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第一章
第41話 施策
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「皆さんのおかげで一つの大きな危機は乗り越えました。ですが、王都を奪還し、グライアードの軍勢を追い出さない限りこの状況は続くでしょう。私がそれを成すまで、どうか耐えてください……!」
「「「おおおお!!」」」
――戦闘が終了して二日が経った。
瓦礫撤去や魔兵機《ゾルダート》の残骸回収……そして死者の埋葬。
これらの作業はこの二日でほぼ完了し、後は外壁の修理が完了すれば前の状況と同じになるはずだ。
「グライアードの死者は二十七名か。落とし穴で上から潰された奴らが殆どだな。町に入れた奴は無しってのは皮肉だな」
「暗闇でこんなのがあったらそりゃ引っ掛かるって。正直、捕まっていてよかったまであるぞ」
ビッダーとヘッジが俺の足元でアウラ様の演説を聞きながらそんな話をする。生き残った人間は捕虜として簡易牢にイラスなんかと一緒に入れている。
「お馬さん、治るかなあ」
「骨が折れているからじっとさせてあげるんだよ」
騎士達の乗っていた馬も結構な数が落ちて死んでいたが、生き残った馬は俺が引き上げて治療する方向になった。死んでしまった馬は残念だが食用にするとのこと。
で、今回のお礼をアウラ様自ら広場で行っているというわけだ。
しかし、お礼と同時に脅威が去ったわけでもないことを告げ、油断しないようにしようと言っていた。
「落とし穴は残しておくの?」
そこで同じく足元にいるシャルが門の方を見て口を開く。
「ああ。ディッターとかいう奴を含めて落ちなかった騎士達はまた襲撃に来る可能性もあるからな。ここに落とし穴があるってだけでも抑止力になる」
「橋をかけたりとか……」
「その前に迎撃するとか色々あるだろ。まあ、他の人が来れない可能性があるから、そこはなにか考えないといけないけど」
「とりあえずは外壁の修理だな。俺の魔兵機《ゾルダート》は片腕が無いし、イラスのも両腕なし……。イラスの腕は回収をしてきたが流石に技師が居なくては継げられない」
「これじゃ置物と変わらないわねえ」
シャルが残念そうにそんなことを言う。乗りたかったとずっと言っていたからな。
一応、操縦の仕方はビッダーに教えてもらっているらしい。
「――そこで、今から今後の指標をお伝えしたいと思います。申し訳ありませんが、私はここからヘルブスト国へ救援を呼ぶため近いうちに町を出ます」
「それは仕方が無いことです。自分たちの町です。なんとかします」
「ありがとうございます……。本来ならここで皆さんと戦うべきだと思います。ですが、一番の敵を倒さなければなりません」
「わかっていますよ。しょっぱなで全滅させられなかったのはソウの町の連中と同じでラッキーだったと思う」
クレイブの町の人達はすでに覚悟を決めたようで戦うことを決意していた。
「ええ。後は対策をして、それでもダメなら諦めるしかありません」
「食料の問題もあるし、いつまでもってわけにもいかないんだよな。商人とかどうなっているんだろう」
「そんなことを言わないでください……! ここから北東に行ったところに砦があります。私達は救援を呼んだ後、そこで戦力を整えて反攻作戦を考えていこうと思います。それが叶えばここではなく砦へ来るでしょう」
アウラ様がそういって場が騒然となる。実際、旗揚げをして王女がいるとなれば、捕まえるか殺すかを考えるだろう。
両親がどうなっているかわからないが、王族の血が絶えれば士気は下がると思う。
「この場には私の相談役であるガエインとグライアードの魔兵機《ゾルダート》。それと騎士を数十人を置いていきます。救援の目途がつけば砦へ移動、ということにします」
「それだと姫様の護衛は……」
「リクとシャル、それと騎士が居ればなんとかなると考えています。壊れた魔兵機《ゾルダート》を修理できればこちらも戦力となるので、それまで待っていてください」
アウラ様がそういうと、ギルドマスターのグレオさんが手を上げて口を開いた。
「わかりました。町の人間は力を合わせて対応します。で、冒険者連中は先日のこともある。町を出ても構わないからその時は言ってくれ」
そこで俺は肩ひざをついて気になったことを聞いてみる。
「大丈夫か? こちらの情報を話したり売ったりしないだろうか? 冒険者は自由だってのはこの二日でだいたいでわかったけどな。だがこの町から出るということはグライアードの連中といつ出くわすかわからない。で、命惜しさにってのはよくある話だ」
実際に魔兵機《ゾルダート》で逃げようとして、シャルを誘拐するつもりまで考えていたらしいからな。
ちなみにあの冒険者三人は地上に振り落とされた際にジョンビエル機に潰されて死んでいたりする。
そんなことを考えていると、冒険者が数人渋い顔で言う。
「そうはならねえ……と言いたいところだが、確かにその危惧はあってしかるべきだ。脅威を目の前にして口が軽くなってもおかしくねえ」
「だから冒険者である俺達からも提案がある」
「なんでしょうか……?」
冒険者の言葉にアウラ様が首を傾げると、一理あるかという話を切り出して来た。
「俺達もヘルブスト国へ行きたい奴が居たら連れて行って欲しい。この国でやっていくには少々厳しくなるかもしれないし、さっきでかい兄ちゃんが言ったようにグライアードへ密告するやつもいるかもしれない」
「ああ」
「だから別の国へ行きたい奴はアウラ様についていくってのはどうかと思いまして」
ふむ……
遅かれ早かれというやつではあるけど、今はできるだけこっちの情報は広めたくない。せめてヘルブスト国へアウラ様が行けば後は残った人間がどうにかする形になるのでそれまでというのであれば提案は悪くない。
決めるのはアウラ様なのでここは黙って聞いてみる。少し考えるため目を閉じていたアウラ様が周囲を見てから小さく頷いた。
「その提案でいきましょう。信用をしないというわけではありませんが、私がヘルブスト国へ到着するまではあまりどこにいるのかを広められたくありません。私が行く先で襲われていたら皆さんが困ります」
「それもありますね。では、ギルドマスターと一緒に話し合いをします。出発する時は言ってください」
冒険者の代表がそういうと他の人間も頷いていた。
――ということで次の指標が決定した。外壁を修理してから移動になる。
町にはガエイン爺さんが残るし、ビッダーとヘッジの二人が魔兵機《ゾルダート》を動かせるので防衛はなんとかなるはず。
まあ、裏切らないとは思うけど警戒はするとは言っていた。
後は捕虜のことだが、このままここに置いておくとのこと。連れて行っても仕方ないからという理由である。
再び旅立つため、俺はリヤカーなどの準備を始めるのだった。
「「「おおおお!!」」」
――戦闘が終了して二日が経った。
瓦礫撤去や魔兵機《ゾルダート》の残骸回収……そして死者の埋葬。
これらの作業はこの二日でほぼ完了し、後は外壁の修理が完了すれば前の状況と同じになるはずだ。
「グライアードの死者は二十七名か。落とし穴で上から潰された奴らが殆どだな。町に入れた奴は無しってのは皮肉だな」
「暗闇でこんなのがあったらそりゃ引っ掛かるって。正直、捕まっていてよかったまであるぞ」
ビッダーとヘッジが俺の足元でアウラ様の演説を聞きながらそんな話をする。生き残った人間は捕虜として簡易牢にイラスなんかと一緒に入れている。
「お馬さん、治るかなあ」
「骨が折れているからじっとさせてあげるんだよ」
騎士達の乗っていた馬も結構な数が落ちて死んでいたが、生き残った馬は俺が引き上げて治療する方向になった。死んでしまった馬は残念だが食用にするとのこと。
で、今回のお礼をアウラ様自ら広場で行っているというわけだ。
しかし、お礼と同時に脅威が去ったわけでもないことを告げ、油断しないようにしようと言っていた。
「落とし穴は残しておくの?」
そこで同じく足元にいるシャルが門の方を見て口を開く。
「ああ。ディッターとかいう奴を含めて落ちなかった騎士達はまた襲撃に来る可能性もあるからな。ここに落とし穴があるってだけでも抑止力になる」
「橋をかけたりとか……」
「その前に迎撃するとか色々あるだろ。まあ、他の人が来れない可能性があるから、そこはなにか考えないといけないけど」
「とりあえずは外壁の修理だな。俺の魔兵機《ゾルダート》は片腕が無いし、イラスのも両腕なし……。イラスの腕は回収をしてきたが流石に技師が居なくては継げられない」
「これじゃ置物と変わらないわねえ」
シャルが残念そうにそんなことを言う。乗りたかったとずっと言っていたからな。
一応、操縦の仕方はビッダーに教えてもらっているらしい。
「――そこで、今から今後の指標をお伝えしたいと思います。申し訳ありませんが、私はここからヘルブスト国へ救援を呼ぶため近いうちに町を出ます」
「それは仕方が無いことです。自分たちの町です。なんとかします」
「ありがとうございます……。本来ならここで皆さんと戦うべきだと思います。ですが、一番の敵を倒さなければなりません」
「わかっていますよ。しょっぱなで全滅させられなかったのはソウの町の連中と同じでラッキーだったと思う」
クレイブの町の人達はすでに覚悟を決めたようで戦うことを決意していた。
「ええ。後は対策をして、それでもダメなら諦めるしかありません」
「食料の問題もあるし、いつまでもってわけにもいかないんだよな。商人とかどうなっているんだろう」
「そんなことを言わないでください……! ここから北東に行ったところに砦があります。私達は救援を呼んだ後、そこで戦力を整えて反攻作戦を考えていこうと思います。それが叶えばここではなく砦へ来るでしょう」
アウラ様がそういって場が騒然となる。実際、旗揚げをして王女がいるとなれば、捕まえるか殺すかを考えるだろう。
両親がどうなっているかわからないが、王族の血が絶えれば士気は下がると思う。
「この場には私の相談役であるガエインとグライアードの魔兵機《ゾルダート》。それと騎士を数十人を置いていきます。救援の目途がつけば砦へ移動、ということにします」
「それだと姫様の護衛は……」
「リクとシャル、それと騎士が居ればなんとかなると考えています。壊れた魔兵機《ゾルダート》を修理できればこちらも戦力となるので、それまで待っていてください」
アウラ様がそういうと、ギルドマスターのグレオさんが手を上げて口を開いた。
「わかりました。町の人間は力を合わせて対応します。で、冒険者連中は先日のこともある。町を出ても構わないからその時は言ってくれ」
そこで俺は肩ひざをついて気になったことを聞いてみる。
「大丈夫か? こちらの情報を話したり売ったりしないだろうか? 冒険者は自由だってのはこの二日でだいたいでわかったけどな。だがこの町から出るということはグライアードの連中といつ出くわすかわからない。で、命惜しさにってのはよくある話だ」
実際に魔兵機《ゾルダート》で逃げようとして、シャルを誘拐するつもりまで考えていたらしいからな。
ちなみにあの冒険者三人は地上に振り落とされた際にジョンビエル機に潰されて死んでいたりする。
そんなことを考えていると、冒険者が数人渋い顔で言う。
「そうはならねえ……と言いたいところだが、確かにその危惧はあってしかるべきだ。脅威を目の前にして口が軽くなってもおかしくねえ」
「だから冒険者である俺達からも提案がある」
「なんでしょうか……?」
冒険者の言葉にアウラ様が首を傾げると、一理あるかという話を切り出して来た。
「俺達もヘルブスト国へ行きたい奴が居たら連れて行って欲しい。この国でやっていくには少々厳しくなるかもしれないし、さっきでかい兄ちゃんが言ったようにグライアードへ密告するやつもいるかもしれない」
「ああ」
「だから別の国へ行きたい奴はアウラ様についていくってのはどうかと思いまして」
ふむ……
遅かれ早かれというやつではあるけど、今はできるだけこっちの情報は広めたくない。せめてヘルブスト国へアウラ様が行けば後は残った人間がどうにかする形になるのでそれまでというのであれば提案は悪くない。
決めるのはアウラ様なのでここは黙って聞いてみる。少し考えるため目を閉じていたアウラ様が周囲を見てから小さく頷いた。
「その提案でいきましょう。信用をしないというわけではありませんが、私がヘルブスト国へ到着するまではあまりどこにいるのかを広められたくありません。私が行く先で襲われていたら皆さんが困ります」
「それもありますね。では、ギルドマスターと一緒に話し合いをします。出発する時は言ってください」
冒険者の代表がそういうと他の人間も頷いていた。
――ということで次の指標が決定した。外壁を修理してから移動になる。
町にはガエイン爺さんが残るし、ビッダーとヘッジの二人が魔兵機《ゾルダート》を動かせるので防衛はなんとかなるはず。
まあ、裏切らないとは思うけど警戒はするとは言っていた。
後は捕虜のことだが、このままここに置いておくとのこと。連れて行っても仕方ないからという理由である。
再び旅立つため、俺はリヤカーなどの準備を始めるのだった。
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