追放されてから数年間ダンジョンに篭り続けた結果、俺は死んだことになっていたので、あいつを後悔させてやることにした

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いざ、コロシアムへ

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「……憂鬱だな……」

 王宮でアウタートさんと話し合いをしてから三日が経ち、今日はついに決闘の日……それなのに、俺は少し憂鬱な気分になっていた。
 というのも、やはり刀は完成せず、武器は慣れない細剣だからだ。
 それに加えて相手は気性が荒く、何をしでかすかわからないドウグラス。
 おまけに細剣を使ったのはドウグラスと出会ってしまったあの日が最後。
 この三日間は”クエスト泥棒”としての疑いがかけられていたせいで、クエストを受注することもできなかったのだ。

「それにレイカさんもいないし、味方はゼロか……」

 俺の今の立場は本当に良くない。
 ドウグラスが根も歯もない噂を広めたせいで、今俺が頼りにできる人物はレイカさんとユルメルだけだ。

 その頼みの綱の一人、レイカさんは「もう行く」とだけ言ってアノールドから旅立ってしまったし、ユルメルはおそらくあれから工房に篭りっきりだ。
 ユルメルには「刀が完成するまで中に入らないで!」と言われたので工房の中には入っていないが、一応工房の入り口の扉の前にコロシアムで決闘がある旨が記された紙は置いておいたので、もしかしたら……いや、無駄な期待はやめておこう。
 そんなものに興味なんてないだろうしな。

「……っと、着いたか」

 俺は足裏の感触が柔らかい草原から硬い石になることで、いつの間にかコロシアムに到着していたことに気がついた。

「相変わらずの大きさだな」

 目の前に聳え立つは石造りの巨大な円形のコロシアムだ。
 グーっと首を上にそらして左右に動かさないと全貌を見渡すことは難しいほどのサイズ感だ。
 大きさもさることながら、驚くべきはこれが自然発生したということだろう。
 まあ、ダンジョンは謎に包まれているので不思議ではない。

「……いくか」

 中からは巨大な歓声と興奮したような叫び声が聞こえてくるので、おそらく既に観衆は集まっているのだろう。

 俺はコロシアムへと続く、巨大な入り口に足を踏み入れた……が、ここで嫌な予感を感じ取ったため、軽くを目閉じて気配を探った。

 これは何か邪悪な……? だが、少し弱い……わからない……何の気配だ?
 人があまりにも多いせいか、流石に深く探ることは難しいな。
 
「気のせいか……」

 俺の考えすぎだろう。
 警戒心を募らせるあまり、有る事無い事深く考えすぎてしまっているだけだな。

 俺はそれに関しては頭の片隅にそっとしまっておくことにして、再び止まっていた足を動かしてコロシアムに入って行った。

 何も起きなければいいんだがな……。






「……」

 俺は辺りの気配を探りながら慎重にコロシアムの内部へ侵入していく。普通は案内が用意されていてもおかしくないんだがな……それほど信用がないのだろう。

 そんなことを考えながらコロシアム内の階段を上下し、広い通路を抜け、光が差し込む曲がり角に差し掛かったその時だった。
 俺はその角から二つの気配を感じ取ったので、バレないように静かに近寄ると、そこからどこかで聞き覚えのある声が聞こえてきた。

「お前は今日の決闘、どっちに賭けたんだ?」

「聞いて驚け、俺は無名のゲイルのほうだ! オッズは軽く百倍を超えているから当たったらボロ儲けだぜ?」

「かーーーっ! お前もかよ! 俺もほとんどの稼ぎをそいつに賭けたよ。いくらドウグラスが強いとはいえ、そいつもCランク冒険者だろ? まさかの展開になる可能性もあるかと思ってな」

 目で確認することはできていないが、俺はその声の正体がすぐにわかった。
 この二人はいつぞやの二人組の男だ。確か温泉とギルド前で見かけた気がするな。

「そうだな。っていうかよ、ドウグラスってあんな性格のやつだったか?」

 俺の記憶通りだと、この耳に響くような甲高い声は小柄な男の方だろう。

「あんなもんだろ? Aランク冒険者がアノールドにいない限り、実質あいつがナンバーワン冒険者だしな」
 
 そして甲高い声で話す小柄な男と真逆の野太い声で話すのは大柄な男の方だろう。
 見た目も声も真逆だが、どこか相性は良さそうなデコボコ二人組だな。

「確かにそうだけどよ。ここ最近のあいつは俺らの店に来た時も横柄だしよ、なんか上手く言えないけど野心というか……変な言動が増えたというかな。言葉にできないけどなんか違うんだよなぁー」

 ドウグラスは元からあんな性格じゃなかったのか?
 俺は最近初めてドウグラスのことを知ったからわからなかったが、この二人はもしかすると結構ドウグラスについて詳しいのかもしれないな。
 もう少しだけ盗み聞きさせてもらおうか。

「あぁ、どうせ強さに飢えてるんだろ? 他の冒険者も言ってたぜ? あいつはBランクになった時から変わっちまったってな」

「そんな単純なものなのかね……」

 小柄な男はいまいち納得いかないようだ。

「ってかよぉ、決闘の開始ギリギリになって、俺のことをこんなとこに連れてきたと思ったらそんな話かよ」

「仕方ねぇだろ? ギルドが主体の賭け事の話をあまり公にするもんじゃねえだろ?」

「それはそうだが、俺たちはゲイルって男が勝てばそれでいいんだから、あまり深く考えるなよ?」

「……まっ、そうか……っといけね、そろそろ戻らないと始まっちまうな。ドウグラスはもうリングにいたし、そろそろゲイルが来てるんじゃないか?」

 残念ながら俺はまだまだ辿り着けそうもない。

「それもそうか」

 大柄な男が適当に返事をすると、次第に二人の楽しげな話し声は遠くなって行った。
 どうやらもう既にドウグラスは中にいるみたいだし、俺も急いで行かないとな。

「……というか、どこがコロシアムの入り口なんだ……?」

 二人が入って行ったのはおそらく観客席の方だろう。
 コロシアムがどういう構造になっているのかは不明だが、小柄な男が言っていた”リング”とやらへ向かうには、それとは別の道を通る必要がありそうだな。
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