亡命した混血の俺と天使の幼馴染、七斗学院で新しい人生を始めます

藤原遊

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七斗学院──

湖の中心に浮かぶ孤島《シャリオテーラ》に建つ、この世界でも屈指の学術都市。
人間のレイド王国、魔族のフェーゲ王国、混血のノイトラール共和国――三国すべての才ある者たちが集まる場所。

そして今、その門を俺たちはくぐった。

「……ジム、これが……学院なんだね」

ククルが隣でぽつりと呟く。
その声は静かだが、ほんのわずかに震えていた。期待と緊張が入り混じっているのが伝わってくる。

「そうだな」

俺は隣に立つククルの肩を軽く触れた。
七斗学院生徒の象徴であるマントが揺れている。レイド王国からの入学者である俺たちは白いマントが許された色だ。

「お前なら大丈夫さ。今までだって、ずっと乗り越えてきただろ?」

「……うん」

ククルは微笑んだ。
銀髪が風に揺れ、陽光を受けてきらめく。その儚げな美しさに、思わず胸が締め付けられそうになる。

ここまで来られたのは、正直奇跡みたいなものだ。

孤児だった俺たちが、学院の特待生選抜試験を受けられたのは、ニコラウス商会とラグエンティ伯爵家の後援があったからだ。
ククルが貴族たちの目に晒されるたび、攫われそうになるたび、何度も危機はあった。

でも、それでも諦めなかった。
ククルは自分の力で試験を突破し、俺も隣で一緒に勝ち上がった。

この場所に、ふたりで来られた。

 

──そんな俺たちを、入学直後に最初に出迎えたのは、一人の女性だった。

「やっと会えましたね、ジム・クエーサー君、ククル・クエーサー君」

淡い金色の髪に、天使族の特徴を色濃く現れた涼やかな顔立ち。
彼女は迷いなく俺たちの前に歩み寄り、優雅に名乗った。

「私はソフィア・ヘルビム。七斗学院・黄色の魔導教授です。あなたたちの推薦書を確認させていただきました」

その名を聞いて、俺は一瞬緊張した。

──ヘルビム家。天使族の名家だ。

「えっと……お初に、お目にかかります……」
思わずカタくなる俺をよそに、ククルが一歩前に出る。

「はじめまして、教授。僕たちを迎えに来てくださったのですか?」

ソフィア教授は微笑んだ。

「ええ。特に君、ククル君には以前から興味があって」

「……僕に?」

「天使族との混血、それも高い適性を示す癒し魔導の素質。資料を拝見して、ぜひ直接指導したいと申し出たのです」

ふっとソフィア教授がククルを覗き込むように微笑む。
その瞳には好奇心と、少しだけ学者らしい危うさが滲んでいた。

「もちろん、ジム君の戦闘適性や実技成績も優秀でした。護衛役としても申し分ありません」

「……そ、そんな肩書きじゃねえよ。俺は、こいつの友達で……家族みたいなもんです」

思わず反射的に口をついた。
ククルはそんな俺を横目で見て、小さく微笑む。

「ふふ。そういう絆も、七斗学院では大切にします」

──この時、俺はまだ知らなかった。
この出会いが、七斗学院での俺たちの新たな日々の始まりであり、そして──

……予想もつかない未来への入口になることを。
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