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第百八十三話 色々な変化があるというもの
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「……よし!」
「うん、いいんじゃないか? コツさえ掴めばすぐ使えるようになるとはいえ、二日でほぼマスターしたのは流石だよ」
「クルル♪」
「わんわん!」
――というわけであれから二日。
僕はラースさんに付き合ってもらい、転移魔法『テレポト』の訓練をしていた。
初日と昨日はなかなか成功しなかったけど、昨晩、ゼオラの助言のおかげで今日の成功率はかなり高くなった。
◆ ◇ ◆
【多分だけど『そこに行く』っていうのがよくないんじゃないか? むしろ自然に『そこに居る』くらいの感覚でいい気がする】
「ほうほう。……どういうこと……?」
【口だと難しいけど、例えばあたしはここにいるだろ?】
「うん」
【次にウルカの頭上に移動する。これが恐らく今の転移の考え方だ】
確かにその通り。魔法に関してはやってないのに強いなあゼオラは。そう思っていると次に興味深いことを口にした。
【だから、そこに行くイメージじゃなくて、自分が今そこに居るイメージの方がいいんじゃないかって話だよ。『あたしはクローゼットの中に居るってイメージ』で魔法を使うって感じだな】
「ああ……! そういうことか。それは試す価値があるかもしれない」
◆ ◇ ◆
――という感じの助言である。
確かにそこへ行こうというより、そこに居るイメージの方が座標を合わせやすいんだよね。だってそこに居るんだからずれようがないのである。
似ているけど意外と意識が違うと実際にやってみるとわかったんだよね。
気づいたら今みたいにフォルテの背中に乗ることもできるようになった。
シルヴァは自分もとせがんでくる。
「後は慣れたら町から町へみたいなのはいけると思うよ」
「うん、ありがとうございますラースさん!」
「ははは、いいよ。もう一人使えたら俺も楽だしさ」
それじゃと言ってラースさんは仕事に戻っていく。ちなみに魔力量が少ないと覚えてもあまり移動する距離が長くないので意味がないらしい。
ラースさん以外にも使える人はいなくはないけど、数はかなり少ない。この転移の考え方で詰まるようだ。
「それじゃ一旦お家へ帰ろうか」
「わん……!?」
「また今度お前の背中に転移するからさ」
ショックを受けているシルヴァの頭を撫でながら背中にまたがると、それは嬉しいのか軽い足取りで自宅へと向かう。
「おお、ウルカじゃないか」
「あ、セカーチさん! こんにちは! お散歩ですか?」
「いや、お主からもらったイラストを今、適当な石を使って試し彫をしようと思ってな」
「うおお……お、重い……!?」
「いや、まだ早いですよ!?」
冒険者さんが巨大な岩を持って移動していた。ま、まあ、確かに僕が一緒の時に作って欲しいと言ったので、試し彫りはするかと思う。
なんかいい大理石みたいなやつが来るまでできないし、せっかちだとは思ったけど試作品を見たい気もする。
「それじゃあ出来たら教えてください!」
「うむ。そうそう、あの銭湯は良かったぞ。骨の御仁によろしく伝えておいてくれ」
オオグレさん、いつもお風呂にいるな……。
まあ他の人と仲良くなるのはいいことかと、広場のセカーチさんと挨拶を交わして自宅へ。
庭に到着したのでシルヴァから降りた。フォルテとシルヴァが水を飲みに行ったので僕はハリヤーとジェニファーの様子でも見るかとそちらへ向かう。
「ジェニファー?」
「コケ? こけっこ」
「卵を温めているのかな……? もしかしてもうすぐ孵る?」
「こーけ」
首を振る。どうやらまだまだらしい。ここ最近、卵をくれなかったのは有精卵だからだろうか?
まあ家族が増えるならいいよねと次に厩舎へ向かう。
すると――
「ハリヤー!?」
「わおん!?」
「クルル!?」
――厩舎でハリヤーが寝そべっていた。呼吸が荒いし、いつもと明らかに様子が違う。
「も、もしかして……! 獣医さん……はこの村にはいない……。ど、どうしよう」
なにか危ない状態なら獣医さんに診てもらわなといけないのは間違いない。
でも、いつもの人は実家に戻らないと……!
【ウルカ、落ち着け。死ぬと決まったわけじゃ――】
「考えている場合じゃない……! ……<テレポト>」
【あ!? おま――】
◆ ◇ ◆
「ウルカ君のおかあさんどうなのー?」
「ええ、美味しいわよアニーちゃん。まだ小さいのに頑張っているのね」
「す、すみませんウチの子が……」
「いいのよー。アニーちゃんはウルカちゃんのお嫁さんになるんだものね?」
「うんー! お料理を覚えて待っているといいってお母さんが言ってたのー」
アニーは母親と一緒に料理の勉強を始め、一番うまくできた卵焼きをウルカの母親であるクラウディアに食べさせようと、自分の母親に無理を言ってここまで来ていたのだ。
「いやあ、ウルカは幸せだなあ。こんな可愛い子に好かれているなんて」
「そうね、あなた! ステラちゃんはいけ好かないリンダの娘ですけど、アニーちゃんは関係ありませんし」
「ステラちゃんのおかあさんと仲良くするのー」
「ああ、うんその内ね」
ロドリオはいつになるのかなどと考えながらお茶を口にする。まあ、ステラを邪険にしないからいいかと考えていた。
するとその時――
「父さん母さん! ハリヤーを診ていた獣医さんを教えて!!」
「「ぶっ!? う、ウルカ!?」」
「ウルカ君だ! お料理したら本当に帰って来たよー!!」
――ウルカが食堂へ入って来た。
「うん、いいんじゃないか? コツさえ掴めばすぐ使えるようになるとはいえ、二日でほぼマスターしたのは流石だよ」
「クルル♪」
「わんわん!」
――というわけであれから二日。
僕はラースさんに付き合ってもらい、転移魔法『テレポト』の訓練をしていた。
初日と昨日はなかなか成功しなかったけど、昨晩、ゼオラの助言のおかげで今日の成功率はかなり高くなった。
◆ ◇ ◆
【多分だけど『そこに行く』っていうのがよくないんじゃないか? むしろ自然に『そこに居る』くらいの感覚でいい気がする】
「ほうほう。……どういうこと……?」
【口だと難しいけど、例えばあたしはここにいるだろ?】
「うん」
【次にウルカの頭上に移動する。これが恐らく今の転移の考え方だ】
確かにその通り。魔法に関してはやってないのに強いなあゼオラは。そう思っていると次に興味深いことを口にした。
【だから、そこに行くイメージじゃなくて、自分が今そこに居るイメージの方がいいんじゃないかって話だよ。『あたしはクローゼットの中に居るってイメージ』で魔法を使うって感じだな】
「ああ……! そういうことか。それは試す価値があるかもしれない」
◆ ◇ ◆
――という感じの助言である。
確かにそこへ行こうというより、そこに居るイメージの方が座標を合わせやすいんだよね。だってそこに居るんだからずれようがないのである。
似ているけど意外と意識が違うと実際にやってみるとわかったんだよね。
気づいたら今みたいにフォルテの背中に乗ることもできるようになった。
シルヴァは自分もとせがんでくる。
「後は慣れたら町から町へみたいなのはいけると思うよ」
「うん、ありがとうございますラースさん!」
「ははは、いいよ。もう一人使えたら俺も楽だしさ」
それじゃと言ってラースさんは仕事に戻っていく。ちなみに魔力量が少ないと覚えてもあまり移動する距離が長くないので意味がないらしい。
ラースさん以外にも使える人はいなくはないけど、数はかなり少ない。この転移の考え方で詰まるようだ。
「それじゃ一旦お家へ帰ろうか」
「わん……!?」
「また今度お前の背中に転移するからさ」
ショックを受けているシルヴァの頭を撫でながら背中にまたがると、それは嬉しいのか軽い足取りで自宅へと向かう。
「おお、ウルカじゃないか」
「あ、セカーチさん! こんにちは! お散歩ですか?」
「いや、お主からもらったイラストを今、適当な石を使って試し彫をしようと思ってな」
「うおお……お、重い……!?」
「いや、まだ早いですよ!?」
冒険者さんが巨大な岩を持って移動していた。ま、まあ、確かに僕が一緒の時に作って欲しいと言ったので、試し彫りはするかと思う。
なんかいい大理石みたいなやつが来るまでできないし、せっかちだとは思ったけど試作品を見たい気もする。
「それじゃあ出来たら教えてください!」
「うむ。そうそう、あの銭湯は良かったぞ。骨の御仁によろしく伝えておいてくれ」
オオグレさん、いつもお風呂にいるな……。
まあ他の人と仲良くなるのはいいことかと、広場のセカーチさんと挨拶を交わして自宅へ。
庭に到着したのでシルヴァから降りた。フォルテとシルヴァが水を飲みに行ったので僕はハリヤーとジェニファーの様子でも見るかとそちらへ向かう。
「ジェニファー?」
「コケ? こけっこ」
「卵を温めているのかな……? もしかしてもうすぐ孵る?」
「こーけ」
首を振る。どうやらまだまだらしい。ここ最近、卵をくれなかったのは有精卵だからだろうか?
まあ家族が増えるならいいよねと次に厩舎へ向かう。
すると――
「ハリヤー!?」
「わおん!?」
「クルル!?」
――厩舎でハリヤーが寝そべっていた。呼吸が荒いし、いつもと明らかに様子が違う。
「も、もしかして……! 獣医さん……はこの村にはいない……。ど、どうしよう」
なにか危ない状態なら獣医さんに診てもらわなといけないのは間違いない。
でも、いつもの人は実家に戻らないと……!
【ウルカ、落ち着け。死ぬと決まったわけじゃ――】
「考えている場合じゃない……! ……<テレポト>」
【あ!? おま――】
◆ ◇ ◆
「ウルカ君のおかあさんどうなのー?」
「ええ、美味しいわよアニーちゃん。まだ小さいのに頑張っているのね」
「す、すみませんウチの子が……」
「いいのよー。アニーちゃんはウルカちゃんのお嫁さんになるんだものね?」
「うんー! お料理を覚えて待っているといいってお母さんが言ってたのー」
アニーは母親と一緒に料理の勉強を始め、一番うまくできた卵焼きをウルカの母親であるクラウディアに食べさせようと、自分の母親に無理を言ってここまで来ていたのだ。
「いやあ、ウルカは幸せだなあ。こんな可愛い子に好かれているなんて」
「そうね、あなた! ステラちゃんはいけ好かないリンダの娘ですけど、アニーちゃんは関係ありませんし」
「ステラちゃんのおかあさんと仲良くするのー」
「ああ、うんその内ね」
ロドリオはいつになるのかなどと考えながらお茶を口にする。まあ、ステラを邪険にしないからいいかと考えていた。
するとその時――
「父さん母さん! ハリヤーを診ていた獣医さんを教えて!!」
「「ぶっ!? う、ウルカ!?」」
「ウルカ君だ! お料理したら本当に帰って来たよー!!」
――ウルカが食堂へ入って来た。
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