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決戦前夜
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翌日に迫った囮作戦。その内容は、王の前でラファエルが自らの口で「スカーレットこそ真の聖女」と宣言し、さらに自らの過去を曝け出すという、まさしく命懸けの策だった。
月が冴え冴えと輝くセレスタイン城のバルコニーに立ち、スカーレットはその月を見上げていた。
(……本当に、うまくいくのかしら。もし王の逆鱗に触れてしまったら……ラファエル様が、処刑されることになったら……)
胸の奥にじわじわと広がっていく不安に押し潰されそうになり、両手を胸に当ててスカーレットは息を詰めた。その背を、ふいに温かな腕が包み込む。
「――っ、ラファエル様?」
驚いて振り返ると、そこには濡れた黒髪をわずかに揺らしながら立つラファエルの姿があった。彼の体からは湯上がりの清らかな花の香りが漂ってくる。
「ああ。お風呂どうぞと声をかけようと思ったら……お前がひどく怯えているように見えてな」
「……ご覧になっていましたの?」
「見てしまった。明日の作戦が不安か?」
問いかけられると、もう隠せなかった。
「ええ……。だってもしあなたに何かあったら、私はどうしたら……」
掠れるような声に、ラファエルはそっと頬を寄せ、低く穏やかに言う。
「心配するな。父上はそんなに短気じゃない。強面の顔のせいで誤解されがちだが、呪いの子として生まれた俺を殺さずに育ててくれた人だ。母様と暮らす権利も与えてくれた。それだけで、俺はあの人に感謝している。廃太子となった今でも、父上を父として尊敬している。……だからこそ、父上を殺す企みは絶対に許さない」
その言葉に、スカーレットの胸に張り詰めていたものが少しずつ和らいでいく。
「そうね……。私、いつまでもクヨクヨしてちゃダメよね。いつもの私みたいに、強気でいなきゃ」
「だが、あまり無理をするな。俺の前では、弱気なお前を見せてもいい。どんなお前でも、俺は好きだ」
まっすぐな眼差しに胸が熱くなる。けれど同時に、彼の不安が滲むような言葉も続いた。
「むしろ俺は、お前が再びマリアに狙われるんじゃないかと心配している」
「流石にそれはないのでは?」
「はぁ……お前は本当に相手への危機感が薄すぎる。セシルだって、お前を諦めていないかもしれない」
「いえ、それは絶対にないですわ!」
力強く否定した途端、ラファエルは不意に彼女の鎖骨へ顔を埋める。次の瞬間――
「っ……!」
小さな痛みが走る。そこには鮮やかな跡が残されていた。
「ラ、ラファエル様!? こんなところにつけたら、明日のドレスを着たら見えてしまいますわ……!」
「見せつけておけ。そのために付けた。お前は俺の女だと、周囲に認識させるんだ」
「そ、そういうことではなくてですね!」
狼狽するスカーレットに、ラファエルは少し悪戯っぽく笑みを浮かべる。
「なんなら俺にもつけるか?」
「ど、どうしてそうなるのです……」
「いや……付けてくれたら嬉しいなと思っただけだ」
「う、嬉しいのですか?」
「ああ。それはもちろん」
彼の真剣な眼差しに押され、スカーレットは顔を真っ赤にしながら首元に顔を埋め――
「……っ」
小さな音を立てて、彼の肌に唇を触れさせた。そこには確かな証が残る。
「……! お風呂に行ってきますわっ!!」
顔を真っ赤にしたまま逃げるように去っていくスカーレット。
残されたラファエルは、彼女が残した印を指で撫でながら、どこか誇らしげに微笑んでいた。
「……これでいい」
翌日に迫る決戦。
互いの不安を抱きながらも、二人は確かな絆で結ばれていた。
月が冴え冴えと輝くセレスタイン城のバルコニーに立ち、スカーレットはその月を見上げていた。
(……本当に、うまくいくのかしら。もし王の逆鱗に触れてしまったら……ラファエル様が、処刑されることになったら……)
胸の奥にじわじわと広がっていく不安に押し潰されそうになり、両手を胸に当ててスカーレットは息を詰めた。その背を、ふいに温かな腕が包み込む。
「――っ、ラファエル様?」
驚いて振り返ると、そこには濡れた黒髪をわずかに揺らしながら立つラファエルの姿があった。彼の体からは湯上がりの清らかな花の香りが漂ってくる。
「ああ。お風呂どうぞと声をかけようと思ったら……お前がひどく怯えているように見えてな」
「……ご覧になっていましたの?」
「見てしまった。明日の作戦が不安か?」
問いかけられると、もう隠せなかった。
「ええ……。だってもしあなたに何かあったら、私はどうしたら……」
掠れるような声に、ラファエルはそっと頬を寄せ、低く穏やかに言う。
「心配するな。父上はそんなに短気じゃない。強面の顔のせいで誤解されがちだが、呪いの子として生まれた俺を殺さずに育ててくれた人だ。母様と暮らす権利も与えてくれた。それだけで、俺はあの人に感謝している。廃太子となった今でも、父上を父として尊敬している。……だからこそ、父上を殺す企みは絶対に許さない」
その言葉に、スカーレットの胸に張り詰めていたものが少しずつ和らいでいく。
「そうね……。私、いつまでもクヨクヨしてちゃダメよね。いつもの私みたいに、強気でいなきゃ」
「だが、あまり無理をするな。俺の前では、弱気なお前を見せてもいい。どんなお前でも、俺は好きだ」
まっすぐな眼差しに胸が熱くなる。けれど同時に、彼の不安が滲むような言葉も続いた。
「むしろ俺は、お前が再びマリアに狙われるんじゃないかと心配している」
「流石にそれはないのでは?」
「はぁ……お前は本当に相手への危機感が薄すぎる。セシルだって、お前を諦めていないかもしれない」
「いえ、それは絶対にないですわ!」
力強く否定した途端、ラファエルは不意に彼女の鎖骨へ顔を埋める。次の瞬間――
「っ……!」
小さな痛みが走る。そこには鮮やかな跡が残されていた。
「ラ、ラファエル様!? こんなところにつけたら、明日のドレスを着たら見えてしまいますわ……!」
「見せつけておけ。そのために付けた。お前は俺の女だと、周囲に認識させるんだ」
「そ、そういうことではなくてですね!」
狼狽するスカーレットに、ラファエルは少し悪戯っぽく笑みを浮かべる。
「なんなら俺にもつけるか?」
「ど、どうしてそうなるのです……」
「いや……付けてくれたら嬉しいなと思っただけだ」
「う、嬉しいのですか?」
「ああ。それはもちろん」
彼の真剣な眼差しに押され、スカーレットは顔を真っ赤にしながら首元に顔を埋め――
「……っ」
小さな音を立てて、彼の肌に唇を触れさせた。そこには確かな証が残る。
「……! お風呂に行ってきますわっ!!」
顔を真っ赤にしたまま逃げるように去っていくスカーレット。
残されたラファエルは、彼女が残した印を指で撫でながら、どこか誇らしげに微笑んでいた。
「……これでいい」
翌日に迫る決戦。
互いの不安を抱きながらも、二人は確かな絆で結ばれていた。
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