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第Ⅰ章 私は悪役令嬢
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「申し訳ありません、もう一度仰っていただけませんか。」
「だからアリシアと王家の庭園を案内する約束をした為、今度のお茶会はなしにしてくれ」
月に一度、私とエーメント殿下は二人だけでお茶会をする。
殿下は公務で、私は王妃教育で忙しくなかなか二人だけの時間がとれない為だ。
金色の髪に翡翠の瞳。優しげな顔立ちをしており、令嬢たちから理想の王子様と騒がられている彼はせっかくのお茶会だというのにとても不機嫌な顔で入ってきたかと思うと開口一番に婚約者である私よりも妹を優先したいと言ってきた。
先日、イスファーンには心配事など何もないと言ったけど私の心は不安でいっぱいだった。
「他の日にすることはできませんか?何もお茶会の日でなくとも」
「お前には私がそんなに暇に見えるのか?」
「いえ、決してそういう意味で言ったわけでは。お忙しいようでしたら従者に」
「私が案内をすると約束したのだ。お前はアリシアの姉だろう。それくらい譲ってやったらどうなんだ?」
月に一回の逢瀬
それを優先して欲しいということはわがままになるのだろうか。
「はい。申し訳ありません」
その後のお茶会は気まずいまま終了した。
私の対応がまずかったのだろう。
終始、エーメント殿下は不機嫌だった。
◇◇◇
「……疲れた」
殿下が帰った後、自室に戻るとどっと疲れが押し寄せてきた。
だけど休んでいる暇などない。
エーメント殿下の婚約者として恥ずかしくない学を身につけなければならないのだ。
私に休みはない。安らぎも。だからこそ殿下と過ごす月に一度のお茶会は私の大切なひと時だったのだ。
だけど殿下にとってはそうではなかった。
自分にとって価値のあることでも他の人にとってはさほど価値がないものだったなんて珍しいことではない。
親兄弟ですら物事の優先順位や評価に食い違いがあるのだから他人の殿下となら余計にそうだろう。
落ち込むことなんて何もないわ。
悲しむ必要もない。
来月、会えないだけ。
翌月になればまた会える。
私はエーメント殿下の婚約者なんだから大丈夫。
彼の隣に立って恥ずかしくないように頑張ろう。
私は目の前に山盛りに積まれた課題に集中することにした。
これを頑張ったところで母は「当然だ。寧ろ足りないくらいだ」と言うたろう。
父は関心すら示してはくださらないだろう。
別にいい。
両親の為にやっているわけではない。私は自分の為にやっているのだから。
努力は必ず報われるのだと愚かな私は信じて疑わなかった。
「だからアリシアと王家の庭園を案内する約束をした為、今度のお茶会はなしにしてくれ」
月に一度、私とエーメント殿下は二人だけでお茶会をする。
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金色の髪に翡翠の瞳。優しげな顔立ちをしており、令嬢たちから理想の王子様と騒がられている彼はせっかくのお茶会だというのにとても不機嫌な顔で入ってきたかと思うと開口一番に婚約者である私よりも妹を優先したいと言ってきた。
先日、イスファーンには心配事など何もないと言ったけど私の心は不安でいっぱいだった。
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「いえ、決してそういう意味で言ったわけでは。お忙しいようでしたら従者に」
「私が案内をすると約束したのだ。お前はアリシアの姉だろう。それくらい譲ってやったらどうなんだ?」
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「はい。申し訳ありません」
その後のお茶会は気まずいまま終了した。
私の対応がまずかったのだろう。
終始、エーメント殿下は不機嫌だった。
◇◇◇
「……疲れた」
殿下が帰った後、自室に戻るとどっと疲れが押し寄せてきた。
だけど休んでいる暇などない。
エーメント殿下の婚約者として恥ずかしくない学を身につけなければならないのだ。
私に休みはない。安らぎも。だからこそ殿下と過ごす月に一度のお茶会は私の大切なひと時だったのだ。
だけど殿下にとってはそうではなかった。
自分にとって価値のあることでも他の人にとってはさほど価値がないものだったなんて珍しいことではない。
親兄弟ですら物事の優先順位や評価に食い違いがあるのだから他人の殿下となら余計にそうだろう。
落ち込むことなんて何もないわ。
悲しむ必要もない。
来月、会えないだけ。
翌月になればまた会える。
私はエーメント殿下の婚約者なんだから大丈夫。
彼の隣に立って恥ずかしくないように頑張ろう。
私は目の前に山盛りに積まれた課題に集中することにした。
これを頑張ったところで母は「当然だ。寧ろ足りないくらいだ」と言うたろう。
父は関心すら示してはくださらないだろう。
別にいい。
両親の為にやっているわけではない。私は自分の為にやっているのだから。
努力は必ず報われるのだと愚かな私は信じて疑わなかった。
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