堕天使様との恋は前途多難です!〜この恋は筋書きにありません!〜

明夏 向日葵

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女神の微笑み

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暖かな光に包まれ、スカーレットは目を閉じていた。
柔らかな温もりに身を委ねていると、不意に――目の前に一枚の扉が現れた。

重厚な扉。けれど、その隙間からは確かに聞こえる。
切実な、懐かしい声が。

「……スカーレット!」

胸を震わせるその呼び声に、彼女の心臓が大きく跳ねた。

――私を呼んでいる。
ラファエル様が。

「……私はここよ、ラファエル様。
今、貴方の元へ行きますわ」

涙で霞む視界のまま、スカーレットは両手で扉を押し開けた。
途端に、まばゆい光が溢れ、彼女の全身を包み込む。
思わず瞼を閉じ、光に身を委ねる――。

ゆっくりと重く閉ざされていた瞼が、微かに動いた。
そして、静かに開かれていく。

「……ここは……?」

目に飛び込んできたのは、見慣れた天井と、揺れるシャンデリアの光。
そうだ――ここは魔王城。

意識がはっきりし始めたその時、横へ視線を向ける。
そこには、紅い瞳を潤ませたラファエルの姿。
彼と視線が合った瞬間、胸が熱くなる。

「……ラファエル様。ご無事で……何よりです」

掠れる声でそう告げると、彼は堪えきれないように彼女の名を呼んだ。

「スカーレット……! 良かった。本当に良かった……!
目を覚ましてくれて……。俺は……このままお前が戻らないんじゃないかと……怖かったんだ。
お前と共に死ぬことさえ……考えた」

「そ、そんな物騒なこと……おやめくださいませ」

弱々しくも、スカーレットは苦笑した。
しかしラファエルは、真剣な瞳で彼女を見つめる。

「それぐらい……お前を愛しているということだ」

「……愛している……? 本当に……私を?」

問い返す声は震えていた。
けれど、彼の答えは迷いのないものだった。

「ああ。愛しているよ。
素直になれない、この口だから……ずっと言えずにいたが。
俺は……お前を心から、愛している」

スカーレットの瞳から、静かに涙がこぼれる。

「……私も……。私も愛していますわ……」

握られた手が、互いの体温を確かめ合うように強く結ばれる。

ふとラファエルが苦々しげに顔を歪めた。

「……離縁状のことだが、あれは俺が操られていて無理やり書いたものだ。
あんなものは無効だ。俺のそばにいて欲しいのは……お前だけだ」

「……よかった……」
安堵の涙が、スカーレットの頬をつたう。

「私も……ずっと……貴方のそばにいたいと思っていたのです」

互いに失いかけた想いを確かめ合い、二人の心は再び強く結びついていった。
***

二人の再会に涙し、互いの想いを確かめ合う姿を見届けて――
ジルベールとサムは、そっと足音を忍ばせて部屋を後にした。

「……ジルベール様。スカーレット嬢の体調の確認をせずによろしいのですか?」
控えめに問いかけるサムに、ジルベールはふっと目を細める。

「良い。今は二人きりにしてやろう」

「……ですが」
サムはわずかにためらいを見せたが、すぐに頷いた。

「本当に……愛の力とは偉大ですね。
瀕死状態で助かる見込みが低かったスカーレット嬢が……再び目を覚ますとは」

ジルベールは歩みを止め、月明かりの差し込む窓を見上げる。

「――あれは、二人の愛。そしてラファエルの祈りが、セレフィーネ様を呼んだのかもしれんな」

「セレフィーネ様……?」

「そうだ。ルナリアの力だけでは、スカーレットが助かる見込みは無かった。
だが……助かったということは、ノクシアの力が与えられたということ。
そのノクシアを授けられるのは、この世界でただ一人……初代聖女、セレフィーネ様だけだ」

サムは驚愕に目を見開き、深く頷いた。

「……なるほど。ならば、あの奇跡も頷けます」

「奇跡ではない。あれは“愛”だ」
ジルベールは静かに言い切る。

その頃、魔王城の上空には、まるで二人の愛を見守るかのように――
大きく、澄んだ満月が煌々と輝いていた。
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