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ステージ3 フェンリル編
第55話 素敵なお目覚め
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「──あー、あー、朝の6時ですー起きてくださーい」
朝のアナウンスがラグナロクに鳴り響き、僕達の朝は始まる。僕は昨日のこともあってかいつもよりも早起きしていた。
「相変わらず……朝は眠いな……何故だろう……」
「ニーダも夜型かー」
「ウォッ……! 天汰、なぜわらわの部屋に入ってきた……!? 心臓が止まりかけたではないか……!」
今僕はニーダの部屋で勝手に椅子に座ってニーダが目を覚ますのを待っていた。何も寝起きだからってそこまで驚かなくてもいいのに。
「というか……ニーダも裸で寝るタイプなんだね」
「あのねぇ……わらわはとしてはどうなっても良いけど……怖いわよ。君の周りにいる女は」
「……? たしかにメイドは怖かったけど良い人ばっかりじゃないですか。イコさんなんて優等生って感じだし……あ、シェンも裸で寝てたんで似た者同士なんですね~」
思い出したら笑えてきたな、あの時僕と目があって幽霊と勘違いして上げたシェンの甲高い悲鳴。
「ほら……もう行きなさいよ、イコは……もう起きてるのかしらね」
「そっちはヘラルが向かってますんで、ちょっと僕と話しましょうよ」
僕は椅子から立ち上がり、大きなベッドの上で横になっているニーダのそばに近づく。
部屋の灯りは付いていないからここまで来てやっとニーダの顔が見えた。
普段の化粧が無くてもいつものニーダと顔は大して変わらないように見えるが……まだ化粧してる?
「そんなにわらわの顔が気になるのか? もっと近付いてみてもいいぞ?」
「いえ……この距離で結構です。聞きたいんですけど、べアティチュードって誰か知ってます?」
「べアティチュード……ああ、あのサーカス団のことね。この国ではかなり有名だけど……それがどうかしたの?」
ニーダは不思議そうに頭を傾げる。
じゃああのメイド達は何処で見つけたとか報告してないんかよ。ならどうやって僕達を見つけた……いや、今はどうでもいい。
まずはアレについて聞いてみるか。
「じゃあ、そこの団長は持病があるって聞いたことは?」
「さあ……聞いたことがないわね。ただ……そうね、理解できるかしら」
冗談でもない真剣な表情でそんなこと言われたって僕は理解出来るぞ。
やっぱり持病については身内以外は知らなさそうだな、話を聞いてからまた別の話をしようかな。
「とりあえず話してください」
「ギフターって知ってる? 身体の一部分を犠牲にある部分に特価している人をそう呼ぶのだけど。そっちの可能性はあり得るんじゃない?」
「ギフターの人は一人だけ知ってます。でも、団長の雰囲気というか、魔力が異常でしたよ」
「へぇ……わらわも一度会ってみたいものだ。その謎が解明出来れば君もカンストに近づくのだろう?」
ニーダは僕をからかうように笑う。たしかにユートピアランドでの当初の目標は全て達成している。しかし、どうしてもモネや団長が気掛かりなのだ。
時間が許すならこの二人について疑問を解決してから先に進みたい。
「団長の魔力からはユメちゃんのような気配を感じたんだ。女神に似た独特な魔力……ユメちゃんは女の子だから違和感は無いけど、団長はおじさんだよ!? やっぱり何かが怪しく思うんです……」
「……ところで、その剣の使い勝手はどうなのかい?」
僕の発言を無視してニーダは僕の剣を指差し話題を変えてきた。ニーダは視線を1点から動かさずじっとそれを見つめている。
「まだ使ってないですけど、付与の効果は聞きましたよ。これならすぐカンストを──って、な何握ってるんですか!?」
「こうすれば直接魔力を感じられるじゃないか……凄まじい魔力を感じるな……!」
ニーダはそれを握りながら込められた魔力を感じ取り、感情を昂ぶらせている。
「……おっと、ついつい手を出してしまった。そう言えば伝え忘れていたが、わらわは朝に弱くてね。いつもは誰かが起こしにくるのよ。そろそろ……かしら」
「え……い、嫌だ。また殴られる……」
トラウマが脳裏をよぎる。早く、この部屋から出ていかないと……。
「待ちなさい。今出たらどうせ彼女達と鉢合わせるわよ。だったら……この中に隠れてやり過ごした方がいいわ」
ポンポンとベッドを叩いてニーダは僕を引き留めようとしてくる。ベッドのサイズはキングサイズより一回りも大きいから僕とこの剣の身を隠すことは出来るけど、そっちの方がバレた時に大変ではないだろうか……?
だが、鉢合わせしただけであのヤツから攻撃をされる可能性がある以上は、そもそも遭遇しない方が遥かにマシだ。
「くっ……殴られるよりかはマシだ……お願いします。毛布の中に隠れさせてください」
「ふふっ、いい子ね。ちなみにわらわは下も履いてないわよ」
「はぁ……そうですか」
「ムッツリね、変態君」
まずい……こんなやり取りをしている間に集団の足音が聞こえ始めた。早く隠れないと見つかる……!
急いでニーダが入っている毛布の中に滑り込む。予想通り剣も僕もどこもはみ出さずにすっぽり入った。
毛布も季節に合わない大きく厚みがあったから僕が中にいても外からは気付かれないだろう。
「あ、動いたら声でちゃうかも……」
「か、勘弁して……」
こうして地獄のかくれんぼが始まった……。
朝のアナウンスがラグナロクに鳴り響き、僕達の朝は始まる。僕は昨日のこともあってかいつもよりも早起きしていた。
「相変わらず……朝は眠いな……何故だろう……」
「ニーダも夜型かー」
「ウォッ……! 天汰、なぜわらわの部屋に入ってきた……!? 心臓が止まりかけたではないか……!」
今僕はニーダの部屋で勝手に椅子に座ってニーダが目を覚ますのを待っていた。何も寝起きだからってそこまで驚かなくてもいいのに。
「というか……ニーダも裸で寝るタイプなんだね」
「あのねぇ……わらわはとしてはどうなっても良いけど……怖いわよ。君の周りにいる女は」
「……? たしかにメイドは怖かったけど良い人ばっかりじゃないですか。イコさんなんて優等生って感じだし……あ、シェンも裸で寝てたんで似た者同士なんですね~」
思い出したら笑えてきたな、あの時僕と目があって幽霊と勘違いして上げたシェンの甲高い悲鳴。
「ほら……もう行きなさいよ、イコは……もう起きてるのかしらね」
「そっちはヘラルが向かってますんで、ちょっと僕と話しましょうよ」
僕は椅子から立ち上がり、大きなベッドの上で横になっているニーダのそばに近づく。
部屋の灯りは付いていないからここまで来てやっとニーダの顔が見えた。
普段の化粧が無くてもいつものニーダと顔は大して変わらないように見えるが……まだ化粧してる?
「そんなにわらわの顔が気になるのか? もっと近付いてみてもいいぞ?」
「いえ……この距離で結構です。聞きたいんですけど、べアティチュードって誰か知ってます?」
「べアティチュード……ああ、あのサーカス団のことね。この国ではかなり有名だけど……それがどうかしたの?」
ニーダは不思議そうに頭を傾げる。
じゃああのメイド達は何処で見つけたとか報告してないんかよ。ならどうやって僕達を見つけた……いや、今はどうでもいい。
まずはアレについて聞いてみるか。
「じゃあ、そこの団長は持病があるって聞いたことは?」
「さあ……聞いたことがないわね。ただ……そうね、理解できるかしら」
冗談でもない真剣な表情でそんなこと言われたって僕は理解出来るぞ。
やっぱり持病については身内以外は知らなさそうだな、話を聞いてからまた別の話をしようかな。
「とりあえず話してください」
「ギフターって知ってる? 身体の一部分を犠牲にある部分に特価している人をそう呼ぶのだけど。そっちの可能性はあり得るんじゃない?」
「ギフターの人は一人だけ知ってます。でも、団長の雰囲気というか、魔力が異常でしたよ」
「へぇ……わらわも一度会ってみたいものだ。その謎が解明出来れば君もカンストに近づくのだろう?」
ニーダは僕をからかうように笑う。たしかにユートピアランドでの当初の目標は全て達成している。しかし、どうしてもモネや団長が気掛かりなのだ。
時間が許すならこの二人について疑問を解決してから先に進みたい。
「団長の魔力からはユメちゃんのような気配を感じたんだ。女神に似た独特な魔力……ユメちゃんは女の子だから違和感は無いけど、団長はおじさんだよ!? やっぱり何かが怪しく思うんです……」
「……ところで、その剣の使い勝手はどうなのかい?」
僕の発言を無視してニーダは僕の剣を指差し話題を変えてきた。ニーダは視線を1点から動かさずじっとそれを見つめている。
「まだ使ってないですけど、付与の効果は聞きましたよ。これならすぐカンストを──って、な何握ってるんですか!?」
「こうすれば直接魔力を感じられるじゃないか……凄まじい魔力を感じるな……!」
ニーダはそれを握りながら込められた魔力を感じ取り、感情を昂ぶらせている。
「……おっと、ついつい手を出してしまった。そう言えば伝え忘れていたが、わらわは朝に弱くてね。いつもは誰かが起こしにくるのよ。そろそろ……かしら」
「え……い、嫌だ。また殴られる……」
トラウマが脳裏をよぎる。早く、この部屋から出ていかないと……。
「待ちなさい。今出たらどうせ彼女達と鉢合わせるわよ。だったら……この中に隠れてやり過ごした方がいいわ」
ポンポンとベッドを叩いてニーダは僕を引き留めようとしてくる。ベッドのサイズはキングサイズより一回りも大きいから僕とこの剣の身を隠すことは出来るけど、そっちの方がバレた時に大変ではないだろうか……?
だが、鉢合わせしただけであのヤツから攻撃をされる可能性がある以上は、そもそも遭遇しない方が遥かにマシだ。
「くっ……殴られるよりかはマシだ……お願いします。毛布の中に隠れさせてください」
「ふふっ、いい子ね。ちなみにわらわは下も履いてないわよ」
「はぁ……そうですか」
「ムッツリね、変態君」
まずい……こんなやり取りをしている間に集団の足音が聞こえ始めた。早く隠れないと見つかる……!
急いでニーダが入っている毛布の中に滑り込む。予想通り剣も僕もどこもはみ出さずにすっぽり入った。
毛布も季節に合わない大きく厚みがあったから僕が中にいても外からは気付かれないだろう。
「あ、動いたら声でちゃうかも……」
「か、勘弁して……」
こうして地獄のかくれんぼが始まった……。
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