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しおりを挟む(ウィリアム視点)
私は、エドワーズ公爵(国王の弟)家に産まれた。 国王夫妻にはまだ子供がいない為、私の王位継承権は第三位だった。
一位は空席、いずれ生まれる王太子のため、第二位は父、そして三位が私。
生まれる前から、一位が約束されていたフレデリックとは違い、私はいつも一位にはなれない存在だった。
国王は王妃を溺愛しているので、側妃はいない。そもそもこの国では王族は番と結ばれるのが常なので、側妃の概念はない。
だから、継承権の順位は、国王夫妻の子供とエドワーズ公爵家の子供によって争われる。
はずだったのだが……。
王妃が懐妊したと世間に公表された時期に、両親は不慮の事故により亡くなった。
私は王妃の手先によって、暗殺されたと思っている。
なぜなら、王妃は私がフレデリックより優秀なことが許せない、とことあるごとに面と向かって言ってくるからだ。
それだけではない。
フレデリックが生まれるまでは、私がこの国では唯一の王子だった。そのため、ありとあらゆる教育を受けた。
フレデリックが産まれたのは、私が2歳の時。その時には既に、読み書きもでき、簡単な魔法は使えていた。
「まぁ、ウィリアムは文字も読めるのね。いつか生まれる王太子に、教えてあげてね」
「もう魔法を使えるの? さすがウィリアムね、こんなに優秀なら、王太子の護衛もできるわね」
「まぁ、ウィリアムが描いたの? 素敵ね。王太子ならどんな絵を描くかしらね。楽しみね」
両親が亡くなり寂しかったこともあり、私は頻繁に王宮に出向いていた。
王妃に懐妊の兆しが見えないので、周囲は私を王宮に住まわせるべきだとの声もあった。
教えれたことはすぐに覚える。 学ぶことは楽しい。 身体を動かすことも。
何をやっても、すぐにできてしまう私。
あの頃は幼くて、家族に褒められたかった。
けれど、王妃の言葉にはいつも、王太子が含まれる。
まだ産まれてもいない王太子。
私には理解できなかった。
存在しない相手と比べられて、勝手に負かされている自分。
王妃がそんなだから、周囲も追従する。
だから、絶対に負けるものかと心に誓った。
実際フレデリックが産まれた時は、喜んだ。
これでやっと、目に見える相手と競えると。
だが、どんなに努力しても、私が認められることはないのだと痛感する。
フレデリックは私ほどではないが、優秀だ。
けれど、王位継承するためには番を見つける必要がある。
番って、どうやって見つけるんだ。
フレデリックは、頻繁に令嬢と夜会でダンスしたり、王宮に招いたり交流をして見つけようとしていた。
私は、そんな時間のかかることはしない。
なぜなら王族だけは、番を判別できる。
判別方法は千差万別。 匂いや、瞳をみたり、手で触れて分かる者もいる。 フレデリックは、まだ判別方法を見つけていないのだろう。
私は、見つけた。どうして分かるのかは上手く言えない。王族の血がそうさせるのだろう。
私は、キスで分かる。令嬢とキスをすると、何かを感じるのだ。キス魔と噂されるほど浮名を流したけれど見つからない。
いつしか馬鹿らしくなった。 そんなに国王になりたいのか、と。
大事にされてない国に、尽くす必要があるのかと。
もっと自分のために生きてみようと思った。
それなりに、何でもできるので、絵画ではなく彫刻を造ろうと思った。
人間のありのままの姿を模して、取り憑かれたように彫った。
我ながらよくできた。 ついでに魔法で水の枯れない噴水を造った。
達成感はあったものの、やはり虚しい。
誰かに見て欲しい。けれど、女性は見向きもしない。 男性には受けがいいが。
つまらない。
そのうちに、人間観察をするようになった。 例えばお金を目の前に落とす。
その時の人間の行動を見る。
キョロキョロと辺りを見回す者は、誰も見ていなかったらネコババする小心者の盗人だ。
堂々と持っていく大胆な泥棒、
騎士団へ届けに行くバカ正直な者、
周囲に声かけ自分では何も行動しない者、
まぁ、基本的に盗むか盗まないかを予想して、行動を観察していた。単なる暇つぶし
のつもりだった。
おや? 今日も誰か来た。 令嬢か。
どうせ目を逸らすだろう、とりあえず今日もやるか。
「あの、誰か落ちましたよ」
草陰に隠れて観察してみるか。
令嬢なら、騎士団へ届けるか、そのまま置いていくだろうな……⁉︎
ガン見してるのか。 何をしている?
私は令嬢が小袋を置く場所を見て吹き出した。
「ブハッ」
私の声を聞き逃げ出す令嬢。いや、淑女の格好じゃないだろう。 あんなに走る令嬢見たの初めてだし。
なにより、小袋を男性の股間に置く令嬢もいないだろう⁉︎
面白すぎ! 逃がさないよ!
「ちょーーーと待って!」
令嬢に触れた瞬間、ドクンと心臓が高鳴る。 この感覚はなんだ……
まさか……私は令嬢の唇に引き寄せられるように自分の唇を重ねた。
いい。
身体中の血管が脈打ち、下半身に熱がこもる。
この感覚は、番。
まさか、こんな風に見つけるなんてな。
もう、人間観察なんてどうでもいいな。
クラリスだけをずっと見ていたい。
予想外の行動をとる未知の生き物みたいだな。
もう、クラリスさえいたら、他はどうでもいい。
とりあえず、邸に連れて行こう。
✴︎ ✴︎ ✴︎
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