魔兵機士ヴァイスグリード

八神 凪

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第三章

第115話 救出

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 ヘッジ達が町中へ展開する少し前にギルドに連れていかれたザナック達。地下牢があるので最適な場所としてグライアードの人間は使っている。
 そこで彼等が入ってくると、冒険者達が不満げな顔で口を開く。

「また捕まえたのか。グライアードの騎士ってのは卑怯者の集まりかい?」
「なんだと?」
「下にいる連中もだまし討ちみたいなもんだって聞いている。あのような巨大なモノをもちながら不意打ちとはよほど弱いと見える」
「貴様等……!」
「やんのか? ああ?」

 冒険者達は苛立ちを隠さずにギルドに入って来た二名のグライアードの騎士へ睨みを利かせていた。
 今までの町にももちろん居た冒険者。グライアードについても良いと思う者が多くてもおかしくない現状だが、実はそう考えるものは少ない。
 
「斬られたいようだな……?」
「ならこっちも報復はするぜ? それでいいならかかってこいや」

 基本的にエトワール王国内で働いている場合、他国でも世話になっている国を重視する者が多いからだ。
 戦争で攻めている側が負けてしまった場合、後の惨状は想像しやすい。ここでグライアードに与して負けたら……そう思えば侵略者に媚びを売る必要はないと考えている。
 さらに町から出るなと強制されている今、仕事もできず金を稼げないため不満はさらに積もっていくだろう。
 町の人間には世話になっているため大人しくしているが、なにかのきっかけで爆発するはずである。

「……生意気な。一人くらい殺しておくか? 騎士とただの冒険者の違いを教えてやろうか」
「望むところだ……!」
「よせ。騒ぎを大きくするな。すみませんな、ウチの連中は元気がありすぎてな」

 そこで鎧に身を包んだ大きな男が現れた。彼は謝罪を口にしながら、腰の剣を抜こうとしたグライアードの騎士の手を抑えた。

「ぬ……!」
「数日もすれば慣れます。それまではお互い不可侵でいきましょう。……ただ、町の人間を殺すようなことがあれば我々は黙っていない。自警団もこのギルドマスターである私も」
「わかっている。大人しくしていれば、な。もしかすると貴様らにも仕事が与えられるかもしれんしな」
「なんだって?」

 冒険者が眉を顰めて聞き返すと、グライアードの騎士は鼻を鳴らしながら言う。

「エトワール王国の騎士が居たということは近辺に仲間が居るはずだ。鉱山という絶好の隠れ場所もな」
「……」

 ここまでザナックは黙って聞いていた。
 目の前にいるグライアードの人間が得意げにそんなことを話しているのを冒険者と見比べながら。

「……? ふむ、ではそこで仕事ということになるのか。あの大きなものは使わないのか?」
「あれで山狩りは難しいのでな。それまで黙っていろ」
「そういうわけにもいかないな」
「え?」

 そこでようやく口を開いたザナックが首と指を鳴らす。その場に居た者は全員彼に目を向けた。

「あれ? なんで拘束が解けて――」
「貴様……! ん? なんだ? ……あ!?」

 ポカンとしているグライアードの騎士が正面から殴られ派手にふっとび椅子に絡まって気絶する。すぐにハッとなったもう一人が剣を抜こうとしたが、それはギルドマスターと名乗った男が止めた。

「暴れるなと言ったろう? なので報復だ」
「ちょ、ま――」

 体の大きなギルドマスターの拳がグライアードの騎士の頬へ突き刺さると、すぐに白目を剥いて壁に吹き飛ばされた。
 
「ふう、ありがとう。助かりました」
「いえいえ、視線からなにかするであろうことは分かっていましたからね。それでこの後はどうするおつもりですか? あ、私はハンスと申します」

 ギルドマスターの大男が名乗ると、ザナック達は頷き、グライアードの騎士お懐を探る。

「ザナックだ。エトワール王国の騎士……っと、話は後だ。まずは地下に居る三人を助けなければ」
「承知しました。……おい、動ける準備をしておけ」
「「「オッケーだぜ」」」

 ハンスが神妙な顔で冒険者に指示を出すと、嬉々として武器を叩く冒険者一同。
 それを見てザナック達は肩を竦めて、一緒に居た騎士をグライアードの男達の拘束に回し、地下へ移動する。

「牢は右の扉の先だ」

 一つ下に降りるといくつかの部屋があり、一緒に移動してきたハンスが牢の場所を教えてくれた。
 
「……」

 さっきのは演技ではないだろうか? 大丈夫か? そんなことを考えながら背後を気にしつつ先へ進むと一つだけ松明で照らされている牢があった。

「サラバス!」
「う……う……そ、その声は……」
「俺だ、ザナックだ! 今、出してやるぞ!」

 グライアードの騎士から奪った鍵を使って錠前を開ける。すぐに駆け寄ると、三人とも酷い傷で倒れていることがわかり顔を顰めた。

「ポーションだ、使ってやるといい」
「助かる。……!」

 青い薬液を傷口にかけるてやるとスゥっと開いた傷が消えていく。ザナックは即効性が高いところを見てハイポーションをくれたのかと驚いていた。
 しかし今はそれどころではないと三人へハイポーションをかけてやった。

「う、うう……ドジを踏んだものだ……すまない」
「いいさ。まさか隠れて占領し、俺達を捕まえるつもりだったとは思わなかった」
「情報屋がいたようだ……今後は、気をつけないといけないな」
「そうだな。とりあえずここで休んでいろ」
「そういえば……グライアードの連中はどうしたんだ? リク殿か……?」

 一番最初に殴られて気絶をしたオニールが頭を振りながら上半身を起こしていた。
 気絶したがために殆どダメージを受けていないからだ。

「お前は大丈夫そうだな? いや、俺達だけで作戦を決行している。シャル様やリク殿は居ない」
「そりゃ大胆な。ガエイン様もか」
「ああ」

 ザナックが頷くと口笛を吹いて苦笑する。そのままグライアードの騎士から奪った剣を渡してザナックが立ち上がる。

「ここはこれでいいか。ハンスさん、なにか武器はないだろうか?」
「あるよ。上へ戻ろう。歩きながらでいい。話を聞かせてもらえるかな?」
「もちろんだ。……できる限りのことなら」

 そういって歩き出す二人。
 道中で拠点のこと以外で彼が食いつきそうな話をいくつかした。ハンスはグライアードとすでに相対しているためすんなり受け入れてくれたようだ。

「グライアードめ、どういうつもりか聞かねばならんな」
「まったくだ。ん? なんか騒がしいな?」

 上へ戻ると、少し騒がしい声が聞こえてきた――
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