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平穏な日々のはず。
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いつも通りの穏やかだったり穏やかじゃなかったりという日々が続く中、とうとうダークが「やだやだやだ」とごねていた40歳の誕生日を迎えた。
この国の人は、何故か誕生日を祝われるのを嫌がる。年を取る事に直結してるためなのか、年配の人ほど顕著である。
「さっさとお迎えが来いと言うことか!」
とキレる人もいるので、誕生日パーティーというのはまずやらず、家族や親しい人に簡単なプレゼントをこそっと渡す位がせいぜいだ。
私も誕生日プレゼントとしてはルーシーにしか渡してない。
まあ誕生日以外でなんだかんだと贈り物を家族にもしているのでいいんだけれど。
前世の日本では、誕生日パーティーはよく行われていたもので、「生まれて来てくれてありがとう」の気持ちであり、決してあの世へのカウントダウンではないのだと説明したところ一定の理解は示されたものの、やはり女性も男性も老け込むのを気にする傾向にある。
うちのパパンは昨年50歳になった時、暫く屋敷から出て来なかった。
孫にも顔を見せに来ない時期が2ヶ月位あって、
「もう50………どんどんおじさんからガチでおじーさんと言われるのが近づいてきたよぅぅぅ」
とずっとメソメソしていて鬱陶しかったのよ、とママンがこぼしていたが、ママンだって40になった時は大騒ぎだったし、パパンの2歳下なので、来年には50の大台に乗るのだ。
私も26を迎えたが、25との違いはよく分からない。
昔から徹夜は無理だったし、体力なかったし、お茶を飲みながら窓辺でぼんやりするのも好きだった。
そのせいか若さが衰えるという感覚がない。何せ元から若さが足りてないのだ。
美貌(笑)が衰えたところで元が元だし、どうという事もない。
まあ地味な顔の方が変化は緩やかだろうとは思うけど、単に凹凸が少ないのでシワになりにくいだけというシンプルな話だ。
ただ、ウチの旦那様は人外レベルのキラキラな彫りの深い顔のクセに、40になっても30そこそこにしか見えない。
出逢ってから全く老けた印象がないのが怖い。
年齢詐称疑惑まで出るほどの若々しさだが、これは騎士団という常時身体を鍛える必要がある仕事の人間だから、ということかも知れない。騎士団の人たちはみんなとても若々しいし。
あー、ヒューイさんも若いわよねそういえば。
だから気にすることないと何度も言ってるのに、
「40、ってもう問答無用でオッサンな感じがしないか?妻20代、夫40代ってなんかほら犯罪臭がするだろう?しないか?するよな?」
と目をうるうるさせる。
いや、39でも40でもオッサンだと思うけど………と内心思ってはいるが、見た目詐欺だし、全然気にしないでいいと思うんだけれど。
まあ女としては年を取るというのが怖いという気持ちはとても分かるので、よしよしと頭を撫でる。
「………ダークは犯罪臭がするからって私と離婚したいの?」
「する訳ないだろ。離婚したいと言われても最後まで俺は足掻くぞ」
私をそっと抱き締めて、ダークの瞳が強い輝きを放つ。ああまた無駄に眩しい。
「なんで私が離婚したがる前提なのよ」
「リーシャは若くて美しい。性格もいい。料理も上手い。絵も文章も上手い。
全てをマシマシで持っている奇跡のような女性だ。
何も40の不細工なオッサンの妻でいる必然性がない」
「私の愛情はどうでもいいんかコラ」
軽く頭突きをかましておく。
「ぐっっ………結構痛かったぞ今の」
「痛がるようにやったもの」
むにぃ~っと艶やかなダークの頬っぺたをつまみながら、
「私は、一生、ダークの側に居たいの。
正直言ってダーク以上の旦那様は私には居ないし、必要ないのよ。
それ以上ウダウダ言ってると襲うわよ」
「……っ!!」
「………そこは期待の眼差しではなく、反省の眼差し!やり直し」
私はダークの頬っぺたを引っ張りながら叱る。
「すまん、つい。決して喜んで………は、いない。反省している、ので襲っ、わないで、下さい」
正座体勢になるダークが棒読みで弁解しているが、本音でないのがバレバレだ。
ガウンの上からでもムスコさんの様子が窺えてしまってるではないか。
でも気づかない振りをしておこう。
本当に襲ってしまったら喜ぶだけで反省にならないものね。
「分かってくれたならいいのよ。じゃあもう寝ましょうか。夜も遅いし」
「えっ?!」
前のめりになったダークが別の意味で涙目になっていたが、そこは流されない。
体力年齢は真逆なのである。
自分はまだオッサンではないと証明したいのか、ここ数日なし崩しに夜の生活が濃密になっていて、私が昼間仕事をする体力まで奪われてるのである。
ベッドで横からダークがすりすりと身体を寄せてきたが、私は眠くて眠くて、エッチな気持ちが全く沸き上がらなかったので、ダークの頭を撫でてるうちに爆睡してしまった。
食欲、性欲、睡眠欲が人間の三大欲とか言われてるが、私が一番我慢できないのは睡眠欲である。
翌日、久々に充分な睡眠が取れた私は「平和やのー」等とのどかに思ったが、それがとっても甘い認識だった事を知る。
王宮からのお呼びだしが来たのである。
この国の人は、何故か誕生日を祝われるのを嫌がる。年を取る事に直結してるためなのか、年配の人ほど顕著である。
「さっさとお迎えが来いと言うことか!」
とキレる人もいるので、誕生日パーティーというのはまずやらず、家族や親しい人に簡単なプレゼントをこそっと渡す位がせいぜいだ。
私も誕生日プレゼントとしてはルーシーにしか渡してない。
まあ誕生日以外でなんだかんだと贈り物を家族にもしているのでいいんだけれど。
前世の日本では、誕生日パーティーはよく行われていたもので、「生まれて来てくれてありがとう」の気持ちであり、決してあの世へのカウントダウンではないのだと説明したところ一定の理解は示されたものの、やはり女性も男性も老け込むのを気にする傾向にある。
うちのパパンは昨年50歳になった時、暫く屋敷から出て来なかった。
孫にも顔を見せに来ない時期が2ヶ月位あって、
「もう50………どんどんおじさんからガチでおじーさんと言われるのが近づいてきたよぅぅぅ」
とずっとメソメソしていて鬱陶しかったのよ、とママンがこぼしていたが、ママンだって40になった時は大騒ぎだったし、パパンの2歳下なので、来年には50の大台に乗るのだ。
私も26を迎えたが、25との違いはよく分からない。
昔から徹夜は無理だったし、体力なかったし、お茶を飲みながら窓辺でぼんやりするのも好きだった。
そのせいか若さが衰えるという感覚がない。何せ元から若さが足りてないのだ。
美貌(笑)が衰えたところで元が元だし、どうという事もない。
まあ地味な顔の方が変化は緩やかだろうとは思うけど、単に凹凸が少ないのでシワになりにくいだけというシンプルな話だ。
ただ、ウチの旦那様は人外レベルのキラキラな彫りの深い顔のクセに、40になっても30そこそこにしか見えない。
出逢ってから全く老けた印象がないのが怖い。
年齢詐称疑惑まで出るほどの若々しさだが、これは騎士団という常時身体を鍛える必要がある仕事の人間だから、ということかも知れない。騎士団の人たちはみんなとても若々しいし。
あー、ヒューイさんも若いわよねそういえば。
だから気にすることないと何度も言ってるのに、
「40、ってもう問答無用でオッサンな感じがしないか?妻20代、夫40代ってなんかほら犯罪臭がするだろう?しないか?するよな?」
と目をうるうるさせる。
いや、39でも40でもオッサンだと思うけど………と内心思ってはいるが、見た目詐欺だし、全然気にしないでいいと思うんだけれど。
まあ女としては年を取るというのが怖いという気持ちはとても分かるので、よしよしと頭を撫でる。
「………ダークは犯罪臭がするからって私と離婚したいの?」
「する訳ないだろ。離婚したいと言われても最後まで俺は足掻くぞ」
私をそっと抱き締めて、ダークの瞳が強い輝きを放つ。ああまた無駄に眩しい。
「なんで私が離婚したがる前提なのよ」
「リーシャは若くて美しい。性格もいい。料理も上手い。絵も文章も上手い。
全てをマシマシで持っている奇跡のような女性だ。
何も40の不細工なオッサンの妻でいる必然性がない」
「私の愛情はどうでもいいんかコラ」
軽く頭突きをかましておく。
「ぐっっ………結構痛かったぞ今の」
「痛がるようにやったもの」
むにぃ~っと艶やかなダークの頬っぺたをつまみながら、
「私は、一生、ダークの側に居たいの。
正直言ってダーク以上の旦那様は私には居ないし、必要ないのよ。
それ以上ウダウダ言ってると襲うわよ」
「……っ!!」
「………そこは期待の眼差しではなく、反省の眼差し!やり直し」
私はダークの頬っぺたを引っ張りながら叱る。
「すまん、つい。決して喜んで………は、いない。反省している、ので襲っ、わないで、下さい」
正座体勢になるダークが棒読みで弁解しているが、本音でないのがバレバレだ。
ガウンの上からでもムスコさんの様子が窺えてしまってるではないか。
でも気づかない振りをしておこう。
本当に襲ってしまったら喜ぶだけで反省にならないものね。
「分かってくれたならいいのよ。じゃあもう寝ましょうか。夜も遅いし」
「えっ?!」
前のめりになったダークが別の意味で涙目になっていたが、そこは流されない。
体力年齢は真逆なのである。
自分はまだオッサンではないと証明したいのか、ここ数日なし崩しに夜の生活が濃密になっていて、私が昼間仕事をする体力まで奪われてるのである。
ベッドで横からダークがすりすりと身体を寄せてきたが、私は眠くて眠くて、エッチな気持ちが全く沸き上がらなかったので、ダークの頭を撫でてるうちに爆睡してしまった。
食欲、性欲、睡眠欲が人間の三大欲とか言われてるが、私が一番我慢できないのは睡眠欲である。
翌日、久々に充分な睡眠が取れた私は「平和やのー」等とのどかに思ったが、それがとっても甘い認識だった事を知る。
王宮からのお呼びだしが来たのである。
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