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22 諦念と予感 -Chapter セラフィム
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執務に戻ろうとしたセラフィムだったが、書類に集中することはできなかった。
セラフィムは、机の引き出しから、セレイナの上奏文を取り出す。
かつて、彼女が書いた政務上の報告書。その字は美しく整っており、内容も無駄がなく完璧だった。
だがそれ以上にセラフィムが見たのは、その報告書に込められた想い。
彼女は自分の有能さを示すことで、王太子に価値のある存在だと認めて欲しい、そう願っていたのだろう。セレイナの考えや想いも、セラフィムは知らなかった。
セラフィムは、その想いを踏みにじっていたのだ。
彼女の報告書を受け取りながら、彼女の心を見ることなく。
セラフィムは、セレイナが書き綴った報告書を、引き出しの中へ戻した。
今になって気づく。自分の無責任さ・臆病さへの怒り。彼は、リージェリアを失いたくないという理由で、セレイナを見捨てた。
その結果、彼女は塔の上で、自らの命を絶とうとしたのだ。
☆
陽が一日の中でも、最も高い場所へ行こうとする頃。
彼は侍従からの報告を受けた。
「国王陛下が、お呼びです」
セラフィムは覚悟した。父王は、もうすべてを知っているのだろう。
セレイナのこと。エリオスがしたこと。そして、自分の責任。
セラフィムは、自分が何を失うのかを理解していた。セレイナとの側妃関係は、当然のことながら解消しなければならない。そのほかにも、目には見えないものが、彼の手から零れ落ちてゆくはずだ。
リージェリアとの関係。
エリオスの信頼。
自分自身への尊敬。
そして、最も恐れること。
父王の中でのセラフィム王太子への評価。
『王の器ではない』
その烙印が、今、押されるかもしれない。
「わかった……」
そう返事をし、セラフィムは立ち上がった。その足取りは、鉛を付けたように重かった。
一目惚れから始まった恋。
ミレーユとの婚約解除。
リージェリアとの婚姻。
セレイナの側妃化。
そして、今、この瞬間。
すべてが、因果の糸で繋がっていた。
セラフィムの選択が、すべての始まりだった。
もし、ナルヴァ国に行かなかったなら。
もし、リージェリアに一目惚れしなかったなら。
もし、ミレーユとの婚約を守っていたなら。
もし、セレイナを見つめなかったなら。
重なってゆく『もし』という、違う選択をする過去と、した未来。
それは、振り返ることに意味を見出せない空想だ。
☆
王城の奥、執務室への道。
セラフィムはその内回廊を歩み、父王の執務室の扉の前に立った。
彼の人生の未来への審判が、その先には待っている。
それは光なのか、それとも闇なのか。
どちらであれ、穏やかな結果にはならないだろう。
セラフィムは、机の引き出しから、セレイナの上奏文を取り出す。
かつて、彼女が書いた政務上の報告書。その字は美しく整っており、内容も無駄がなく完璧だった。
だがそれ以上にセラフィムが見たのは、その報告書に込められた想い。
彼女は自分の有能さを示すことで、王太子に価値のある存在だと認めて欲しい、そう願っていたのだろう。セレイナの考えや想いも、セラフィムは知らなかった。
セラフィムは、その想いを踏みにじっていたのだ。
彼女の報告書を受け取りながら、彼女の心を見ることなく。
セラフィムは、セレイナが書き綴った報告書を、引き出しの中へ戻した。
今になって気づく。自分の無責任さ・臆病さへの怒り。彼は、リージェリアを失いたくないという理由で、セレイナを見捨てた。
その結果、彼女は塔の上で、自らの命を絶とうとしたのだ。
☆
陽が一日の中でも、最も高い場所へ行こうとする頃。
彼は侍従からの報告を受けた。
「国王陛下が、お呼びです」
セラフィムは覚悟した。父王は、もうすべてを知っているのだろう。
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セラフィムは、自分が何を失うのかを理解していた。セレイナとの側妃関係は、当然のことながら解消しなければならない。そのほかにも、目には見えないものが、彼の手から零れ落ちてゆくはずだ。
リージェリアとの関係。
エリオスの信頼。
自分自身への尊敬。
そして、最も恐れること。
父王の中でのセラフィム王太子への評価。
『王の器ではない』
その烙印が、今、押されるかもしれない。
「わかった……」
そう返事をし、セラフィムは立ち上がった。その足取りは、鉛を付けたように重かった。
一目惚れから始まった恋。
ミレーユとの婚約解除。
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セレイナの側妃化。
そして、今、この瞬間。
すべてが、因果の糸で繋がっていた。
セラフィムの選択が、すべての始まりだった。
もし、ナルヴァ国に行かなかったなら。
もし、リージェリアに一目惚れしなかったなら。
もし、ミレーユとの婚約を守っていたなら。
もし、セレイナを見つめなかったなら。
重なってゆく『もし』という、違う選択をする過去と、した未来。
それは、振り返ることに意味を見出せない空想だ。
☆
王城の奥、執務室への道。
セラフィムはその内回廊を歩み、父王の執務室の扉の前に立った。
彼の人生の未来への審判が、その先には待っている。
それは光なのか、それとも闇なのか。
どちらであれ、穏やかな結果にはならないだろう。
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