落としものを拾ったら、ヤンデレ公爵に執着されました

涙乃(るの)

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この国の貴族は、王立学園に通うことが義務づけられている。

私も去年無事に卒業した。女性は卒業と同時か、もしくは1~2年以内に結婚するのが一般的だ。

私は卒業してから、1年くらいは、色々な方と交流してみて、結婚相手を決めようと思っていた。もちろん清い交流を。

せっかくだし、独身を楽しまなきゃ。

毎日沢山の釣書が送られてきたし、お父様も私の気持ちを尊重してくれていたし。

呑気なこと言ってないで、さっさと結婚しなさい!とその時の自分に喝を入れたいわ。

あの日は、在校生への講演を頼まれて、たまたま学園に赴いていた。

無事に講演を終えて、帰る時に、大きな噴水が目にはいった。

「あら?こんな所に噴水なんてあったかしら」

艶めかしい女性の彫刻や、筋骨隆々の肉体美を鑑賞できる男性の彫刻もある。

「いや、だめでしょう……学園の近くにこんなの置いたら」

と言いつつも、ちらちらと視線が向いてしまう。

気を取られていて、人の気配に気づかなかった。

「あっ!」

誰かにぶつかった拍子によろめいた。

チャリンと何かが落ちる音が聞こえる。

地面には小袋が落ちている。無意識に拾い上げると、キョロキョロと辺りを見回す。

「あの、誰か、落とし物ですよ」


先程ぶつかった人が落としたに違いない。

彫刻に気を取られていたから、どんな人か見ていない。

困ったわ……。


手にのせた小袋はゴツゴツとした感触がする。触った感じといい、この重さといい、硬貨が入っているのは間違いない。

こんなに……。落とし主も困るでしょうに。

落とし物を届けたとしても、この袋から持ち主が分かるかしら?

もしかしたら探しに戻ってくるかもしれない。

ここに置いておく? うーん……。

どうしたものかと考えつつ、ふと目に入る彫刻。

そうだわ。この彫刻に置きましょう。

まぁ、普通の人ならじっくり見たりしないでしょ。でも、硬貨を落とした人なら必死に探しているだろうから、きっと隅々まで目を凝らすはずよ。

問題は女性像か男性像か、どちらに置くかだけど。

女性像は産まれたままの姿で、佇み、下腹部の下に片手を置いている。 手の上に小袋を引っ掛けられそうだ。

男性像も同じく産まれたままの姿。片腕を曲げて、上腕二頭筋を見せつけ、片膝を地面につけている。 小袋を置けそうな所は多々ある。

私は男性像に小袋を置くことにした。

「これで、よしっと。まぁ持ち主が取りにくるでしょう」

面倒事から解放されて、意気揚々と帰路につこうとした。


ガサッ、ガサッと葉っぱが擦れる音がする。

怖くなり、脱兎の如く駆け出した。

「ぶはっ」

後方から声が聞こえる。

怖い、怖い、なに? 笑い声?

やばい、やばい、足音が迫ってくる。



「ちょっーーっと、待って!」

「いやーーーーーーーー!」


背後から強い力で取り押さえられて、地面に転倒する。

けれど、地面に倒れる前にくるんと身体を反転させられて、目を開けると、男性の上に乗っていた。


「えー?あ、ごめんなさいっ、じゃなくて、離してください!」

男性の上から降りようとするも、かっちりとホールドされて動けない。

状況が理解できずにじたばたする私を、男性は宥めるように声をかける。

「いやぁ、驚かせてしまったね。こわがらないで」


パニックに陥りかけて、目を閉じてジタバタもがくことしかできない。

「あっ……」

くるんと身体が回転させられたかと思うと、男性にのしかかられた状態になる。

「んーー⁉︎⁉︎」


唇を奪われ、ぬるりと異物が押し入ってくる。

いや……

押しのけようとするも、力に敵わない。


なに……この感覚……

身体中が熱を帯びて、頭がぼーっとする。

もっと……。

気がつけば、自ら求めるように舌を絡ませる。

すごく気持ちいい……。

何度も何度も角度を変え、求め合った後、はっと我に返り目を開ける。

私を見下ろす黄金色の瞳。

きれい……。

まるで獲物をみつけた獣のように獰猛だけれど、不思議と怖くない。もっと自分を見て欲しくて、自分だけのものにしたくなるような、妙な感覚。
彼の瞳の中には、上気した顔の自分が映っている。私、今こんな表情をしているね。恥ずかしい。

サラサラと黒い髪が風で揺れる姿も素敵。

ん? 黄金色の瞳……

「王族の方⁉︎」

黒髪に黄金色の瞳は、王族特有の容姿だ。

どうして、こんな所に王族の方が。

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