悪役令嬢は修道院を目指しますーなのに、過剰な溺愛が止まりません

藤原遊

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3章 ヒロインとの出会い

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エリーナとの対話の後、私はしばらく修道院の中庭で彼女と話し込んでいた。彼女は驚くほど話好きで、次から次へと新しい話題を振ってくる。その大半が、私にとって意外なものだった。

「リリアナ様、本当に修道女になられるんですか?」

その質問に、私は少しだけ間を置いて答えた。

「ええ、わたくしはそのつもりです。」

「でも、リリアナ様が修道女に……なんだか想像がつきません。」

エリーナは首を傾げて微笑んだ。その無邪気な表情を見ていると、私の決意がどこか揺らぐような気がしてならない。彼女は続ける。

「リリアナ様には、もっと多くの人に頼られるような存在でいてほしいです。」

「頼られる……?」

「はい。リリアナ様は素晴らしいお方ですもの。私のような者にも平等に接してくださるのですから、もっとたくさんの人を幸せにできると思います。」

その言葉に、私は戸惑いを覚えた。自分が誰かを幸せにできる存在だとは考えたことがない。むしろ、これまで多くの人を傷つけてきたとさえ思っていたからだ。

「あなたは……本当にそう思っているのですか?」

「もちろんです!」

エリーナの瞳は、嘘偽りのない輝きを湛えていた。その純粋さに、私は胸が少しだけ苦しくなる。

「……ありがとうございます。」

それだけを告げるのが精一杯だった。

その後もエリーナは、様々な話題で私を楽しませてくれた。社交界での出来事や、最近流行している菓子の話。彼女の家族のことや、彼女自身の夢のこと――。

「私も、いつか誰かの役に立てるような人になりたいです。」

その言葉に、私は小さく頷いた。

「あなたなら、きっとなれるわ。」

彼女が私に向ける笑顔は、本当に眩しいものだった。

夕方になり、エリーナが帰る時間が近づいてきた。彼女は名残惜しそうに修道院の門の前で立ち止まり、私を振り返る。

「今日は本当にありがとうございました、リリアナ様。またお話しさせていただけますか?」

「ええ、わたくしでよければ。」

その言葉を聞いたエリーナの笑顔は、太陽のように輝いていた。

彼女を見送った後、私はしばらく門の前に立ち尽くしていた。彼女と話している間、私の胸の中には奇妙な温かさが生まれていた。それが何を意味するのか、まだ分からない。

だが、彼女との出会いが、私にとって特別なものになる――そんな予感がしていた。

部屋に戻った私は、窓の外を見つめながら考えた。平穏を求めるだけでは足りないのではないかと。彼女が言った「頼られる存在でいてほしい」という言葉が、頭の中で何度も響いてくる。

その夜、私は初めて、自分がこれからどう生きていくべきかを少しだけ考え始めていた。
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