104 / 107
現在
104 抱擁 ーChapter エリオス
しおりを挟む
返事を待たず、セレイナの部屋の扉を開けたエリオスは、そのまま一歩中へ入る。
部屋の中は薄暗かった。
火傷の痣を残さないための、紫外線対策なのだろう、窓には厚いカーテンが引かれ、外からの直射日光を遮断している。薄闇の中に、薬草の匂いが漂っている。
「殿下っ、お待ちください!」
エリオスの姿を認めたガレーニャが、薬の調合をしていた机の椅子から立ち上がり、慌てたように駆け寄り前に出た。両手を広げ、進路を塞ごうとする。
「セレイナ様は今、どなたともお会いになりたくないと」
「どけ」
怒りではない。ただ、有無を言わせぬ威圧を含む声。
ガレーニャの顔が強張ったが、彼女も一歩も退かない。
「殿下、お気持ちはわかります。ですが今のセレイナ様には」
「いいから、そこを通せ」
エリオスの目がガレーニャを射抜いた。その視線に、ガレーニャの身体が僅かに揺らぐ。暫くの間、無言でにらみ合いが続いた。
やがてガレーニャはゆっくりと身体を横へずらした。
諦念と言うより、何かをエリオスに託す。そんな目でエリオスを見つめながら。
もう一枚、奥の扉を開けると、ベッドで身を起こしていたセレイナの顔が、エリオスの方へ向いた。
右半分が、白い包帯で覆われている。
「……っ!」
セレイナの目が大きく見開かれた。慌てて顔を背け、両手で足を覆う薄いブランケットを引き寄せようとする。
「見ないでっ!」
その声は、悲痛にも、悲鳴に近い声だった。今までセレイナの口から、聞いたことのない声。
「いや……出て行って! 出て行ってください!」
エリオスは足を止めなかった。一歩、また一歩、ベッドへ近づいていく。
「お願い……お願いだから……」
セレイナの声がどんどん弱々しく、祈るように変わってゆく。ブランケットで顔を隠そうとしているが、その手が小刻みに揺れている。
エリオスはベッドの傍らに立ち、静かに微笑んだ。
そして腕を伸ばし、セレイナを抱きしめた。
「いやっ……見ないで……」
セレイナがその腕の中から離れようと、大きく足掻く。だが、エリオスは腕の力を一切、緩めなかった。
「会いたかった。セレイナ」
包帯の巻かれていない、彼女の左側の耳元で、エリオスは小さく呟く。
「見ないで。殿下、見ないで……お願い」
その言葉に、エリオスは答えなかった。
代わりに、顔を傾けた。そして、頬の包帯の上に、そっと唇を落とした。
「いけませんっ!」
部屋の隅から、ガレーニャの声が飛び、こちらへ駆け寄ろうとしている。
「感染症の――」
ガレーニャの言葉を遮り、エリオスはセレイナから身体を少し離し、
「愛しい人にそうすることを止める権利まで、医者にはないだろう?」
俯くセレイナの顔を見つめたまま、振り返らずに言う。その言葉に、ガレーニャの足が止まった。
「……そうですね。失礼いたしました」
少しの沈黙の後、ガレーニャの小さな声が返ってきた。
彼女は彼女なりに、エリオスが敢えてそうすることの意図を汲み取ったのだろう。
セレイナの身体は、まだ強張っている。顔を背けたまま、こちらを見ようとしない。
もう一度セレイナの身体を包んだエリオスは、首元の包帯に軽く唇を触れさせた。本当に触れるだけの、微かな口づけだった。
「セレイナはセレイナだ」
耳元で、静かに告げる。エリオスの腕の中で、セレイナの指先の力が徐々に抜けていき、強張りも少しずつ解けていくのが分かった。
「ここに居てくれる、それだけでいい。セレイナ、貴方の存在そのものが、俺の全てだ」
セレイナの身体から、ゆっくりと力が抜けていく。
「会いたかった。セレイナ」
エリオスはもう一度、同じ言葉を繰り返し、今度はきつく身体を抱きしめた。
セレイナは何も答えなかった。ただ、エリオスの胸に顔を埋め、静かに泣いていた。
☆
腕の中で重くなったセレイナを、エリオスはベッドに横たえた。泣き疲れたのか、目を閉じている。
薬の影響もあるのだろう。彼女は深い眠りについていた。
セレイナの身体の上にブランケットを掛けると、
「セレイナ。また会いに来る。それまでゆっくり眠るように」
そう彼女の耳元で囁き、エリオスは部屋を出た。
廊下に出て、扉が閉まったその瞬間。エリオスは足を止め、今の今まで崩さなかった笑顔を捨て、初めて悲痛に顔を歪ませた。壁に手をつき、俯いたまま動かない。エリオスの肩が、僅かばかり上下に震えていた。
廊下でシリルと共に待機していたオクターブが、一歩踏み出しかけて、やめた。
やがてエリオスは顔を上げると、深く息をつき、背筋を伸ばす。その顔からは、先ほどの感情が消えていた。何事もなかったかのように、再び扉を開けて部屋へ戻る。
そこに居たガレーニャは、調合し終えた薬を片付けていた手を止め、開いた扉の方を見る。そこに戻り立つエリオスに、今度はどうかしたのかと言うような顔を向けた。
「必要なものはあるか」
エリオスがガレーニャに向けた、唐突な問い。
「殿下」
「なんでもいい。地の果てだろうが、どこへでも行って取って来る。奪えるものなら奪って来る」
ガレーニャは眼鏡を押し上げ、少し考え込んだ。視線が宙を彷徨い、何かを思い出そうとしているようだった。
「……東辺境要地でしたら、東の国から沈香と紫紺が手に入るかと思います。この二つがあれば、傷の治癒が随分と早まります。痣の心配も軽減されるかと」
東の国。つい先日まで、その国境沿いにいたというのに。皮肉なものだ、とエリオスは思った。
「必ず用意する。最上級のものを」
「はい。ありがとうございます」
ガレーニャが頭を下げた。
エリオスはオクターブの方へ顔を向けた。
「今の件、手配を頼む。東辺境要地へ伝書を。沈香と紫紺、最上級のものを至急取り寄せろと」
「御意」
オクターブが深く頷いた。
その時、窓際の椅子で微睡んでいた伯爵夫人が、ふと目を開けた。部屋の入口に立つ人影に気づき、ぼんやりとした目がゆっくりと焦点を結んでいく。
廊下で待機していたシリルの姿を認めた瞬間、夫人の顔が崩れた。
「シリル……!」
椅子から転げ落ちるようにして立ち上がり、シリルの元へ駆け寄った。そのまま息子の胸に飛び込み、両腕を背中に回してしがみつく。声を殺して泣きながら、シリルの背中を撫でている。本当にここにいるのだと、確認するように。
「よかった……戻ってくれたのね」
シリルは黙って母を受け止めていた。夫人の肩に片手を置き、もう片方の手で背中をさすっている。
「はい。先ほど戻りました。長い間、留守にして申し訳ありませんでした」
伯爵夫人の顔に、抜け落ちていた表情が戻った。
セレイナが襲撃されてから、ずっと失われていた生気がその顔に宿った。
「セレイナが、セレイナが」
シリルに訴えるように、娘の名前をただ、ただ連呼する夫人に、シリルは諭すように言う。
「ええ、聞きました。でも大丈夫です。殿下方が必ずお力になってくれるでしょう」
その言葉でやっと、夫人はエリオスの存在を目に映した。
エリオスは夫人の目を見ながら大きく頷いた。
夫人はそれに対して、安堵したかのように、息子の腕の中でエリオスに向けて、深く首を垂れた。
☆
伯爵邸の玄関前、庇の下から一歩踏み出すと、晩夏の日差しがじりっと肌を焼く。真夏ほどの勢いはないが、それでも容赦なく照りつけてくる。午後近くの陽は高く、足元に落ちる影は短い。時折吹くぬるい風だけが、僅かに涼しさを増していた。
用意された馬の傍らで、エリオスは一度だけ振り返る。見送りに立った伯爵の顔には、相変わらず深い疲労が刻まれていたが、その瞳には先ほどよりも微かな力が宿っている。息子が無事に戻ったという安堵が、強張っていた表情をわずかに緩ませているようだった。
「また、こちらに立ち寄らせてくれ」
エリオスの声は、どこまでも静かだった。感情を削ぎ落としたような、起伏のない響き。
「もちろんでございます。いつでもお越しください」
伯爵は深々と頭を下げた。背中が丸まり、その姿は数日前よりも小さく見えた。
その頭が上がるのを待たず、エリオスは馬に跨り手綱を取る。同じように、オクターブも続く。
馬を走らせる蹄の音が石畳に響き、伯爵邸の門を抜けた。
街道を駆ける馬の上で、エリオスはただ一点、前方だけを見据えていた。
許さない、決して。
部屋の中は薄暗かった。
火傷の痣を残さないための、紫外線対策なのだろう、窓には厚いカーテンが引かれ、外からの直射日光を遮断している。薄闇の中に、薬草の匂いが漂っている。
「殿下っ、お待ちください!」
エリオスの姿を認めたガレーニャが、薬の調合をしていた机の椅子から立ち上がり、慌てたように駆け寄り前に出た。両手を広げ、進路を塞ごうとする。
「セレイナ様は今、どなたともお会いになりたくないと」
「どけ」
怒りではない。ただ、有無を言わせぬ威圧を含む声。
ガレーニャの顔が強張ったが、彼女も一歩も退かない。
「殿下、お気持ちはわかります。ですが今のセレイナ様には」
「いいから、そこを通せ」
エリオスの目がガレーニャを射抜いた。その視線に、ガレーニャの身体が僅かに揺らぐ。暫くの間、無言でにらみ合いが続いた。
やがてガレーニャはゆっくりと身体を横へずらした。
諦念と言うより、何かをエリオスに託す。そんな目でエリオスを見つめながら。
もう一枚、奥の扉を開けると、ベッドで身を起こしていたセレイナの顔が、エリオスの方へ向いた。
右半分が、白い包帯で覆われている。
「……っ!」
セレイナの目が大きく見開かれた。慌てて顔を背け、両手で足を覆う薄いブランケットを引き寄せようとする。
「見ないでっ!」
その声は、悲痛にも、悲鳴に近い声だった。今までセレイナの口から、聞いたことのない声。
「いや……出て行って! 出て行ってください!」
エリオスは足を止めなかった。一歩、また一歩、ベッドへ近づいていく。
「お願い……お願いだから……」
セレイナの声がどんどん弱々しく、祈るように変わってゆく。ブランケットで顔を隠そうとしているが、その手が小刻みに揺れている。
エリオスはベッドの傍らに立ち、静かに微笑んだ。
そして腕を伸ばし、セレイナを抱きしめた。
「いやっ……見ないで……」
セレイナがその腕の中から離れようと、大きく足掻く。だが、エリオスは腕の力を一切、緩めなかった。
「会いたかった。セレイナ」
包帯の巻かれていない、彼女の左側の耳元で、エリオスは小さく呟く。
「見ないで。殿下、見ないで……お願い」
その言葉に、エリオスは答えなかった。
代わりに、顔を傾けた。そして、頬の包帯の上に、そっと唇を落とした。
「いけませんっ!」
部屋の隅から、ガレーニャの声が飛び、こちらへ駆け寄ろうとしている。
「感染症の――」
ガレーニャの言葉を遮り、エリオスはセレイナから身体を少し離し、
「愛しい人にそうすることを止める権利まで、医者にはないだろう?」
俯くセレイナの顔を見つめたまま、振り返らずに言う。その言葉に、ガレーニャの足が止まった。
「……そうですね。失礼いたしました」
少しの沈黙の後、ガレーニャの小さな声が返ってきた。
彼女は彼女なりに、エリオスが敢えてそうすることの意図を汲み取ったのだろう。
セレイナの身体は、まだ強張っている。顔を背けたまま、こちらを見ようとしない。
もう一度セレイナの身体を包んだエリオスは、首元の包帯に軽く唇を触れさせた。本当に触れるだけの、微かな口づけだった。
「セレイナはセレイナだ」
耳元で、静かに告げる。エリオスの腕の中で、セレイナの指先の力が徐々に抜けていき、強張りも少しずつ解けていくのが分かった。
「ここに居てくれる、それだけでいい。セレイナ、貴方の存在そのものが、俺の全てだ」
セレイナの身体から、ゆっくりと力が抜けていく。
「会いたかった。セレイナ」
エリオスはもう一度、同じ言葉を繰り返し、今度はきつく身体を抱きしめた。
セレイナは何も答えなかった。ただ、エリオスの胸に顔を埋め、静かに泣いていた。
☆
腕の中で重くなったセレイナを、エリオスはベッドに横たえた。泣き疲れたのか、目を閉じている。
薬の影響もあるのだろう。彼女は深い眠りについていた。
セレイナの身体の上にブランケットを掛けると、
「セレイナ。また会いに来る。それまでゆっくり眠るように」
そう彼女の耳元で囁き、エリオスは部屋を出た。
廊下に出て、扉が閉まったその瞬間。エリオスは足を止め、今の今まで崩さなかった笑顔を捨て、初めて悲痛に顔を歪ませた。壁に手をつき、俯いたまま動かない。エリオスの肩が、僅かばかり上下に震えていた。
廊下でシリルと共に待機していたオクターブが、一歩踏み出しかけて、やめた。
やがてエリオスは顔を上げると、深く息をつき、背筋を伸ばす。その顔からは、先ほどの感情が消えていた。何事もなかったかのように、再び扉を開けて部屋へ戻る。
そこに居たガレーニャは、調合し終えた薬を片付けていた手を止め、開いた扉の方を見る。そこに戻り立つエリオスに、今度はどうかしたのかと言うような顔を向けた。
「必要なものはあるか」
エリオスがガレーニャに向けた、唐突な問い。
「殿下」
「なんでもいい。地の果てだろうが、どこへでも行って取って来る。奪えるものなら奪って来る」
ガレーニャは眼鏡を押し上げ、少し考え込んだ。視線が宙を彷徨い、何かを思い出そうとしているようだった。
「……東辺境要地でしたら、東の国から沈香と紫紺が手に入るかと思います。この二つがあれば、傷の治癒が随分と早まります。痣の心配も軽減されるかと」
東の国。つい先日まで、その国境沿いにいたというのに。皮肉なものだ、とエリオスは思った。
「必ず用意する。最上級のものを」
「はい。ありがとうございます」
ガレーニャが頭を下げた。
エリオスはオクターブの方へ顔を向けた。
「今の件、手配を頼む。東辺境要地へ伝書を。沈香と紫紺、最上級のものを至急取り寄せろと」
「御意」
オクターブが深く頷いた。
その時、窓際の椅子で微睡んでいた伯爵夫人が、ふと目を開けた。部屋の入口に立つ人影に気づき、ぼんやりとした目がゆっくりと焦点を結んでいく。
廊下で待機していたシリルの姿を認めた瞬間、夫人の顔が崩れた。
「シリル……!」
椅子から転げ落ちるようにして立ち上がり、シリルの元へ駆け寄った。そのまま息子の胸に飛び込み、両腕を背中に回してしがみつく。声を殺して泣きながら、シリルの背中を撫でている。本当にここにいるのだと、確認するように。
「よかった……戻ってくれたのね」
シリルは黙って母を受け止めていた。夫人の肩に片手を置き、もう片方の手で背中をさすっている。
「はい。先ほど戻りました。長い間、留守にして申し訳ありませんでした」
伯爵夫人の顔に、抜け落ちていた表情が戻った。
セレイナが襲撃されてから、ずっと失われていた生気がその顔に宿った。
「セレイナが、セレイナが」
シリルに訴えるように、娘の名前をただ、ただ連呼する夫人に、シリルは諭すように言う。
「ええ、聞きました。でも大丈夫です。殿下方が必ずお力になってくれるでしょう」
その言葉でやっと、夫人はエリオスの存在を目に映した。
エリオスは夫人の目を見ながら大きく頷いた。
夫人はそれに対して、安堵したかのように、息子の腕の中でエリオスに向けて、深く首を垂れた。
☆
伯爵邸の玄関前、庇の下から一歩踏み出すと、晩夏の日差しがじりっと肌を焼く。真夏ほどの勢いはないが、それでも容赦なく照りつけてくる。午後近くの陽は高く、足元に落ちる影は短い。時折吹くぬるい風だけが、僅かに涼しさを増していた。
用意された馬の傍らで、エリオスは一度だけ振り返る。見送りに立った伯爵の顔には、相変わらず深い疲労が刻まれていたが、その瞳には先ほどよりも微かな力が宿っている。息子が無事に戻ったという安堵が、強張っていた表情をわずかに緩ませているようだった。
「また、こちらに立ち寄らせてくれ」
エリオスの声は、どこまでも静かだった。感情を削ぎ落としたような、起伏のない響き。
「もちろんでございます。いつでもお越しください」
伯爵は深々と頭を下げた。背中が丸まり、その姿は数日前よりも小さく見えた。
その頭が上がるのを待たず、エリオスは馬に跨り手綱を取る。同じように、オクターブも続く。
馬を走らせる蹄の音が石畳に響き、伯爵邸の門を抜けた。
街道を駆ける馬の上で、エリオスはただ一点、前方だけを見据えていた。
許さない、決して。
13
あなたにおすすめの小説
壊れた心はそのままで ~騙したのは貴方?それとも私?~
志波 連
恋愛
バージル王国の公爵令嬢として、優しい両親と兄に慈しまれ美しい淑女に育ったリリア・サザーランドは、貴族女子学園を卒業してすぐに、ジェラルド・パーシモン侯爵令息と結婚した。
政略結婚ではあったものの、二人はお互いを信頼し愛を深めていった。
社交界でも仲睦まじい夫婦として有名だった二人は、マーガレットという娘も授かり、順風満帆な生活を送っていた。
ある日、学生時代の友人と旅行に行った先でリリアは夫が自分でない女性と、夫にそっくりな男の子、そして娘のマーガレットと仲よく食事をしている場面に遭遇する。
ショックを受けて立ち去るリリアと、追いすがるジェラルド。
一緒にいた子供は確かにジェラルドの子供だったが、これには深い事情があるようで……。
リリアの心をなんとか取り戻そうと友人に相談していた時、リリアがバルコニーから転落したという知らせが飛び込んだ。
ジェラルドとマーガレットは、リリアの心を取り戻す決心をする。
そして関係者が頭を寄せ合って、ある破天荒な計画を遂行するのだった。
王家までも巻き込んだその作戦とは……。
他サイトでも掲載中です。
コメントありがとうございます。
タグのコメディに反対意見が多かったので修正しました。
必ず完結させますので、よろしくお願いします。
嘘をありがとう
七辻ゆゆ
恋愛
「まあ、なんて図々しいのでしょう」
おっとりとしていたはずの妻は、辛辣に言った。
「要するにあなた、貴族でいるために政略結婚はする。けれど女とは別れられない、ということですのね?」
妻は言う。女と別れなくてもいい、仕事と嘘をついて会いに行ってもいい。けれど。
「必ず私のところに帰ってきて、子どもをつくり、よい夫、よい父として振る舞いなさい。神に嘘をついたのだから、覚悟を決めて、その嘘を突き通しなさいませ」
【完結】さよならのかわりに
たろ
恋愛
大好きな婚約者に最後のプレゼントを用意した。それは婚約解消すること。
だからわたしは悪女になります。
彼を自由にさせてあげたかった。
彼には愛する人と幸せになって欲しかった。
わたくしのことなど忘れて欲しかった。
だってわたくしはもうすぐ死ぬのだから。
さよならのかわりに……
ため息ひとつ――王宮に散る花びらのように
柴田はつみ
恋愛
「離縁を、お願いしたいのです」
笑顔で、震えずに、エレナはそう言った。
夫は言葉を失った。泣いてくれれば、怒ってくれれば、まだ受け止め方があった。しかしあの静けさは、エレナがもう十分に泣き終わった後の顔だと、ヴィクトルにはわかった。
幼なじみと結ばれた三年間。すれ違いは静かに始まり、深紅のドレスの令嬢によって加速した。ため息を飲み込み、完璧な微笑みを保ち続けた公爵夫人が、最後に選んだのは――。
王宮に散る花びらのような、夫婦の崩壊と再生の物語。
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
【3月中――完結!】
積み上がった伏線の回収目前!!
夫にも子どもにも、私は選ばれなかった。
長年の裏切りを抱え、離縁状を置いて家を出た――。
待っていたのは、凍てつく絶望。
けれど同時に、それは残酷な運命の扉が開く瞬間でもあった。
「夫は愛人と生きればいい。
今さら縋られても、裏切ったあなたを許す力など残っていない」
それでも私は誓う――
「子どもたちの心だけは、必ず取り戻す」
歪で、完全な幸福――それとも、破滅。
“石”に翻弄された者たちの、狂おしい物語。
ご安心を、2度とその手を求める事はありません
ポチ
恋愛
大好きな婚約者様。 ‘’愛してる‘’ その言葉私の宝物だった。例え貴方の気持ちが私から離れたとしても。お飾りの妻になるかもしれないとしても・・・
それでも、私は貴方を想っていたい。 独り過ごす刻もそれだけで幸せを感じられた。たった一つの希望
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる