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 玄関でいつまでもいつまでも舌を絡ませ合った後、時雨さんを再びパジャマに着替えさせると、ベッドに入れて布団をかけた。

「後で、お粥作って薬持って来ますね」

「春、ごめんね。ありがとう」

 俺はニッコリ笑うことで応えた。
 甲斐がいしく時雨さんの世話を焼けることが嬉しくて仕方がないんだ。
 時雨さん、わかってる?

 少し時雨さんに眠ってもらおうと俺は先に静かに部屋の掃除を始めた。
 一時間ほどして、お粥を作り終えると、薬とミネラルウォーターを持って寝室のドアを開けた。そこで目に飛び込んできた光景に俺はしばし固まった。

 時雨さんが自慰行為をしていたのである。

「時雨さん……?」

「春っ! ごめんね……さっき泰史と会ってから、裏切られたことを思い出してしまって……春が欲しくて。でもまた風邪感染しちゃうから」

 時雨さんも俺と一緒で、裏切られたんだ。
 浮気で、裏切られたんだ。

 俺は咄嗟にお茶碗と薬を床に置いて、時雨さんにひざまずいた。
 そっと時雨さんの剛直を口に含む。

「ふっ…ぅ」

「春っ、いいからっ……っ……そんなことしなくてっ!」

 俺は時雨さんの言葉を無視して陰茎を咥えて頭を動かした。

 裏筋を舐め上げ鈴口を舌で抉り、全体を口を窄めて吸い上げる。口が届かない根本は右手を添えて扱き上げた。口端から時雨さんの先走りと俺の涎が交わった液が顎を伝う。

 唇を上下する度に、吸い上げる度に、淫猥な水音が部屋に響いて、俺の身体も熱くなってくる。自身が少しだけ熱を持ち始めているのがわかるけれど、時雨さんは風邪をひいてるんだから……と必死に口だけに意識を集中した。

「んっ、ふ」

「春っ……っ……口、離してっ、出るっ」

 俺は時雨さんを上目遣いで見つめた。
 時雨さんの大きな猛りが喉元まできて、軽くえずきながら瞳に涙が溜まった。

    時雨さんは離してって言ったけれど、でも──。

「だひて……ひぐれはん……」

 その言葉に時雨さんが腰を震わせて。口の中の剛直がビクビク痙攣したと同時に俺の口内に精が吐き出された。

 それを躊躇うことなく勢いよく飲み込む。独特な味が口いっぱいに広がったけれど、時雨さんの熱が欲しかった。

    先走りと俺の唾液に濡れた陰茎を隅々まで舐めて掃除してから口を離すと、時雨さんが申し訳なさそうな瞳で見つめてきた。

「ごめんね……春」

「時雨さん……俺の事、好きですか?」

 熱く疼く身体を持て余しながら、思わず訊いてしまっていた。
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