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VSインキュバス
身に起きている異変
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夢の中とはいえ、丸腰で魔物と対峙するのは厳しい。
武器は己の体だけ。いつ襲われても反撃できるように、グリオスは腰を落として構えを取る。
殺気立つグリオスとは反対に、インキュバスは緩やかに着地する余裕を見せながら、微笑みを崩さず親しげな空気をまとってくる。
「君は素直ではないねえ。本当はもっと抱かれたいのに、その思いを無理に捻じ伏せて強がり続けている。我ら魔族の淫靡な力に何度も侵されながら、想う男の陰茎でたっぷりと可愛がられて……普通の人間ならば我を失い、快楽を求めるだけの獣に成り下がるのだがな。よく自分を保てているのは素晴らしいことだ」
声に抑揚をつけて大仰に告げてくるインキュバスをグリオスは睨みつける。
苛立ちが止まらず、湧き上がるまま表に出していたが、
「……飽きられ、離れてしまうことを恐れているのだな。今の自分だからこの関係を続けていられるのに、感じるままに愛されたいと望んでしまえば、麗しの勇者が離れていく……健気なものだな、戦士グリオス」
違う。ふざけたことを言うな!
怒りのあまりに唇が戦慄くばかりで声が出せない。
心の中で怒声を放つグリオスへ、インキュバスが一歩近づく。
「気づいているか? お前の体に魔性が宿り始めていることを」
「魔性、だと?」
「目障りな光の加護を宿した勇者を堕とすための種を、庇ったお前が代わりに宿しているのだよ。勇者の精でいくらかは中和されているが、そろそろ間に合わなくなってきている。自覚がないとは言わせんぞ?」
出まかせを……と跳ねのける言葉を放てない。
インキュバスの背後で流れ続ける昨日の光景の夢が、グリオスにそれが真実なのだと突き付けてくる。
ローバーの体液の効果が消えた後も、ずっと体が疼いて、乱れる自分を止められなかった。
寝ても覚めても終わらない行為に歓喜して、中で放たれる熱に酔いしれ、無骨な体を貪るエルジュの恍惚の笑みに胸が昂り――自分が自分でなくなっていた。
もしインキュバスの言う通りならば、間もなく自分が魔に染まり、普段通りにエルジュが抱けば魔に堕ちてしまう。
グリオスの足が一歩下がる。
気圧されていることを自覚させられ、思わずギリリと奥歯を強く噛み締める。
しかし動揺を抑えてグリオスは心を立て直す。
「ご丁寧にわざわざそれを教えに来たのか? 魔王の下僕が、主を倒されまいと俺たちを惑わしにきたのだろうが、俺は魔の者に耳を傾けはしない」
「それは残念な誤解をしているな。俺は確かに魔王の配下ではあるが、命を捧げる気はない。ただお前が美味なる欲に身を焦がし、芳しい匂いを放っておったから引き寄せられただけだ」
武器は己の体だけ。いつ襲われても反撃できるように、グリオスは腰を落として構えを取る。
殺気立つグリオスとは反対に、インキュバスは緩やかに着地する余裕を見せながら、微笑みを崩さず親しげな空気をまとってくる。
「君は素直ではないねえ。本当はもっと抱かれたいのに、その思いを無理に捻じ伏せて強がり続けている。我ら魔族の淫靡な力に何度も侵されながら、想う男の陰茎でたっぷりと可愛がられて……普通の人間ならば我を失い、快楽を求めるだけの獣に成り下がるのだがな。よく自分を保てているのは素晴らしいことだ」
声に抑揚をつけて大仰に告げてくるインキュバスをグリオスは睨みつける。
苛立ちが止まらず、湧き上がるまま表に出していたが、
「……飽きられ、離れてしまうことを恐れているのだな。今の自分だからこの関係を続けていられるのに、感じるままに愛されたいと望んでしまえば、麗しの勇者が離れていく……健気なものだな、戦士グリオス」
違う。ふざけたことを言うな!
怒りのあまりに唇が戦慄くばかりで声が出せない。
心の中で怒声を放つグリオスへ、インキュバスが一歩近づく。
「気づいているか? お前の体に魔性が宿り始めていることを」
「魔性、だと?」
「目障りな光の加護を宿した勇者を堕とすための種を、庇ったお前が代わりに宿しているのだよ。勇者の精でいくらかは中和されているが、そろそろ間に合わなくなってきている。自覚がないとは言わせんぞ?」
出まかせを……と跳ねのける言葉を放てない。
インキュバスの背後で流れ続ける昨日の光景の夢が、グリオスにそれが真実なのだと突き付けてくる。
ローバーの体液の効果が消えた後も、ずっと体が疼いて、乱れる自分を止められなかった。
寝ても覚めても終わらない行為に歓喜して、中で放たれる熱に酔いしれ、無骨な体を貪るエルジュの恍惚の笑みに胸が昂り――自分が自分でなくなっていた。
もしインキュバスの言う通りならば、間もなく自分が魔に染まり、普段通りにエルジュが抱けば魔に堕ちてしまう。
グリオスの足が一歩下がる。
気圧されていることを自覚させられ、思わずギリリと奥歯を強く噛み締める。
しかし動揺を抑えてグリオスは心を立て直す。
「ご丁寧にわざわざそれを教えに来たのか? 魔王の下僕が、主を倒されまいと俺たちを惑わしにきたのだろうが、俺は魔の者に耳を傾けはしない」
「それは残念な誤解をしているな。俺は確かに魔王の配下ではあるが、命を捧げる気はない。ただお前が美味なる欲に身を焦がし、芳しい匂いを放っておったから引き寄せられただけだ」
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