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Chapter.1 ルドルフ邸編
Episode.03 異世界生活はじめました
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あれからルドルフさんと話し合った結果、この世界で生きていく術を身につけるまでは居候という形で此処でお世話になる事になった。
Episode.03 異世界生活はじめました
当然、妖精の子は猛反対していたがルドルフさんが説得してくれたおかげで一緒に住む事を許可してくれた。
もう俺はルドルフさんに足を向けて寝れそうにない、それだけ此処に来てからお世話になりっぱなしである。
なので、俺は翌日から何とかしてルドルフさんの役に立ちたいと炊事や洗濯、雑用などを買ってでた。
元々それらの仕事は妖精の子がやっていたので、当然だが彼女に協力する形となった訳だが――
料理を手伝えば……
「うわ、黒っ! あんた、どんだけ焼いてんのよ!」
「すみません」
掃除を手伝えば……
「げぇ、汚っ! 何で掃除する前より汚れてんのよ!」
「すみません」
その他にも色々なものをお手伝いしたのだが、彼女から下された評価は……
「あんた、全く使えない! これならあたし一人のがマシよ!」
戦力外、役立たずというものであった。
で、最終的に俺が任せられた仕事は……
「ま、薪割り……?」
「そう、庭に積まれた薪を置いてある斧で割ってあたしの所に持ってきて」
頭や技術が求められないシンプルな力仕事となってしまった。
「……怪我しそうで怖いんだが?」
「ふふふ、今怪我するのと薪を割って怪我するのどっちがいい?」
先生、選択肢が理不尽です。
「いいからさっさとやれ」
「はい」
こうして俺の薪割り生活がスタートしたのである。
初めの数週間は全くコツが掴めず、一本すらまともに割る事が出来ない有様であった。
しかし、ルドルフさんの助言で斧の刃を先に薪に食い込ませ、両方を台座である切り株に叩きつけて割るというやり方に変えてからは少しずつ上達していった。
今では目を閉じていても薪を割る事が出来る。
「はぁーっ!」
……
…………
………………
……………………
無理でした。
そんな日々を過ごし、俺がルドルフさんの家にやって来てからひと月程経過した。
この世界での生活もルドルフさんのサポートのおかげで大分慣れ、まだ不安は残るものの色々な事が一人で出来る様になった。
もう何も問題はない、そう言いたいが残念な事に一つだけあったりする。
それは妖精の子とまだ打ち解けていない事だ。
あれから何度も会話をし、関係の修復を図ったが全部失敗に終わってしまった。
彼女が言うには役立たずと話す事はない、だそうだ。
確かに俺は彼女の仕事を手伝うつもりが邪魔ばかりしていた気がする。
出会った時の最初の態度も悪かったと反省しきりだ。
ただ今後この家で一緒に生活するのなら、少しでもコミュニケーションがとれた方がお互いに生活しやすいんじゃないかと思う訳である。
なので、彼女と世間話が出来るぐらいにはなっておきたいのだ。
そんな思惑をルドルフさんは感じ取ったのか、それともたまたまなのかは分からない。
ただ彼は突然俺にこう話を切り出してきたのだ。
「え、仕事で家を留守にする?」
「うむ、遠方の村で問題が起きたらしくてな? 一晩で帰るのは厳しくてのう」
ルドルフさんの話では俺がここに来てからのひと月は仕事も大分落ち着いており、近隣の村での仕事が多かったので一晩家を留守にするという事がなかったのだそうだ。
ちなみにルドルフさんの言っている仕事というのは厳密には仕事ではないらしい。
なら、何かと言うと他の町や村で起きている問題を解決してほしいとお願いされ、解決出来た場合は謝礼として金品や価値のある品を頂くというものである。
その功績からか、ルドルフさんの事を人は森の賢者と呼ぶそうだ。
話を戻すが、この仕事方法には大きな欠点があったりする。
それは問題が起きないと全く稼げない期間があるし、解決してもただ同然の謝礼を渡される事もあるからだ。
それで生活できるのかと疑問に思い、本人に尋ねてみるとルドルフさんは笑顔で答えてくれた。
「若い頃に稼いだ蓄えがあってのう、自分と妖精一人が生活するには何も不自由せんのじゃ」
なので、今やってる仕事は年寄りの道楽みたいなものだと彼は続けた。
正直、俺には理解できない話だった。
「え、じゃあ、俺はどうすれば?」
その後、俺はルドルフさんが留守にする間の身の置き方を尋ねる。
「初めは一緒に連れて行こうと思ったんじゃが……」
ルドルフさんはその言葉を口にしながら此方へと徐々に歩み寄り、耳元で囁く様に話を続けた。
「お主、フィオと上手くいっておらんじゃろ?」
「……はい」
どうやら、ルドルフさんも気付いてはいたみたいだ。
「これを機に仲直りをする、というのはどうじゃ?」
「わ、分かりました」
まぁ無理だとは思いますけど、そう口走りそうになるがルドルフさんの気遣いを台無しにする訳にもいかず黙っておく事にした。
「フィオには儂が留守にする事は黙っておくかのう」
「え、何でですか?」
「話せば警戒してお主と接触するのを避けるかもしれん」
ルドルフさん、聞いて下さい。
「な、なるほど」
俺、今でも十分避けられてます。
「じゃあ、明日から頑張るんじゃぞ」
「は、はい」
こうして、突然ではあったが俺と妖精の子の仲直り大作戦が決行される事になったのである。
……多分、成功率10%も満たない気がする。
Episode.03 異世界生活はじめました
当然、妖精の子は猛反対していたがルドルフさんが説得してくれたおかげで一緒に住む事を許可してくれた。
もう俺はルドルフさんに足を向けて寝れそうにない、それだけ此処に来てからお世話になりっぱなしである。
なので、俺は翌日から何とかしてルドルフさんの役に立ちたいと炊事や洗濯、雑用などを買ってでた。
元々それらの仕事は妖精の子がやっていたので、当然だが彼女に協力する形となった訳だが――
料理を手伝えば……
「うわ、黒っ! あんた、どんだけ焼いてんのよ!」
「すみません」
掃除を手伝えば……
「げぇ、汚っ! 何で掃除する前より汚れてんのよ!」
「すみません」
その他にも色々なものをお手伝いしたのだが、彼女から下された評価は……
「あんた、全く使えない! これならあたし一人のがマシよ!」
戦力外、役立たずというものであった。
で、最終的に俺が任せられた仕事は……
「ま、薪割り……?」
「そう、庭に積まれた薪を置いてある斧で割ってあたしの所に持ってきて」
頭や技術が求められないシンプルな力仕事となってしまった。
「……怪我しそうで怖いんだが?」
「ふふふ、今怪我するのと薪を割って怪我するのどっちがいい?」
先生、選択肢が理不尽です。
「いいからさっさとやれ」
「はい」
こうして俺の薪割り生活がスタートしたのである。
初めの数週間は全くコツが掴めず、一本すらまともに割る事が出来ない有様であった。
しかし、ルドルフさんの助言で斧の刃を先に薪に食い込ませ、両方を台座である切り株に叩きつけて割るというやり方に変えてからは少しずつ上達していった。
今では目を閉じていても薪を割る事が出来る。
「はぁーっ!」
……
…………
………………
……………………
無理でした。
そんな日々を過ごし、俺がルドルフさんの家にやって来てからひと月程経過した。
この世界での生活もルドルフさんのサポートのおかげで大分慣れ、まだ不安は残るものの色々な事が一人で出来る様になった。
もう何も問題はない、そう言いたいが残念な事に一つだけあったりする。
それは妖精の子とまだ打ち解けていない事だ。
あれから何度も会話をし、関係の修復を図ったが全部失敗に終わってしまった。
彼女が言うには役立たずと話す事はない、だそうだ。
確かに俺は彼女の仕事を手伝うつもりが邪魔ばかりしていた気がする。
出会った時の最初の態度も悪かったと反省しきりだ。
ただ今後この家で一緒に生活するのなら、少しでもコミュニケーションがとれた方がお互いに生活しやすいんじゃないかと思う訳である。
なので、彼女と世間話が出来るぐらいにはなっておきたいのだ。
そんな思惑をルドルフさんは感じ取ったのか、それともたまたまなのかは分からない。
ただ彼は突然俺にこう話を切り出してきたのだ。
「え、仕事で家を留守にする?」
「うむ、遠方の村で問題が起きたらしくてな? 一晩で帰るのは厳しくてのう」
ルドルフさんの話では俺がここに来てからのひと月は仕事も大分落ち着いており、近隣の村での仕事が多かったので一晩家を留守にするという事がなかったのだそうだ。
ちなみにルドルフさんの言っている仕事というのは厳密には仕事ではないらしい。
なら、何かと言うと他の町や村で起きている問題を解決してほしいとお願いされ、解決出来た場合は謝礼として金品や価値のある品を頂くというものである。
その功績からか、ルドルフさんの事を人は森の賢者と呼ぶそうだ。
話を戻すが、この仕事方法には大きな欠点があったりする。
それは問題が起きないと全く稼げない期間があるし、解決してもただ同然の謝礼を渡される事もあるからだ。
それで生活できるのかと疑問に思い、本人に尋ねてみるとルドルフさんは笑顔で答えてくれた。
「若い頃に稼いだ蓄えがあってのう、自分と妖精一人が生活するには何も不自由せんのじゃ」
なので、今やってる仕事は年寄りの道楽みたいなものだと彼は続けた。
正直、俺には理解できない話だった。
「え、じゃあ、俺はどうすれば?」
その後、俺はルドルフさんが留守にする間の身の置き方を尋ねる。
「初めは一緒に連れて行こうと思ったんじゃが……」
ルドルフさんはその言葉を口にしながら此方へと徐々に歩み寄り、耳元で囁く様に話を続けた。
「お主、フィオと上手くいっておらんじゃろ?」
「……はい」
どうやら、ルドルフさんも気付いてはいたみたいだ。
「これを機に仲直りをする、というのはどうじゃ?」
「わ、分かりました」
まぁ無理だとは思いますけど、そう口走りそうになるがルドルフさんの気遣いを台無しにする訳にもいかず黙っておく事にした。
「フィオには儂が留守にする事は黙っておくかのう」
「え、何でですか?」
「話せば警戒してお主と接触するのを避けるかもしれん」
ルドルフさん、聞いて下さい。
「な、なるほど」
俺、今でも十分避けられてます。
「じゃあ、明日から頑張るんじゃぞ」
「は、はい」
こうして、突然ではあったが俺と妖精の子の仲直り大作戦が決行される事になったのである。
……多分、成功率10%も満たない気がする。
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