んだ。
だが俺はわずかに緊張していた。
──名門貴族が孤児に目をつける。
それは、善意と同時に、どこか別の思惑が絡む可能性もあるからだ。

けれど、そんな俺の考えをよそに、ククルは穏やかに微笑んだ。

「……ジム。もしこれで、君と一緒に学院に行けるなら──僕、挑戦したい」

その言葉に、俺も自然と微笑みを返した。

「だったら決まりだ。お前の背は、俺が守る。学院でもな」

試験は厳しかった。
筆記、魔力測定、神学の基礎知識──
けれどククルは神学で抜群の適性を示し、俺は竜族の血を引く身体能力で評価を得た。

──そして、合格の報せが届く。

「ジム、ククル、おめでとう。君たちは特待生に選ばれた」

「……ほんとうに?」

目を丸くするククルに、俺は無言で頷いた。

そんな俺たちの前に現れたのは、一人の男だった。
漆黒のマント、控えめに商会章をつけた穏やかな微笑み──

「ごきげんよう。ニコラウス商会の者です。リュラ・ニコラウスと申します」

「……商会の人?」

「ええ。学院生活での監督役を任されております。お二人のような優秀な学生が来てくれるのは、商会にとっても誇りですよ」

その声は穏やかだが、どこか底の読めない雰囲気があった。

まだこの時は誰も知らなかった。
──この男が、国をまたいだ謀略の裏側にいることを。

ククルが小さく微笑み、俺の袖をそっと掴んだ。
俺はその手を優しく包み込む。

「……これで、本当に一緒に行けるんだな」

「うん。ジムとなら、きっと大丈夫」

この手は、絶対に離さない。
学院でも、その先の未来でも──

こうして、俺たちは七斗学院へと歩き出した。
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