姫君殺しの騎士様

淡雪 理依奈

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なぞのうらないし

名前も知らない名もない関係

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身近な人に愛されているのに気づけないぐらい
没頭して逃げる様に努力に走るのはどうなのだろうか。

でも、正解なんてないのだから。

人によく見られたいと思って生きても。
自分の好きなように生きても。

結局後悔するのかもしれない。

『もっとわがままを言えばよかった』
『もっと人を大切にするべきだった』

結局、後悔してしまうならせめてマシな方を選びたいものなのだが。

『お前は、どうなんだ?ここまで生きてきて後悔とかないのか?』

映像の流れるそこにふっと触れて見る。

〝こんな事になるならどうすれば良かったの?〟


…『声?』

いきなり響いた声にびっくりして水面から手を離す。辺りを見渡しながら聞き耳を立てる…

『何も、聞こえない…って事は』

またぺたっと手をつけて見る。

〝本当は分かってた…、どっかでどっちも大切にするなんて無理な事。〟

彼女の高くてどこか聞き心地のいい声が体に入っていく。
〝ねぇ、リリィ…なんで死んじゃうの?〟

〝寂しいよ、リリィ。嫌だ死んじゃやだよ。〟

ただをこねる子供のような泣きじゃくる声。
現状がうまく把握出来ていない中映像は移り変わる。
多分、何か見せてくれるのだろう。


「髪…長くなってきましたね。」

白いレースのカーテンから夕陽の色が透けてオレンジ色に染まる。

そんな中、私はリリィ髪をといてもらっている。

「そう、だね。バッサリ切った方が良いかな。」

髪をくるくると指に通しながら思う。
名前も知らぬ関係に、友情や信頼はあるのだろうが。
なぜかと言うと、
彼女の本当の名前はリリィではない。
軍人何かを番号で呼ぶしきたりの様に王国の中で名前をつけるのだ

数字ではないのは、味気無いからという一方的に押し付けがましい理由だ。

騎士になった時に
アリスの為に、汚れ仕事をおうそんな意気込みで入ったのだが…
私についたメイド、リリィの事もあり
その他にも、メイドの地位向上。
そんなことも考えている。

だって、私が生まれる前から決まっていたのだから。
16年間ずっと過ごしてきたのだ
本名ぐらい知りたいものである、彼女のリリィの本当の名前。

「イリス様、聞いてます?髪を切っるのは勿体無いです!」

伸ばしましょーよ!とリリィが珍しくはしゃいでるのに驚きながら、
「じゃあ、切ろうかな。」

いつもなら、何でですか!と余計にまくし立ててくるが、
リリィから返事は帰ってこない。

「リリ」
言いかけている途中で後ろにいた彼女がいきなり私に抱きつく形で私が乗っている椅子とともに前に倒れる。

頭を少しぶつけて、びっくりしてリリィを見る。

ほのかにお腹が暖かい。

「リリィ?」

息が少し荒く、返事の声も耳元で大きく聞こえた。

「イリス様、今からゆうこと、守ってください。
目を、つぶってください。
何があっても目を、開けていけません。」

理由を聞こうと思った、でも、その声剣幕がどうしても響いて。

「分かった。」

そういった時のリリィの安心しきった顔とその後聞こえる銃声の音。

約束を守ったのリリィの最初で最後のお願いだからか。

それとも、死ぬのが怖かったからか。

終わった今でもその答えは分からずじまいだった。
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