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サバゲーに行こう!

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 ふあ、と小さいあくびをかみ殺して、音羽はまだ眠たい目をこすった。

 時刻はまだ早朝六時。日はずいぶん長くなったので、空は明るい。

 尋に言われたとおり待っているが、どうにも誰も来ない。

「センパイたち、まだかなぁ……?」

 きょろきょろ周囲を見渡してみるが、まだ誰も来ていない。

 若干喉が乾いた気がする。一度コンビニの中に入って、何か買って来ようかとも思ったが、そうしている内に来たら嫌な感じ。結局その場とどまる。

 なにもする事がなく、とりあえず視線をもう一度左右に振ってみると、車が一台駐車所運入ってきた。車高上げの改造をされ、大きなタイヤを穿いた黒のSUVだ。その車の窓が開いた。

「おとチャン!? I'm sorry. お待たせネー!」

 開いた窓から上半身を飛び出させて、尋は手を大きく振ってきた。

「雨前センパイ?」

 車が止まると同時に、尋は窓から飛び出して音羽の元へ走ってきた。

「ホントにsorryネー。ちょっと寝坊しチャッタヨーー」

 音羽の前で両手を合わせて頭を下げる。それに慌てたのは、下げられた方だ。

「わ、わたしが早くつきすぎただけですから! それより、今の、危ないです!」

 着地音が驚くほど小さかったので、きっと尋常じゃないほど強靱な足腰をしているに違いない。怪我はしないだろうが、問題は急にほかの車が入ってくるかもしれない事。そっちが危ない。

 すると尋は顔を上げると、両手を突き出して、音羽に抱きついてきた。

「おとちゃんはホントに優しいネー。I love you!」

「ちょっ!? やめてください!」

 もがいて抵抗しようとしたその時、突然ごつんという堅い音がして、尋の動きが止まった。

「何をしてるんだ馬鹿者」

 低い男性の声と共に、尋が引きはがされる。

「とっても痛いよヨー! Daddy!」

 ぺたんと地面に座り込んだ尋が、頭を押さえて叫んだ。

「嫌がってる人に、無理強いして抱きつくな」

 恫喝のような響きを持つのに、尋と同じように小さな声。

 平均よりも背の小さい音羽からすると、見上げてもなお高い位置にある気がする顔。体もがっちりしていて、筋骨たくましい。音羽のイメージする軍人像と合致する。

 どうやら尋の父らしい男性。いったい何時現れたのか、音羽にもわからない。

「だってー」

「だってじゃない」

 怒られて、しゅんとなった尋をさしおいて、彼女の父がずいと前に出てきた。

「こんにちは、いつもうちのバカ娘からお話聞いているよ。騒々しい娘だけど、つき合ってくれてくれてるんだって? ありがとう」

 厳めしい顔つきをしているが、にっこりと人好きのする笑みを浮かべて、右手を差し出してきた。自然とその手を握り返した。手のひらには金属片でも張り付いているのかと思うような、硬いタコがいくつかあった。

「い、いいえ! いつもお世話になってばかりです!」

 それに朗らかに微笑んで、軽く握り離した。

「そう言ってもらえるとうれしいよ。今日は楽しもう。悪いが、このバカの面倒を見てやってくれ」

「は、はい」

 そして踵を返して、尋が飛び出してきた車に乗った。尋以上に音が立たない上に、ひとつひとつの動作が流れるようでちゃんとコマが出来ている。一体何者だろうか。

「イこー」

 妙にむくれっ面の尋が、音羽の手を引いて、車の後部席に乗る。五人乗りのSUVで、運転席の後ろは鞄が置かれている。
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