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11秋、実りの前の準備が肝心

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雨季が終わり、ようやく夏がきました。
最初は綺麗ではしゃいでいたものの、土を踏めない生活が長く続くのはやはり落ち着かないものです。
「まだ完全に水が引いたわけではないからね。今日は高台で少し薬草を摘んでくるだけにするよ」
二階から確認した限り、近所の畑はまだ薄く水に浸っていて、収穫にはまだ早いようです。
土が乾いて、陽の光をたっぷり浴びてつやが出たころが一番いいんだとか。
近くの農家の方達は雨期に使っていたボートと釣り具のお手入れをしていました。
屋根裏につるす前に、こすれや欠けをきれいにしておかないといけませんからね。
台所に戻ると、リーザさんが少し遅めの朝食を用意してくれていました。
さっぱりとしたミント入りのサラダと乾燥野菜のチップス、冷たいお芋のスープです。
雨季の食料保存のために作った乾燥野菜のチップスは、野菜嫌いのリーザさんにも好評。
なんでも、甘みがあるから食べられるらしいです。
今までの雨季はどうしていたのか聞いたら、そもそも食事は乾麺や魚で済ませていたから問題ないと返ってきました。そもそもあまりお野菜食べない方でした……。
「今日は高台に行く前に少しギルドに寄ってくるから、何か買い物があるならしてくるよ」
「んー、特に急を要するものはないはずですけど……」
「分かった」
「そういえば、今日薬の代金振り込みされる日でしたっけ」
「ああ、そういえばそうだな。一体いくらになったことやら」
「またわる~い顔して……まああれだけ頑張りましたし、値崩れしてないといいですね」
「いや、値崩れの心配はないよ。あれだけ精度が良ければ保存状態が悪くても品質はそう簡単に落ちない」
あれから特に新しい情報が入ってきていないので、昔いたあたりでどんな状況になっているのかは分かりません。
正直、もう心がチクチクするので考えたくはない気持ちもあるのですが、それ以上にお金を稼ぐチャンスかもしれないと思うとつい、思い返してしまいます。
ああ、こんな考えを持つなんて、あちらにいたら怒られてしまいそう。
でもいいんです。今の私は薬師見習い。未来の生活を豊かにするためにお金を稼ぐことは悪ではありません。
「明後日には裏の畑が乾くだろうから喉の調子を整えておいて。そこから喉を酷使するだろうから棚の」
「もういただいてあります。あの飴、ほんのり甘くておいしいですよねぇ」
リーゼさんが雨季の間に増産しておいてくれたマシュマロウの飴は、もうすでに必要分をいただいてある。
納品に行く前に手間が省けるから、必要なものはそれぞれ先に手元に確保しておくのが私たちの暗黙のルールだ。
「そういえばこの前のろうそく、一つ眠り付加されてたけどわざと?」
「え?そんなことしていないと思いますけど……」
「じゃああとで教える。よく眠れたよ」
「え、ちゃっかり使ったんですか⁉」
スープの最後のひと掬いを口に運びかけていたのが完全に止まってしまった。
「ほらほら早く食べて。早くやる事終わらせないと」
高く昇り始めた日の光が地表の水に反射してキラキラした波紋が揺れています。
空はからっと晴れて、ちぎれ雲が爽やかな青の中でいいアクセントになっていました。
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