覇王はトラウマごと疫病神を愛しすべてを覆す

ちろる

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「……ではでは! 時也ときやさんの退院を祝して、かんぱーい!」

 真夜まやくんの乾杯の音頭で始まった時也さん退院祝いは、時也さんのマンションに大量のお酒を買い込んできた真夜くんと宇大うたさんの手土産で催された。

 三人はさすが水の世界の集団、どんどん酒を開けていく中、俺はビール一缶にワインを一杯飲んだだけで既に頭が朦朧としてきている。

ひじりくん大丈夫? お酒弱いの?」

 真夜くんの問いに時也さんが思い出したようにハッとした顔をして、「聖ちゃん、また酔い殺しちまったか? 酒と俺の美貌に」とうそぶいた。

「また、ってどういう意味?」

「いい質問だ、真夜。俺と聖ちゃんが初めて結ばれた夜の話なんだけど――」

「わー! 時也さん! その話はしなくていいです!」

 酔いつぶれた挙句に時也さんの家にお持ち帰りされて、運命共同体になって抱かれただなんて恥ずかしすぎる。

「えー? 俺と聖ちゃんの大切な初夜の話じゃん? コイツらの前で盛大に惚気けてやんねぇと?」

「初夜とか言わないでくださいっ!」

 自分でも真っ赤な顔をしているだろうことがわかるけれど、いい感じにお酒の入った時也さんがどこまで話してしまうかわかったものじゃなくて慌ててしまう。

「ノンケの時也さんが男に堕ちた夜の話、俺も気になります」

 ククッと、宇大さんまでもがそんなことを言い出すから(っていうか、宇大さんもノンケだったのに真夜くんに堕ちたんじゃ!?)という疑問はさておき、必死に止めに入ってみるけれど――。

「いやー、あの日の聖ちゃんにはどんなAV女優も顔負けだろうよ。何せ俺に初めての男の抱き方を――」

「時也さんっ!」

 真っ赤な顔で制止すると既に七缶ビールを開けてシャンパン三瓶を飲み下しているはずの時也さんは、顔色一つ変えずにケタケタと笑いながら「じょーだん!」と話を切りあげた。

「俺の姫との熱い夜を簡単に教えてやるかよ。つーか、宇大真夜夫婦。今晩はウチに泊めてやるけど、俺たちの愛の巣でいかがわしいことするなよ?」

「しませんよ! っていうか、いつの間に愛の巣に? 二人同棲するんですか?」

 真夜くんが邪気のない瞳をくりくりさせるから、俺も初耳過ぎて(えっ!?)と時也さんを見遣ると、彼はグレーの瞳をすがめた。

「するよな? 聖ちゃん? 選択肢はYES一択な?」

(本当にこの人はもう……)

「……します……」

「わー! 聖くんの嫁入りにかんぱーい!」

 なんて、嫁入りも決定されつつ、(まぁ、幸せだからいいか)と俺は弱い酒を入れながら四人の宴は続いた。
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