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VSインキュバス

グリオスご立腹

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   ◇ ◇ ◇

「大丈夫、グリオス? 喉乾いてない? 俺、持ってくるよ?」

「……」

「もしかして喉やられちゃった? いっぱい喘いでたもんね。そう思ってさ、さっき喉にいい果物買ってきたんだ。味見してみたけど美味しかったよ。良かったら皮向いて切ってあげるよ」

「……」

「うう……ヤり過ぎてごめんってー! もうしないからぁぁ……っ」

 巨大ローバーが巣食う森を抜けて、近くの街に到着してから三日目。
 グリオスはベッドに横たわり、壁と向かい合いながら無言を貫いていた。

 背後でエルジュが嘆いても、泣きついても、機嫌を取ってきても、一切反応しない。
 ちゃんと声は聞こえている。何を言っているかも理解できる。やりすぎたと反省しているのも分かる。

 だが、許してやろうかという気にはまったくなれなかった。

 苛立ちと怒りの空気をグリオスが漂わせているのをどうにかしたくて、エルジュは根負けせずに許しを請い続ける。が、

「だって、ローバーのせいでエロくなったグリオス、すっっっごかったから! 宿でも自分から積極的にオレの舐めてくれるし、上に乗って強請りながら腰振ってくれるし、いっぱいイっても欲しがってくれたし、素に戻った後も感じまくってエロ過ぎたし――」

「それ以上言うなぁぁぁぁぁっ! あれは事故だし、俺の意思でやったことじゃない。体が魔物のせいで一時的に淫乱になっただけで、あんなふしだらな姿がいつもの俺だと思うな。ずっと魔物の影響を引きずっていただけだ。それにもう終わったことだ。頼むから忘れてくれ……っ」

 言いながらここ数日の有り様が頭をよぎり、グリオスは頭を抱えてうずくまる。

 とにかくエルジュが欲しくて、飢えるままに二日間も肌を合わせ続けてしまった。

 魔物の影響が残っていたのは宿に来て一晩を過ごしたぐらいまで。
 朝になって目覚めた時には、どうしようもなく抗えない疼きは収まっていた。

 だが起床したエルジュが事後の姿を晒したままのグリオスを見た途端、覆い被さって行為を始めてしまい、そこから体が勝手に感じて止まらなくなって――時折水と簡単な食事を与えられるだけで、あとは寝て交わってを昼夜問わずに繰り返した。

 素の自分のままでやらかしてしまった――自分が信じられず、グリオスは活動する気力を失っていた。

 まだ昼間。本来なら寝ている暇はないと宿を引き払い、目的地に向かって突き進むのだが、ヤり続けたせいで心身が疲弊し、グリオスは気力を振り絞ることができなかった。
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