そこにワナがあればハマるのが礼儀でしょ!~ビッチ勇者とガチムチ戦士のエロ冒険譚~

天岸 あおい

文字の大きさ
25 / 49
VSインキュバス

身に起きている異変

しおりを挟む
 夢の中とはいえ、丸腰で魔物と対峙するのは厳しい。
 武器は己の体だけ。いつ襲われても反撃できるように、グリオスは腰を落として構えを取る。

 殺気立つグリオスとは反対に、インキュバスは緩やかに着地する余裕を見せながら、微笑みを崩さず親しげな空気をまとってくる。

「君は素直ではないねえ。本当はもっと抱かれたいのに、その思いを無理に捻じ伏せて強がり続けている。我ら魔族の淫靡な力に何度も侵されながら、想う男の陰茎でたっぷりと可愛がられて……普通の人間ならば我を失い、快楽を求めるだけの獣に成り下がるのだがな。よく自分を保てているのは素晴らしいことだ」

 声に抑揚をつけて大仰に告げてくるインキュバスをグリオスは睨みつける。
 苛立ちが止まらず、湧き上がるまま表に出していたが、

「……飽きられ、離れてしまうことを恐れているのだな。今の自分だからこの関係を続けていられるのに、感じるままに愛されたいと望んでしまえば、麗しの勇者が離れていく……健気なものだな、戦士グリオス」

 違う。ふざけたことを言うな!

 怒りのあまりに唇が戦慄くばかりで声が出せない。
 心の中で怒声を放つグリオスへ、インキュバスが一歩近づく。

「気づいているか? お前の体に魔性が宿り始めていることを」

「魔性、だと?」

「目障りな光の加護を宿した勇者を堕とすための種を、庇ったお前が代わりに宿しているのだよ。勇者の精でいくらかは中和されているが、そろそろ間に合わなくなってきている。自覚がないとは言わせんぞ?」

 出まかせを……と跳ねのける言葉を放てない。

 インキュバスの背後で流れ続ける昨日の光景の夢が、グリオスにそれが真実なのだと突き付けてくる。

 ローバーの体液の効果が消えた後も、ずっと体が疼いて、乱れる自分を止められなかった。
 寝ても覚めても終わらない行為に歓喜して、中で放たれる熱に酔いしれ、無骨な体を貪るエルジュの恍惚の笑みに胸が昂り――自分が自分でなくなっていた。

 もしインキュバスの言う通りならば、間もなく自分が魔に染まり、普段通りにエルジュが抱けば魔に堕ちてしまう。

 グリオスの足が一歩下がる。
 気圧されていることを自覚させられ、思わずギリリと奥歯を強く噛み締める。

 しかし動揺を抑えてグリオスは心を立て直す。

「ご丁寧にわざわざそれを教えに来たのか? 魔王の下僕が、主を倒されまいと俺たちを惑わしにきたのだろうが、俺は魔の者に耳を傾けはしない」

「それは残念な誤解をしているな。俺は確かに魔王の配下ではあるが、命を捧げる気はない。ただお前が美味なる欲に身を焦がし、芳しい匂いを放っておったから引き寄せられただけだ」

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない

砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。 自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。 ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。 とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。 恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。 ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。 落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!? 最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。 12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

溺愛の加速が尋常じゃない!?~味方作りに全振りしたら兄たちに溺愛されました~

液体猫(299)
BL
毎日AM2時10分投稿 【《血の繋がりは"絶対"ではない。》この言葉を胸に、末っ子クリスは過保護な兄たちに溺愛されながら、大好きな四男と幸せに暮らす】  アルバディア王国の第五皇子クリスが目を覚ましたとき、九年前へと戻っていた。  巻き戻す前の世界とは異なるけれど同じ場所で、クリスは生き残るために知恵を振り絞る。  かわいい末っ子が過剰なまでにかわいがられて溺愛されていく──  やり直しもほどほどに。罪を着せた者への復讐はついで。そんな軽い気持ちで始まった新たな人生はコミカル&シリアス。だけどほのぼのとしたハッピーエンド確定物語。  主人公は後に18歳へと成長します(*・ω・)*_ _)ペコリ ⚠️濡れ場のサブタイトルに*のマークがついてます。冒頭のみ重い展開あり。それ以降はコミカルでほのぼの✌ ⚠️本格的な塗れ場シーンは三章(18歳になって)からとなります。 ⚠️若干の謎解き要素を含んでいますが、オマケ程度です!

世界を救ったあと、勇者は盗賊に逃げられました

芦田オグリ
BL
「ずっと、ずっと好きだった」 魔王討伐の祝宴の夜。 英雄の一人である《盗賊》ヒューは、一人静かに酒を飲んでいた。そこに現れた《勇者》アレックスに秘めた想いを告げられ、抱き締められてしまう。 酔いと熱に流され、彼と一夜を共にしてしまうが、盗賊の自分は勇者に相応しくないと、ヒューはその腕からそっと抜け出し、逃亡を決意した。 その体は魔族の地で浴び続けた《魔瘴》により、静かに蝕まれていた。 一方アレックスは、世界を救った栄誉を捨て、たった一人の大切な人を追い始める。 これは十年の想いを秘めた勇者パーティーの《勇者》と、病を抱えた《盗賊》の、世界を救ったあとの話。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

Sランク冒険者クロードは吸血鬼に愛される

あさざきゆずき
BL
ダンジョンで僕は死にかけていた。傷口から大量に出血していて、もう助かりそうにない。そんなとき、人間とは思えないほど美しくて強い男性が現れた。

【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件

白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。 最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。 いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。

処理中です...