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石畳の坂を下りきった先のドックに、その船は停まっていた。
近くで見ると、それは船というより、洋上に浮かぶ鉄の要塞のようだった。
船体は黒く煤け、無数の鉄板が継ぎ接ぎされている。塗装は剥げ落ち、赤錆が浮いているが、それが逆に歴戦の猛者のような威圧感を放っていた。
船首には、錆びついた亀の像が飾られている。船名板には、ペンキの擦れた文字で『ラスティ・タートル号』とあった。
レンとアリアはその巨体のタラップをゆっくりと上がり、甲板に足を踏み入れた。
その先の甲板の上では、油まみれの作業着を着た大男が一人、巨大なパイプをスパナで殴りつけていた。
「くそっ! また詰まりやがったか! このポンコツめ!」
男は汚れた手ぬぐいで額の汗を拭い、苛立たしげに機械を蹴り飛ばした。
短い赤茶けた髪に無精髭。腕には錨の刺青。いかにも気性の荒そうな海の男だ。
「……失礼。船長か?」
男は濃い茶の瞳を動かし、ギロリと二人を睨みつけた。
「あぁ? なんだ若造。観光客ならあっちの桟橋に行きな。ここはガキの遊び場じゃねえぞ」
「商談があって来た。この船を雇いたい」
「雇う?」
男は鼻で笑い、足元の酒瓶を拾い上げて、豪快に呷った。
「悪いが、うちはサルベージ専門だ。沈んだ荷物は引き上げるが、生きた人間は運ばねぇ。それに今、機嫌が悪いんだ。このボロエンジンのせいでな」
「エンジンじゃない。吸気弁のタイミングがずれている」
レンが即座に指摘すると、男は驚いたように眉を上げた。
「なんだと?」
「さっきからの排気音だ。三拍子ごとにノッキングしている。スパナで叩いても直らない。……貸してみろ」
レンは男の手からスパナをひったくると、断りもなく機関部へと飛び乗った。
「……っ! おい……っ」
制止する間もなかった。レンは迷いなくバルブの一つを締め上げ、別のパイプをコンコンと叩いて圧力計を確認した。
「回してみてくれ」
男はレンを軽く睨みながらも、言われた通り半信半疑でレバーを引いた。
途端、ドシュッ! と蒸気が噴き出す。
先ほどまで咳き込むようだったエンジンの音が、ドッドッドッ……と力強く、規則正しい重低音へと変わった。
「……へぇ。いい腕してやがる」
男の目が変わった。職人が職人を認める目だ。男は口角を上げながら、レンに向かって手を差し出した。
「俺はガルド。この亀の船長だ。……で? お前さんたち、どこへ行きたいんだ?」
「俺はレン、連れはアリアだ。行き先は、アストロラビウム」
レンが短く告げた瞬間、ガルドの表情が凍りついた。
「……正気か? あそこは墓場だぞ」
「知っています。それでも行かなくちゃいけないの」
それまで黙っていたアリアがガルドの傍へ歩み寄る。海風に薄紫のスカートが靡く。
「お願い、船長さん。私たちをあそこへ連れて行って」
ガルドはアリアの真剣な碧眼を見つめ、ほんのりと頬を染め……やがてポリポリと頭をかいた。
「なぁ、嬢ちゃん、悪いことは言わねぇ。やめときな。今の季節、あの海域は荒れる。それに……」
ガルドが言葉を濁していた、その時だった。
ふと、アリアがドックの入り口の方へ視線を向け、小さく息を呑んだ。
そこに立っていたのは、灰色のフードマントを着た数人の男たちが居た。彼らは壁に寄りかかり、一般人のふりをして雑談をしているようだが、その視線は明らかにこちらを見ている。
海風が強く吹き、一人のマントの裾がめくれ上がる。マントの内側、ベルトのバックルに光る銀色の紋章。機械的な歯車と、それを垂直に貫く剣の構図。
それを見たアリアは、顔面蒼白で小刻みに身体を震わせ始めた。
「……レン」
「どうした?」
「あの人たち……」
アリアの視線を追って、レンとガルドもドックの入り口を見る。ガルドが目を細め、不快そうに舌打ちをした。
「……ありゃ、軍の暗部だな。表立った行動はしねぇ連中だ。しかもこんな最果ての港に来るなんてこった、通常ありえねぇ」
ガルドは眉をひそめ、顎でそちらをしゃくった。
「おい。お前ら、もしかして追われてるのか?」
「いや。覚えはない」
レンは首を横に振った。確かに、追われる覚えはないはずだった。自分たちはただ、日誌を読み解くために、旅をしているだけなのだから。だが隣にいるアリアは、レンのシャツの裾を強く握りしめ、青ざめた唇を開いた。
「あれは、私の母様や家族……お婆様や皆……ジプシーのお姉さんたちや兄弟を殺した……」
「なんだと?」
レンは驚愕に目を見開き、アリアを見た。彼女の瞳には、過去に経験したのだろう深い恐怖と、消えない憎しみが渦巻いている。それを聞いていたガルドが、ギリっと奥歯を鳴らし吐き捨てるように言う。
「……女子供を手にかけた部隊ってことか。クソ野郎どもが……っ」
ガルドが軍の暗部と呼んだ男たちが、何やら話し込んでいる。その内に、その中の一人が大股で、ラスティ・タートル号の方へ近づいて来た。
レンは咄嗟に一歩進み出ると、震えるアリアを背に庇うようにして立ち、眼下を見る。アリアは顔を俯け、前に立つレンの背中のシャツを先ほどよりも、強く握りしめた。
「おい、そこの二人! こちらへ来てもらえるか?」
船体を見上げた薄い灰色のマントの男が、フードから除く目をギロリと動かし大声で呼びかけた。
レンはぐっと拳を握りしめ、その男をじっと見下ろす。こいつらが何者なのか、目的が何なのかは分からない。だが、ひとつだけハッキリしていることがある。
アリアをこんなにも怯えさせる連中に、彼女を渡すわけにはいかない。
「船長、取引だ!」
レンは叫び、懐から金貨を一枚、ガルドに向かって弾いた。ガルドはそれを片手で見事に掴み取る。
「この船のエンジン、俺が道中ずっと面倒を見る。最高の状態にしてやる。だから乗せてくれ!」
レンがそう言うと、薄い灰色のマントの男は懐に手を入れた。そして、チラリと銃の柄をレンに見せる。どうやら威圧して止めるつもりなのだろう。それを見たガルドは、ニヤリと凶悪な笑みを浮かべた。
「おいおい、軍の特務じゃねぇか。とんでもねぇ客を連れてきやがって」
彼は金貨をポケットにねじ込むと、操舵席へと飛び乗った。
「野郎ども、出航だ! もやい綱を解け!」
甲板の下から、数人の船員たちがわらわらと出てくる。
レンは震えるアリアを抱きかかえるようにして、素早く船尾から船首の方へ移動する。
軍の暗部だと思われる男たちは、レンの行動に虚を突かれたように、慌てた様子で駆け寄って来た。
一人が威嚇射撃のために銃を空へ向けたが、もう遅い。ガルドが蒸気弁を全開にした。
「捕まってな! 一度引き受けた厄介ごとだ! 行くぜ! ヨー! ホー!」
ガルドが雄叫びのような声をあげると、
ヴォォーーー!!
巨大な汽笛が轟き、意図的に排出された黒煙がドックを包み込む。
「ゲホッ、待て! 女をおいていけ! 死ぬぞ!」
煙の向こうで、男たちの怒声が聞こえた。
スクリューが海水を激しく掻き回し、鉄の巨体が岸壁から離れていく。アリアは甲板の手すりに掴まり、煙に巻かれるドックを見下ろした。灰色のマントの男たちが、悔しそうに何かを無線機へ怒鳴っているのが見えた。
「……大丈夫か?」
レンが煤けた顔で立ち上がり、手を差し伸べる。アリアはその手を取り、まだ震えの残る指で強く握り返した。
「ええ……でもこれで、完全に敵に回したわね」
「臨むところだ。……あんな連中に、お前を渡す理由もない」
彼女は視線を前へ向けた。レンはひとつだけ、アリアの髪を撫でる。
二人の後ろには、遮るもののない広大な海原が広がっている。
マントの男たちは、やがて黒煙の向こうへ消えていった。
アリアの肩から力が抜けてゆく。だが指はまだ、レンのシャツを離さない。レンもまた手すり越しに港を確かめ、ようやく息を吐いた。
なぜ、アリアの母や一団を殺した連中が、この港にいる? しかも『女を置いていけ』と叫んだ。狙いはアリアなのか?
レンの脳裏に、わからないことが次々と積み上がってゆく。
それでもレンは、未だ小さく震えるアリアに、
「必ず、守る。一人じゃない」
そう言葉を零すと、そっと優しくアリアを自分の腕の中に入れた。
アリアは一瞬、身体をピクリと動かしたが、レンの胸に頭を軽く預けた。
「うん、ありがとう……レン」
そんな二人の空気を裂くように
「ようこそ、イカれたサルベージ船へ!」
操舵席からガルドの大声が飛んできた。
「次はアストロラビウムだ。しっかり掴まってろよ、嵐になるぞ!」
『ラスティ・タートル号』は白波を蹴立て、南の水平線を目指して突き進む。
もう後戻りはできない。
アリアの父の背中を追う旅は、いよいよ最終目的地へと突き進んで行く。
近くで見ると、それは船というより、洋上に浮かぶ鉄の要塞のようだった。
船体は黒く煤け、無数の鉄板が継ぎ接ぎされている。塗装は剥げ落ち、赤錆が浮いているが、それが逆に歴戦の猛者のような威圧感を放っていた。
船首には、錆びついた亀の像が飾られている。船名板には、ペンキの擦れた文字で『ラスティ・タートル号』とあった。
レンとアリアはその巨体のタラップをゆっくりと上がり、甲板に足を踏み入れた。
その先の甲板の上では、油まみれの作業着を着た大男が一人、巨大なパイプをスパナで殴りつけていた。
「くそっ! また詰まりやがったか! このポンコツめ!」
男は汚れた手ぬぐいで額の汗を拭い、苛立たしげに機械を蹴り飛ばした。
短い赤茶けた髪に無精髭。腕には錨の刺青。いかにも気性の荒そうな海の男だ。
「……失礼。船長か?」
男は濃い茶の瞳を動かし、ギロリと二人を睨みつけた。
「あぁ? なんだ若造。観光客ならあっちの桟橋に行きな。ここはガキの遊び場じゃねえぞ」
「商談があって来た。この船を雇いたい」
「雇う?」
男は鼻で笑い、足元の酒瓶を拾い上げて、豪快に呷った。
「悪いが、うちはサルベージ専門だ。沈んだ荷物は引き上げるが、生きた人間は運ばねぇ。それに今、機嫌が悪いんだ。このボロエンジンのせいでな」
「エンジンじゃない。吸気弁のタイミングがずれている」
レンが即座に指摘すると、男は驚いたように眉を上げた。
「なんだと?」
「さっきからの排気音だ。三拍子ごとにノッキングしている。スパナで叩いても直らない。……貸してみろ」
レンは男の手からスパナをひったくると、断りもなく機関部へと飛び乗った。
「……っ! おい……っ」
制止する間もなかった。レンは迷いなくバルブの一つを締め上げ、別のパイプをコンコンと叩いて圧力計を確認した。
「回してみてくれ」
男はレンを軽く睨みながらも、言われた通り半信半疑でレバーを引いた。
途端、ドシュッ! と蒸気が噴き出す。
先ほどまで咳き込むようだったエンジンの音が、ドッドッドッ……と力強く、規則正しい重低音へと変わった。
「……へぇ。いい腕してやがる」
男の目が変わった。職人が職人を認める目だ。男は口角を上げながら、レンに向かって手を差し出した。
「俺はガルド。この亀の船長だ。……で? お前さんたち、どこへ行きたいんだ?」
「俺はレン、連れはアリアだ。行き先は、アストロラビウム」
レンが短く告げた瞬間、ガルドの表情が凍りついた。
「……正気か? あそこは墓場だぞ」
「知っています。それでも行かなくちゃいけないの」
それまで黙っていたアリアがガルドの傍へ歩み寄る。海風に薄紫のスカートが靡く。
「お願い、船長さん。私たちをあそこへ連れて行って」
ガルドはアリアの真剣な碧眼を見つめ、ほんのりと頬を染め……やがてポリポリと頭をかいた。
「なぁ、嬢ちゃん、悪いことは言わねぇ。やめときな。今の季節、あの海域は荒れる。それに……」
ガルドが言葉を濁していた、その時だった。
ふと、アリアがドックの入り口の方へ視線を向け、小さく息を呑んだ。
そこに立っていたのは、灰色のフードマントを着た数人の男たちが居た。彼らは壁に寄りかかり、一般人のふりをして雑談をしているようだが、その視線は明らかにこちらを見ている。
海風が強く吹き、一人のマントの裾がめくれ上がる。マントの内側、ベルトのバックルに光る銀色の紋章。機械的な歯車と、それを垂直に貫く剣の構図。
それを見たアリアは、顔面蒼白で小刻みに身体を震わせ始めた。
「……レン」
「どうした?」
「あの人たち……」
アリアの視線を追って、レンとガルドもドックの入り口を見る。ガルドが目を細め、不快そうに舌打ちをした。
「……ありゃ、軍の暗部だな。表立った行動はしねぇ連中だ。しかもこんな最果ての港に来るなんてこった、通常ありえねぇ」
ガルドは眉をひそめ、顎でそちらをしゃくった。
「おい。お前ら、もしかして追われてるのか?」
「いや。覚えはない」
レンは首を横に振った。確かに、追われる覚えはないはずだった。自分たちはただ、日誌を読み解くために、旅をしているだけなのだから。だが隣にいるアリアは、レンのシャツの裾を強く握りしめ、青ざめた唇を開いた。
「あれは、私の母様や家族……お婆様や皆……ジプシーのお姉さんたちや兄弟を殺した……」
「なんだと?」
レンは驚愕に目を見開き、アリアを見た。彼女の瞳には、過去に経験したのだろう深い恐怖と、消えない憎しみが渦巻いている。それを聞いていたガルドが、ギリっと奥歯を鳴らし吐き捨てるように言う。
「……女子供を手にかけた部隊ってことか。クソ野郎どもが……っ」
ガルドが軍の暗部と呼んだ男たちが、何やら話し込んでいる。その内に、その中の一人が大股で、ラスティ・タートル号の方へ近づいて来た。
レンは咄嗟に一歩進み出ると、震えるアリアを背に庇うようにして立ち、眼下を見る。アリアは顔を俯け、前に立つレンの背中のシャツを先ほどよりも、強く握りしめた。
「おい、そこの二人! こちらへ来てもらえるか?」
船体を見上げた薄い灰色のマントの男が、フードから除く目をギロリと動かし大声で呼びかけた。
レンはぐっと拳を握りしめ、その男をじっと見下ろす。こいつらが何者なのか、目的が何なのかは分からない。だが、ひとつだけハッキリしていることがある。
アリアをこんなにも怯えさせる連中に、彼女を渡すわけにはいかない。
「船長、取引だ!」
レンは叫び、懐から金貨を一枚、ガルドに向かって弾いた。ガルドはそれを片手で見事に掴み取る。
「この船のエンジン、俺が道中ずっと面倒を見る。最高の状態にしてやる。だから乗せてくれ!」
レンがそう言うと、薄い灰色のマントの男は懐に手を入れた。そして、チラリと銃の柄をレンに見せる。どうやら威圧して止めるつもりなのだろう。それを見たガルドは、ニヤリと凶悪な笑みを浮かべた。
「おいおい、軍の特務じゃねぇか。とんでもねぇ客を連れてきやがって」
彼は金貨をポケットにねじ込むと、操舵席へと飛び乗った。
「野郎ども、出航だ! もやい綱を解け!」
甲板の下から、数人の船員たちがわらわらと出てくる。
レンは震えるアリアを抱きかかえるようにして、素早く船尾から船首の方へ移動する。
軍の暗部だと思われる男たちは、レンの行動に虚を突かれたように、慌てた様子で駆け寄って来た。
一人が威嚇射撃のために銃を空へ向けたが、もう遅い。ガルドが蒸気弁を全開にした。
「捕まってな! 一度引き受けた厄介ごとだ! 行くぜ! ヨー! ホー!」
ガルドが雄叫びのような声をあげると、
ヴォォーーー!!
巨大な汽笛が轟き、意図的に排出された黒煙がドックを包み込む。
「ゲホッ、待て! 女をおいていけ! 死ぬぞ!」
煙の向こうで、男たちの怒声が聞こえた。
スクリューが海水を激しく掻き回し、鉄の巨体が岸壁から離れていく。アリアは甲板の手すりに掴まり、煙に巻かれるドックを見下ろした。灰色のマントの男たちが、悔しそうに何かを無線機へ怒鳴っているのが見えた。
「……大丈夫か?」
レンが煤けた顔で立ち上がり、手を差し伸べる。アリアはその手を取り、まだ震えの残る指で強く握り返した。
「ええ……でもこれで、完全に敵に回したわね」
「臨むところだ。……あんな連中に、お前を渡す理由もない」
彼女は視線を前へ向けた。レンはひとつだけ、アリアの髪を撫でる。
二人の後ろには、遮るもののない広大な海原が広がっている。
マントの男たちは、やがて黒煙の向こうへ消えていった。
アリアの肩から力が抜けてゆく。だが指はまだ、レンのシャツを離さない。レンもまた手すり越しに港を確かめ、ようやく息を吐いた。
なぜ、アリアの母や一団を殺した連中が、この港にいる? しかも『女を置いていけ』と叫んだ。狙いはアリアなのか?
レンの脳裏に、わからないことが次々と積み上がってゆく。
それでもレンは、未だ小さく震えるアリアに、
「必ず、守る。一人じゃない」
そう言葉を零すと、そっと優しくアリアを自分の腕の中に入れた。
アリアは一瞬、身体をピクリと動かしたが、レンの胸に頭を軽く預けた。
「うん、ありがとう……レン」
そんな二人の空気を裂くように
「ようこそ、イカれたサルベージ船へ!」
操舵席からガルドの大声が飛んできた。
「次はアストロラビウムだ。しっかり掴まってろよ、嵐になるぞ!」
『ラスティ・タートル号』は白波を蹴立て、南の水平線を目指して突き進む。
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