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王妃の憂鬱①
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(王妃視点)
「ねぇ、最近ウィリアムを見かけないけれど、何か知ってる?」
私は侍女を呼び止め問いかける。
「王妃様、実は……ウィリアム様は、その……」
いつもはっきりと話すのに、珍しいわね。
言い淀む侍女にしびれを切らした。
「どうしたの? はっきりとおっしゃい!」
「はっはい! ウィリアム様は公爵邸に引き篭もっていらっしゃるそうです!」
「まさか、体調でも悪いの? 何も報告がないけれど、どうしてかしら。何か知っているのなら、教えてちょうだい」
「はっ、はい、私も、噂程度のことしか存じ上げないのですが……、実は一一」
侍女から聞いた話は衝撃だった。
なんですって? ウィリアムが女性を閉じ込めているですって?
どういうことなのかしら。
幼い頃はちょろちょろと近づいてきては、小さな目をキラキラさせて話しかけてきてたわよね。
なのに、大きくなるにつれて、素っ気なくなって……。
最近は突拍子もないことをしていて、理解に苦しんでいたけれど、ついには誘拐?軟禁?しているというの?
大丈夫かしら。はぁ……やはり、血は争えないのかしらね。
「ちょっと、お相手のご令嬢はどこの家の方? 苦情が何もきてないけれど……いいわ、私が直接ウィリアムに聞くから。今すぐ、ウィリアムを呼び出してようだい。緊急よ!」
「はい!!!」
慌てふためき退室した侍女の後姿を見送る。
「はぁ……」
アメリア、あなたの心配していた通りになってしまったわ。 ごめんなさいね。
遠い記憶が呼び起こされる。
✴︎ ✴︎ ✴︎
ウィリアムが生まれてしばらく経った頃、エドワーズ公爵邸に招かれた。
「王妃様、よく来てくださいました」
「アメリア、久しぶりね。元気だった?もう、そんな他人行儀はやめてちょうだい、私たち友達でしょう?」
「王妃様……」
「あぅ、あぅー、あぅー」
「あら?この子がウィリアムね。やっと会えたわ!はじめまして、ウィリアム、あなたのおばさまですよー、あぁ、かわいいわね、アメリア?どうしたの?」
ベビーベッドで無邪気に手足をバタバタさせて、ご機嫌のウィリアムと対照的に、アメリアの表情には陰りがさしている。
「アメリア、何か悩みがあるのなら話してくれないかしら。 本当はもっと早くに会いたかったのだけれど、アメリアは嫌だった? 何度も手紙をおくったのだけれど、いつもリチャード(国王の弟)から、断りの返事がくるのよね……。結婚式以来じゃないかしら、こうしてあなたと会話したのは」
「王妃様……はっ、馬車の音だわ、王妃様、ごめんなさい、今日はもうこれ以上話すのは無理だわ。伝令を飛ばすわ、だから、今日はもうお引き取りを、急いで!」
「アメリア?ちょっと」
アメリアから背中を押されて、文字通り部屋から押し出されると、バタンと扉が閉められる。
いったい、アメリアは何を悩んでいるのかしら。
伝令を待つことにしましょう。
王宮に戻った私は、その日の業務をこなして、早めに寝台へと入った。
うつらうつらとまどろみ始めた時に、ぼんやりとした光の玉が室内に現れて目を覚ます。
この光の玉は、アメリアの伝令ね。
光の玉を手で受け取ると、アメリアの幻影が現れた。
「王妃様、どうか、リチャードを恨まないで。 私が悪いの……全部、私が悪いの……。 私はリチャードのものなのに……
ウィリアムにつきっきりで過ごしてしまったから……
ゴホッ、ゴホッ、王妃様、ゴホッ、
ウィリアムのこと……託せるのは王妃様しかおりません。どうか、昔馴染みの最期お願いです……ウィリアムを……お願いします……決して甘やかさないで、厳しくしてほしいの……
甘やかしてしまったら、自己肯定感が高くなる。勘違いするかもしれない……全てが思い通りになると……そうしたら、第二の私みたいな……。
番なんて見つからなくてもいい、だから、どうか厳しく……ゴホッ」
「アメリア?大丈夫⁉︎ 煙が見えるけど、アメリア! 待ってて、すぐ行くから!」
光の玉がパリンと音をたてて割れるのと同時に、アメリアの幻影も消滅する。
急いで近衛兵を率いて、国王と共にエドワーズ公爵邸へと向かった。
公爵邸の一室で、倒れているアメリア達を発見した。リチャードがアメリアを抱きしめていた。
耐火の魔法をかけられているので、邸が燃えることはない。火事など起こらないはず。
けれど、密封された室内、暖炉の火が魔力を込められて不自然に燃えており、
二人は一酸化中毒で亡くなっていた。
「リチャード……やはり……」
「あなた、何か知っているの!? どうしてこんなことに! アメリア、アメリア!アメリアーーー!」
国王から聞かされたのは、リチャードの歪んだ愛情表現だろうということ。
それ以上のことはだんまりだった。
「ねぇ、最近ウィリアムを見かけないけれど、何か知ってる?」
私は侍女を呼び止め問いかける。
「王妃様、実は……ウィリアム様は、その……」
いつもはっきりと話すのに、珍しいわね。
言い淀む侍女にしびれを切らした。
「どうしたの? はっきりとおっしゃい!」
「はっはい! ウィリアム様は公爵邸に引き篭もっていらっしゃるそうです!」
「まさか、体調でも悪いの? 何も報告がないけれど、どうしてかしら。何か知っているのなら、教えてちょうだい」
「はっ、はい、私も、噂程度のことしか存じ上げないのですが……、実は一一」
侍女から聞いた話は衝撃だった。
なんですって? ウィリアムが女性を閉じ込めているですって?
どういうことなのかしら。
幼い頃はちょろちょろと近づいてきては、小さな目をキラキラさせて話しかけてきてたわよね。
なのに、大きくなるにつれて、素っ気なくなって……。
最近は突拍子もないことをしていて、理解に苦しんでいたけれど、ついには誘拐?軟禁?しているというの?
大丈夫かしら。はぁ……やはり、血は争えないのかしらね。
「ちょっと、お相手のご令嬢はどこの家の方? 苦情が何もきてないけれど……いいわ、私が直接ウィリアムに聞くから。今すぐ、ウィリアムを呼び出してようだい。緊急よ!」
「はい!!!」
慌てふためき退室した侍女の後姿を見送る。
「はぁ……」
アメリア、あなたの心配していた通りになってしまったわ。 ごめんなさいね。
遠い記憶が呼び起こされる。
✴︎ ✴︎ ✴︎
ウィリアムが生まれてしばらく経った頃、エドワーズ公爵邸に招かれた。
「王妃様、よく来てくださいました」
「アメリア、久しぶりね。元気だった?もう、そんな他人行儀はやめてちょうだい、私たち友達でしょう?」
「王妃様……」
「あぅ、あぅー、あぅー」
「あら?この子がウィリアムね。やっと会えたわ!はじめまして、ウィリアム、あなたのおばさまですよー、あぁ、かわいいわね、アメリア?どうしたの?」
ベビーベッドで無邪気に手足をバタバタさせて、ご機嫌のウィリアムと対照的に、アメリアの表情には陰りがさしている。
「アメリア、何か悩みがあるのなら話してくれないかしら。 本当はもっと早くに会いたかったのだけれど、アメリアは嫌だった? 何度も手紙をおくったのだけれど、いつもリチャード(国王の弟)から、断りの返事がくるのよね……。結婚式以来じゃないかしら、こうしてあなたと会話したのは」
「王妃様……はっ、馬車の音だわ、王妃様、ごめんなさい、今日はもうこれ以上話すのは無理だわ。伝令を飛ばすわ、だから、今日はもうお引き取りを、急いで!」
「アメリア?ちょっと」
アメリアから背中を押されて、文字通り部屋から押し出されると、バタンと扉が閉められる。
いったい、アメリアは何を悩んでいるのかしら。
伝令を待つことにしましょう。
王宮に戻った私は、その日の業務をこなして、早めに寝台へと入った。
うつらうつらとまどろみ始めた時に、ぼんやりとした光の玉が室内に現れて目を覚ます。
この光の玉は、アメリアの伝令ね。
光の玉を手で受け取ると、アメリアの幻影が現れた。
「王妃様、どうか、リチャードを恨まないで。 私が悪いの……全部、私が悪いの……。 私はリチャードのものなのに……
ウィリアムにつきっきりで過ごしてしまったから……
ゴホッ、ゴホッ、王妃様、ゴホッ、
ウィリアムのこと……託せるのは王妃様しかおりません。どうか、昔馴染みの最期お願いです……ウィリアムを……お願いします……決して甘やかさないで、厳しくしてほしいの……
甘やかしてしまったら、自己肯定感が高くなる。勘違いするかもしれない……全てが思い通りになると……そうしたら、第二の私みたいな……。
番なんて見つからなくてもいい、だから、どうか厳しく……ゴホッ」
「アメリア?大丈夫⁉︎ 煙が見えるけど、アメリア! 待ってて、すぐ行くから!」
光の玉がパリンと音をたてて割れるのと同時に、アメリアの幻影も消滅する。
急いで近衛兵を率いて、国王と共にエドワーズ公爵邸へと向かった。
公爵邸の一室で、倒れているアメリア達を発見した。リチャードがアメリアを抱きしめていた。
耐火の魔法をかけられているので、邸が燃えることはない。火事など起こらないはず。
けれど、密封された室内、暖炉の火が魔力を込められて不自然に燃えており、
二人は一酸化中毒で亡くなっていた。
「リチャード……やはり……」
「あなた、何か知っているの!? どうしてこんなことに! アメリア、アメリア!アメリアーーー!」
国王から聞かされたのは、リチャードの歪んだ愛情表現だろうということ。
それ以上のことはだんまりだった。
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