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42.魔王としての力
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装備を物色し始めてから、ああでもない、こうでもないとワイワイしながら自分に合ったものを確認していく。
「ロイ、私は剣でいこうと思うわ。防具はどんなのがいいと思う?」
「剣はさっきの細身の剣か? なら防具はこういう軽くて丈夫なやつがいいな。フィーシアは力押しじゃなくてスピードで戦う方が良さそうだ」
「うんうん。蓮《れん》式がそんな感じだっけ?」
「だな。だけど折角だし、魔法も覚えた方がいい」
フィーシアが装備についてロイを頼っていた。
彼女は近接でやると言いだしたので、先ほど持ち出した剣に合う装備を選んでいた。技を教えるのも依頼の内だからとその辺りも考慮しての選定だ。
「今日は僕は魔法でいこうっと」
「わたしも魔法がいいですねえ。本ばかり読んでいると体力が落ちるんですよ。歳は取りたくないです」
「いや、部長は私より少し上なだけでしょ……私はロイと一緒で両方使えるけど、魔法の方が得意だから聞いてね」
「うん、ありがとう。でもロイ君みたいに剣士の装備って分かりやすいけど、魔法使いの装備ってどれも同じに見えるんだよね」
ミトラとバスレーが魔法を使うことに決めて、そちらはロイと同じくギルドに出入りリアムが面倒を見ることにした。
そこでミトラが装備は見ただけで分かりにくいと口にする。
先ほどのスワンローブのような装備もあるが、あれはたまたまバスレーが知っていただけで見た目で判断する材料が無いためだ。
「そうね……ミトラ君は火属性が強いからこのロッドか……あら、いいのあるじゃない」
「……! 嬢ちゃん、わかるのかい」
「ええ、これは火の魔装備だと思うわ。……炎よ」
「あ」
リアムがとあるショートソードを持って微笑むと、一言呟く。
すると刃から炎が噴き出した。
「見事だな。俺が持ってきた中でも上物のブレイズソード。そいつがいいのか?」
「ミトラ君に。彼は近接戦闘にも興味があるみたいだから両方使える、こういった魔装備がいいかと思ったんです」
「ふむ、その若さでそこまで分かっているとはやるな? よし、坊主。武器はこいつだ」
商人は顎に手を当ててリアムの考察に頷くと、ミトラにブレイズソードを渡した。
困惑しながら受け取り、ミトラが少し掲げてから冷や汗をかく。
「た、高そうですけど……」
「高い。しかし、俺は商人だが武器はきちんとした者が使うべきだと思っている。値段よりも重要なのはそこだな」
「でも金は取るのだろう?」
「もちろんだ。……とはいえ、お前との仲だし死なせるわけにもいかないしな」
商人とワットがニヤリと笑みを浮かべながら商談が成立していた。
その間にもリアムは続けて防具に目を向けていた。
「(魔王……魔族は身体が強力だったからあまり装備に詳しくないのよね。それでも戦利品の確認はしていたからきちんと『視れば』わかるかしら)」
リアムはアルケインを魔王たらしめた能力である『本質の瞳』のことを思い浮かべながら胸中で呟く。
見抜く力があるこの瞳は優秀な人材や物をサーチできる。
この力があったおかげで魔王軍は人間と他種族VS魔族という戦いが成立していたのだ。
もちろん視なければそれは分からないため、現場に出ることも多かった。
そこで優秀な者を各個撃破や暗殺といった策略などで始末していくことで優位に立つことができるのである。
「(ただ、生き物というのは装備品と違って本質が変わる。奥底に眠る本質はじっくり見ないとわからないのよね)」
だからこそ勇者レオンはアルケインの前に立てた。
そして『運』という要素が絡んでくると、さすがにそこまでの能力は発揮できない。
「さて、と」
リアムはローブにするか軽鎧にするかをまず考える。ミトラの体格と体力では通常の鎧ではすぐに限界が来るはずだと思ったからだ。
「……ま、実際に戦闘をすることはあまりないと思うけど。この辺りかしら」
「そいつか。さっきのブレイズソードほどじゃないが、スティールアントの甲殻とエレメントジェリーの皮をなめして編み込んだローブだ。防御と魔法には耐性があるぜ」
「ならこれをミトラ君に。後はすねあてとガントレット、頭の防具を見繕いましょうか」
「リアム部員! わたし! わたしのは!」
「バスレー先輩はあんまり戦うことがないでしょうし、自衛が出来るものがあればいいかしら? ちょっと待っててくださいね」
そういってリアムはさらに瞳を使って物色を続けていく。
そして――
「うわあ……これは後で父さんに言ってお金を持ってきてもらうよ……」
「似合うじゃないミトラ!」
ミトラはブレイズソードにエレメントローブ、それに対斬と打撃に強い帽子に、細かい急所を守る防具を装備。
「フフフ、これでいっぱしの魔法使い……!」
「それ、売らないでくださいよ?」
「売りませんよ!? ああ、でも依頼なんて大丈夫ですかねえ……」
バスレーはフィルメントロッドという魔力を高める鉱石が付いた武器と、スワンローブを選び、やはり急所を守る部分は必要なのでそこは単純な防御力で選んでいた。
「うおお、カッコいい! ミトラ君、どうですか!?」
「いいですね! 歴史研究部とは思えません」
「そうでしたね!?」
「忘れないでくださいよ!?」
「(この二人はこれでいいとして、ロイはこの瞳を持っていない。けど、あいつはどうせ勘だけでいいのを選ぶでしょうね)」
ロイはともかく、ひとまずこれでクラスメイト達がある程度命を守ることができるとリアムは考える。
万が一はある。魔王が勇者に倒されたようにと思いながら。
「ロイ、私は剣でいこうと思うわ。防具はどんなのがいいと思う?」
「剣はさっきの細身の剣か? なら防具はこういう軽くて丈夫なやつがいいな。フィーシアは力押しじゃなくてスピードで戦う方が良さそうだ」
「うんうん。蓮《れん》式がそんな感じだっけ?」
「だな。だけど折角だし、魔法も覚えた方がいい」
フィーシアが装備についてロイを頼っていた。
彼女は近接でやると言いだしたので、先ほど持ち出した剣に合う装備を選んでいた。技を教えるのも依頼の内だからとその辺りも考慮しての選定だ。
「今日は僕は魔法でいこうっと」
「わたしも魔法がいいですねえ。本ばかり読んでいると体力が落ちるんですよ。歳は取りたくないです」
「いや、部長は私より少し上なだけでしょ……私はロイと一緒で両方使えるけど、魔法の方が得意だから聞いてね」
「うん、ありがとう。でもロイ君みたいに剣士の装備って分かりやすいけど、魔法使いの装備ってどれも同じに見えるんだよね」
ミトラとバスレーが魔法を使うことに決めて、そちらはロイと同じくギルドに出入りリアムが面倒を見ることにした。
そこでミトラが装備は見ただけで分かりにくいと口にする。
先ほどのスワンローブのような装備もあるが、あれはたまたまバスレーが知っていただけで見た目で判断する材料が無いためだ。
「そうね……ミトラ君は火属性が強いからこのロッドか……あら、いいのあるじゃない」
「……! 嬢ちゃん、わかるのかい」
「ええ、これは火の魔装備だと思うわ。……炎よ」
「あ」
リアムがとあるショートソードを持って微笑むと、一言呟く。
すると刃から炎が噴き出した。
「見事だな。俺が持ってきた中でも上物のブレイズソード。そいつがいいのか?」
「ミトラ君に。彼は近接戦闘にも興味があるみたいだから両方使える、こういった魔装備がいいかと思ったんです」
「ふむ、その若さでそこまで分かっているとはやるな? よし、坊主。武器はこいつだ」
商人は顎に手を当ててリアムの考察に頷くと、ミトラにブレイズソードを渡した。
困惑しながら受け取り、ミトラが少し掲げてから冷や汗をかく。
「た、高そうですけど……」
「高い。しかし、俺は商人だが武器はきちんとした者が使うべきだと思っている。値段よりも重要なのはそこだな」
「でも金は取るのだろう?」
「もちろんだ。……とはいえ、お前との仲だし死なせるわけにもいかないしな」
商人とワットがニヤリと笑みを浮かべながら商談が成立していた。
その間にもリアムは続けて防具に目を向けていた。
「(魔王……魔族は身体が強力だったからあまり装備に詳しくないのよね。それでも戦利品の確認はしていたからきちんと『視れば』わかるかしら)」
リアムはアルケインを魔王たらしめた能力である『本質の瞳』のことを思い浮かべながら胸中で呟く。
見抜く力があるこの瞳は優秀な人材や物をサーチできる。
この力があったおかげで魔王軍は人間と他種族VS魔族という戦いが成立していたのだ。
もちろん視なければそれは分からないため、現場に出ることも多かった。
そこで優秀な者を各個撃破や暗殺といった策略などで始末していくことで優位に立つことができるのである。
「(ただ、生き物というのは装備品と違って本質が変わる。奥底に眠る本質はじっくり見ないとわからないのよね)」
だからこそ勇者レオンはアルケインの前に立てた。
そして『運』という要素が絡んでくると、さすがにそこまでの能力は発揮できない。
「さて、と」
リアムはローブにするか軽鎧にするかをまず考える。ミトラの体格と体力では通常の鎧ではすぐに限界が来るはずだと思ったからだ。
「……ま、実際に戦闘をすることはあまりないと思うけど。この辺りかしら」
「そいつか。さっきのブレイズソードほどじゃないが、スティールアントの甲殻とエレメントジェリーの皮をなめして編み込んだローブだ。防御と魔法には耐性があるぜ」
「ならこれをミトラ君に。後はすねあてとガントレット、頭の防具を見繕いましょうか」
「リアム部員! わたし! わたしのは!」
「バスレー先輩はあんまり戦うことがないでしょうし、自衛が出来るものがあればいいかしら? ちょっと待っててくださいね」
そういってリアムはさらに瞳を使って物色を続けていく。
そして――
「うわあ……これは後で父さんに言ってお金を持ってきてもらうよ……」
「似合うじゃないミトラ!」
ミトラはブレイズソードにエレメントローブ、それに対斬と打撃に強い帽子に、細かい急所を守る防具を装備。
「フフフ、これでいっぱしの魔法使い……!」
「それ、売らないでくださいよ?」
「売りませんよ!? ああ、でも依頼なんて大丈夫ですかねえ……」
バスレーはフィルメントロッドという魔力を高める鉱石が付いた武器と、スワンローブを選び、やはり急所を守る部分は必要なのでそこは単純な防御力で選んでいた。
「うおお、カッコいい! ミトラ君、どうですか!?」
「いいですね! 歴史研究部とは思えません」
「そうでしたね!?」
「忘れないでくださいよ!?」
「(この二人はこれでいいとして、ロイはこの瞳を持っていない。けど、あいつはどうせ勘だけでいいのを選ぶでしょうね)」
ロイはともかく、ひとまずこれでクラスメイト達がある程度命を守ることができるとリアムは考える。
万が一はある。魔王が勇者に倒されたようにと思いながら。
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