亡命した混血の俺と天使の幼馴染、七斗学院で新しい人生を始めます

藤原遊

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ノイトラール共和国の中央、首長ノアの邸宅──いや、“居住舎”と呼ぶべきなのかもしれない。

俺たちは、ラグエンティ伯爵家取り潰しの混乱を逃れてすぐ、ウェバルの計らいでこの国へ亡命していた。

レイド王国で育った俺たちには、この場所は全てが新鮮だった。

屋敷の外壁は石造りではなく、巨木と貝殻を思わせる白い素材が混ざり合い、温かな陽光を反射して輝いている。中庭では人魚の血を引く少年少女たちが水路で遊び、遠くからは獣人たちの朗らかな歌声が響いてくる。

「……ここが、ノア様のお屋敷……?」

ククルが、柔らかく俺の袖を掴む。
新天地への不安と、異文化への驚きが入り混じる声だ。

「案内するよ」

先導してくれたのはもちろん、ウェバルだった。

「首長──お父さんは、君たちが落ち着くまで好きに使ってくれて構わないと仰ってる。部屋も静かなところを用意してるから、安心してね」

ウェバルの気遣いは変わらず優しい。

──正直、この優しさには随分救われてきた。

**

翌日。

一台の馬車がゆっくりと邸宅へ到着した。

出迎えに立った俺たちの前に降り立ったのは──

「お元気そうで安心しました、ジム君、ククル君」

青のマントに身を包んだ、七斗学院・青の魔導教授──マリアン・ベリアル。

「大変な事態になってしまいましたが……無事で何よりです」

後ろから続いたのは、七斗学院・黄色の魔導教授──ソフィア・ヘルビム。

「ようやくこちらの状況も整理がついたから、様子を見に来たんだ」

「──ソフィア教授、マリアン教授……!」

思わず俺たちは駆け寄ってしまった。
ほんの数ヶ月前まで学院で毎日顔を合わせていた恩師たち。その懐かしさが胸に込み上げる。

ソフィアは微笑みながらも、ククルの頬を優しく撫でた。

「顔色は悪くないわね。良かった。食事は取れてる?」

「は、はい……ウェバルさんが色々と……」

ククルは少し照れたように微笑む。

マリアン教授も、ゆっくりとうなずく。

「──この国なら、貴方たちもきっと落ち着けるでしょう。」
「ノアは寛容な人だからね」

そこへ、ウェバルも口を挟む。

「二人とも、学院の授業が休めないのに無理させてしまったんじゃ……」

「──いいえ」

ソフィアが緩やかに首を振る。

「私たちにとって、貴方たちの成長は”授業”よりも大事な”研究対象”なの」

ククルがぽかんと目を丸くする。
俺も、思わず苦笑した。

「──冗談よ」

ソフィアはふわりと微笑む。

マリアンも静かに付け加えた。

「……貴方たちは、ただの”混血児”などではありません。自ら進む道を選び続けた”強者”です。どの国にも容易には得られぬ、貴重な人材ですよ」

「えっと……そんな、僕たちなんて……」

ククルは顔を赤らめるが、マリアンの言葉は穏やかだった。

「──将来もし、国の情勢が落ち着き、君たちの意思が整ったなら──学院も、いつでも君たちを歓迎しますよ」

「もちろん──こちらも急かすつもりはありません。ノイトラール共和国に身を置きながら、ゆっくり考えれば良い」

そう言って、ソフィアは本当に優しく、俺たちを見つめてくれた。

──俺たちは守られている。支えられている。

今はただ──
この新しい国で、胸を張って生きられるようにならなくちゃいけない──そう強く思った。

**

新天地での暮らしが、静かに始まっていた──。
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